#1724/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (GVB ) 89/ 7/31 2:21 ( 36)
大型ホームドラマ小説 「長き日」 ゐんば
★内容
「このごろ日がのびたなあ」
今年で七十になる喜三郎が言った。
「そうですね」
嫁の手児奈が答えた。
「七時過ぎてるのにまだ明るいんですものね」
そういいながら手児奈は窓の外を見ていた。
「このごろ週ものびたなあ」
喜三郎が言った。
「ほんとですね」
手児奈が答えた。
「今週なんか十九日もありますものね」
そういいながら手児奈は壁のカレンダーを見ていた。
日 田 月 目 且 火 大 水 氷 永 木 本 未 末 金 全 土 士 干
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
「このごろ月ものびたなあ」
喜三郎が言った。
「まったくですね」
手児奈が答えた。
「今年はうるう年ですし」
そういいながら手児奈はカレンダーの続きをめくった。
うるう31 うるうるう31 うるうるうるう31 うるうるうるうるう31
うるうるうるうるうるう31 うるうるうるうるうるうるう31
「このごろ年ものびたなあ」
喜三郎が言った。
「いやですわおじいちゃん」
手児奈が笑った。
「年がのびる訳ないじゃありませんか」
二人は朗らかに笑いあった。夏はもうじきである。
[完]