#2955/3137 空中分解2
★タイトル (HVJ ) 93/ 3/ 7 23:50 ( 75)
コインランドリー日記(1)〜「小さな居場所」 ごんた
★内容
〜 ごんた君の「真夜中の処方せん」シリーズ ^ ^;〜
コインランドリー日記(1)〜「小さな居場所」 ごんた
「小さな居場所」
九月二十一日、晴れ。
ねぼけ眼でコインランドリーへ向かっ歩き始めましょう。まだ寝起き
で醒めやらぬあなたの思考回路は夢見心地で、きっと洗濯石鹸の事をす
っかり忘れていることでしょう。
今日はとてもお天気のよい日曜日。午後の強い日差しが窓越しに微笑
みながら、あなたの憂鬱な目蓋を優しくくすぐります。そんなあなたは、
きっと奇麗好きなことでしょう。それも神経質なほどに、あなたはひど
く潔癖症なのかもしれません。ふかふかのマットレスに、最近買ったば
かりの高価な羽布団。あなたは寝汗を少しだけかいている。きっと慌て
て、シャワーを浴びはじめることでしょう。
べつだん奇麗好きな自分を意識していなくても、あなたは洗濯物を貯
め込むなんて、やっぱり出来ません。まわりの友達なら、たぶん一週間
くらい洗濯物を貯め込むなんてのはごく当り前、あなたはきっと彼女に
そう言われることでしょう。
「一週間、、、、、たぶん普通なんじゃない?。それに、しょっちゅう
行きたい所でもないしね。腐るものでもないし、、、。」
「そうだよね。」
「ウチって、本当にめんど臭がり屋だと思う〜んよ。でもね、ウチ、も
ちろん一週間以上は貯め込まないよ。下着、そんなに持ってないし、ウ
チだって女だもん。」
自分のことを「ウチ」って言いたがるの女の子と付き合うのは、きっ
とあなたは始めてなことでしょう。彼女を腕に抱いた夜から、なんだか
あなたはそんな事を少しずつ気にし初めています。
あなたは一人り暮しを始めて、そろそろ半年になろうとしている。た
ぶん今の生活をちっとも退屈なんかしていません。あなたには、するべ
きことが毎日きちんとテキパキ、山の中腹程度に程よくあるのですから。
お料理、お洗濯、お掃除、お買い物、アルバイト、デートにエッチ。
ワで。明日から学校です。日曜日を除いて毎日
夕方の五時をまわると、あなたはいそいそと夜の学校に向うことでしょ
う。それがあなたの学生生活です。少しでも両親の助けになろうと、働
きながら大学を出るつもりなのでしょう。それなのに、なぜだかあなた
は役に立ちそうもない英文学なんかを専攻してしまいます。
九月二十四日、曇り。
今日もあなたはいつものコインランドリーで、なんとなく時を過ごそ
うとしています。洗濯機が二百円で三十四分、乾燥機が二百円で三十分、
手間いらずで自動的にまわり続けています。あなたはぼんやりと煙草に
火をつけながらマンガを眺めたり、ときどき喉が乾いては近所のコンビ
ニエンスストアヘ出かけることでしょう。せわしない毎日の生活なのに、
なぜだろう、不思議とぼんやりできる。なんとなく素直な自分に出会え
る場所が近くにあるのは好いものです。とても嬉しい気分。この頃やっ
となんとなく都会の人混みに慣れ始めたあなたにとって、コインランド
リーは安心していられる所なのでしょう。キットここにいる間だけ、あ
なたは独りの居心地よさを感じている。小さな心の居場所。心を探す場
所。街の暗闇の中、人混みの中に何かを見失ってしまったままの自分を、
この静かな場所で元どうりにしたい。そんな秘密の場所を大切に仕舞っ
ておきたい。この静かな時に。静かな心に、、、、。
独り言のつぶやきの中に、あなたはおぼろげにそんなメランコリック
な気分、奇妙な心の乱れを感じ始めています。洗濯石鹸のうっとりとす
る微かな香に包まれながら、あなたは不思議な好奇心に包まれます。確
、、、。うっとりするようなナルシシズム。
素直な自分が静かに微笑みかけてくるような、たぶん誰にも邪魔されな
い安心感が、素直なあなたを微笑ませ、同時に苦笑させるのでしょう。
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