#1722/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DRH ) 89/ 7/29 7:40 ( 81)
短編>「不可思議な少女」 /Tink
★内容
1
彼女はいつからかその場所にいた。
初めて気がついたのは3日前のことであった。
僕は酒屋のアルバイトがちょうど暇になった時、店の出口の方をボーっと眺めて
いると、サラサラした長い髪の、なにかしら神秘的な雰囲気を持つ少女が僕の方を
見ているのを見つけた。
最初の日は、あまり気にせず、あっ、かあいい娘だなーって感じでみていたのだ
が、3日も同じ場所に同じ少女がいるとさすがに気になってくる。
「「あの娘は一体誰なのだろうか?
疑問は深まるばかりだが、さすがに『あなたは一体なにをしてるんですか?』と、
聞く訳にもいかなかった。
「「どこかで見たことがあるような気はするのだが‥‥気のせいだろうか?
僕は記憶の奥底を探ってみるが、あの娘の正体を知る手懸かりはなかった。
しかし、一体いつ来て、いつ帰ってるのだろうか?
仕事が忙しいときなどは、さすがにさんなことを気にしている暇は無いのである。
そして、仕事が一段落ついて、ほっと息をついた時に、彼女が現われていたり、
消えていたりするのである。
とにかくなんにせよ、彼女がどこの誰かを聞いてみることくらいはしてみようか
な?、と思い始めた。
2
しかし、実際に声をかけてみようと思ったのはさらに3日後であった。
その日は酒屋も暇で、ガラガラになっており、品出しなどの一通りの仕事も終わ
った時をみはからい、僕はゴミを外へ捨てにいくついでに声をかけてみようと思っ
たのだ。
ゴミを捨て、少女のいる方を振り返ってみるとまだ、その少女は僕の方をみてい
た。
『あなたはだれなんですか?』、『こんなところでなにかしているんですか?』
『僕になにか用でしょうか?』‥‥色々と聞いてみたい事が頭の中をかけめぐる。
とにかく僕は、少女のいる、向かい側の自動販売機の方へ渡ろうとした。
ちょうど、そのとき、一台のトラックが道路を走って来た。
ぼくはとっさに身をかわしながら、危なかった‥‥と心の中で思った。
そして、僕は少女のいるべき自動販売機の前の方を見てみると、いつの間にか少
女はいなくなっていた‥‥。
そして、少女はそれからひと月ほど姿を見せなくなってしまった。
3
そして、また、姿を見せるようになった時は、その少女の影は薄くなっていた。
なんて言ったら良いのだろうか‥‥?、雰囲気的に‥‥、存在感が無いのである。
そして、また、日にちが過ぎる内に少女の影はどんどんと薄くなって行き、つい
には身体までもが透けてきたのである‥‥!
しかし、僕は恐怖官や驚きはまったく無かった。
なんと言うか‥‥、この少女なら、身体が透けていようが、不思議では無い気が
するのである。
少女はそれほど神秘的な雰囲気をもってるのである。
そして、少女の影が見えるかみえないか位まで薄くなった時、僕はバイトが終わ
り店の外へ出ると、少女は目のまえにいたのである。
大体僕が近付くといつもは消えてしまうのに、どうしてだろうか?
少女の僕をみるめは悲しげである。
栗色の瞳はじっと、僕の瞳を覗いている。
「きみは‥‥誰?」
ぼくはおそるおそる‥‥、時の流れがとまったような緊張感をほどくように‥‥
もしかしたら声をだしたら少女は消えてしまうのではないのだろうか?という不安
にまけないように‥‥静かに声を出した。
<<わたしはの名は‥‥妃沢美月‥‥わたしはあなたが好きでした>>
なんというのだろうか?、少女は声をだしていないのに‥‥直接頭に響く声がそ
う答えた。
<<わたしは‥‥ずっと、ずっと、あなたのことが好きでした、でもあなたに声を
かけるなんてできなかった‥‥、でも‥‥もう私はこの世にそんざいしません>>
「「妃沢‥‥?、妃沢美月‥‥?、そうか‥‥、思い出した、どこかで見かけたこ
とがあるのは、学校だったんだ、学校のたしか、ミスに選ばれていたと思う。
<<この気持ちを生きている内に伝えたかった‥‥、本当にあなたのことが好きだ
ったから‥‥>>
少女は、それだけのことを言うと、スゥっと影を薄くしていった。
<<もう‥‥時間です‥‥、あたしはいかなければなりません‥‥、あたしに夢を
くれてありがとう‥‥、そして‥‥さようなら!>>
少女の影が完全に消えた後も僕はしばらくのあいだその場所をはなれることはで
きなかった‥‥。
END