AWC    夜のバス            椿 美枝子


        
#1/1336 短編
★タイトル (RMM     )  93/ 4/21  22: 7  ( 23)
   夜のバス            椿 美枝子
★内容
 つないだ手が冷たかった。
 一緒に旅をするのは久し振りね、そう言って笑って、さみしくなった。
 もう一度、手を、つないでみる。
 つなぎなおして途方に暮れる、この人の気配はこんなに冷たかったかしら、こ
の人の気配はこんなにさみしかったかしら、この人の気配はこんなによそよそし
かったかしら。
 このままずっと途切れた空間に住むのでなく、今ここで何かをしよう。戻して
しまおう、いつもの様に。それとも、別れて過ごそうか。

 二人で夜のバスに乗る。
 通り過ぎて行く夜の闇。身を委ねる。黙っている。すぐ隣に座っていても、見
知らぬ他人になってしまいそうで、こわくて顔を見ずにいる。ずっと。

 いつかこんな夜が来るだろうと思っていた。
 いつかこんな夜は去るだろうと思っていよう。
 手を、みたび、つないでみる。握りしめてみる。
 まっすぐに、その瞳を、見つめながら。


                  了

                       1993.3.18.21:25
                            3.31.23:50




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