#2934/3137 空中分解2
★タイトル (VHM ) 93/ 2/28 5:28 ( 82)
エッセイ>「テーマソングしてますか?」 井上 仁
★内容
どうも。気鋭の新人(?)、井上 仁です。「鋭」かどうかは別として、新人という
のは間違いありません。小説が主ですが、こういったエッセイ(こういうのはエッセ
イと言うのかどうか)も好きなのでつい書いてしまいます。これからも、私の小説な
どを見つけたらひとつ、見てやって下さい。
では、本題の方を。
これをダウンしてくださったあなたなら、おそらく本をよく読まれる事でしょう。
本というものは面白いもので、活字の時というのは言ってみれば「濃縮してオブラー
トにくるんである」状態にあるらしいのです。
それが人に読まれ、頭の中に入るとき、オブラートがじわっと溶け、小さくされてい
たイメージが、頭の中一杯に、そう、「場面」として広がって行くのだろうと思いま
す。
その時の広げ方によって、その文はさまざまな印象を人に与えます。
そしてその広げ方は、人によって千差万別、そして同じ人でもその時の気分によって
全く違うのです。
私事で例を上げさせて頂きますと、私が知っている小説の中で一番の傑作だと信じて
いる『無責任艦長タイラー』は、基本的にはそうとう軽い感じの小説だろうと思いま
す。しかし、です。
私はこの物語の終わりの方の2、3巻を、ある音楽を聞きながら読みました。
原由子の歌で、これがものすごく静かないい歌でした。私の、一番好きな歌手です。
そうして、半年が過ぎたかという頃。
もう一度、原由子の歌を聞いたのです。
すると、『タイラー』の場面が、文章にはなっていないような、おだやかな、静かな
場面がよみがえってきたのです。
なんだか、やたらに嬉しくなって、もう一度初めから読んでみました。
今度はBGMなしだったにも関わらず、読んでいるうちに、どんどん原由子の曲が頭
の中に沸き起こってきて、軽いイメージが変化してしまい、今ではあの作品はものす
ごく「優しい」作品として定着してしまったのです。
これを読んで、「作者はきちんと考えがあって作品のイメージを選んでいるんだ、勝
手に違うイメージを作るなんて許せない」と憤慨した方は、どうぞ構いませんからこ
のファイルを今すぐ消してやって下さい。しかし、もしまだ私ごときの話につきあっ
て頂けるならば、もう少しのご辛抱をお願いします。
そもそも、考えてみて下さい。私たちの住んでいるこの世界に、人類共通のイメージ
が存在するでしょうか。おそらくそうではないと思います。
世の中はいやなものだ、とか、世の中って感動がいっぱいだなぁ、とか、なんでこん
な世の中になんか生まれたんだろう、などなど、まさに喜怒哀楽、さまざまな人生観
を持った人々によって、この世界は成り立っています。
ゆえに、作品に対して多くの人がそれぞれ別のイメージを持つというのは、つまりそ
れだけリアリティーのある、本当の名作だと思うのです。
本当の、真の名作というのは、読んだ人全てを感動させるものではありません。
読んだ人全てが、その世界を展開して、笑ったり、腹がたったり、わくわくしたり、
すかっとしたり、泣いたり。どれか一つでいいんです。凝縮の段階で作者がいっぱい
に詰め込んだ「世の中の味」を見つけだすことができれば、それが「本当の名作」な
のです。
笑っていながら寂しい心を持て余す。
悲しみに撃ちひしがれながら、ある種のすがすがしさを感じる。
だからこそ、人生が楽しいのです。
あなたの好きな本には、テーマソングがついていますか。
もし。
一度もそんなことをしたことがないという方は、一度、やってみることをお勧めしま
す。きっとその作品で気がつかなかったイメージができていくことでしょう。そうな
れば、あなたはきっと、その作品をもっともっと好きになることができるでしょうか
ら・・・
もし人類が歌を知ることができなかったとしたら、人類はとっくの昔に絶滅していた
ことでしょう。心が消えてしまったら、何が知能をささえていくというのでしょう。
いかがでしたでしょうか。
まだまだ稚拙な文章故に読み苦しいところもあったと思います。
そういった所の指摘やご注意を、感想も加えて掲示板なりメールなりで伝えていただ
けると、今後の勉強とさせていただけるのでとても嬉しいのです。
どうかそう言ったものをひとつ、お願いします。
それでは、またお会いしましょう。
あ、それから、作中に登場した、吉岡平先生の『宇宙一の無責任男』(「無責任艦長
タイラー」のことです)のファンの方、メールでお話をしませんか?
もしそうしてくださったなら、返事はぼちぼち返させていただきますので。
私のIDは、
NIFTY・・・JAE02056
PC−VAN・・・VHM70356 (0はゼロです)
です。
それでは、今度こそ。またお会いしましょう・・・