AWC 『闇の迷宮』 −15−           Fon.


        
#1703/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  89/ 7/22  12: 1  (100)
『闇の迷宮』 −15−           Fon.
★内容
                              by 尉崎 翻
 リクトは扉を出て通路を見渡した。
 レナはもう少し調べてみる事があるから先に探索をしといて、と、告げ再び戸棚
より本を数冊取り出し眼を通しはじめたため、今リクトは一人である。
 視線の先にはいくつかの扉がある。途方とまではいかないが広い範囲にわたって
部屋が位置しているようだ、魔石から読み取った情報によって魔術師の住みからし
き所には迷うことなくたどりつけた。が、魔術師の姿はおろか気配すらなく一つ一
つの部屋を探索していたところ、あの書斎を見つけたという次第である。
 リクトは早足ぎみに歩き始めた。
 レナが言うには魔術師は現在我々がいる所より下の空間に位置するということ。
 すなわち下へ行く階段のようなものを発見しなくてはならないのだ。
「しらみつぶしに探すか」
 リクトは手近な扉に手をかけた。
                   *
 レナは手に持っていた本を机の上に置いた。
 おもむろに右手を前に出して指を一つ一つと立たせる。
 どーやら数を数えているらしいのだが...
「「「「たしかにね」
 レナが数を数え終わる仕種を見せため息まじりで、姿の見えぬなにかに話しかけ
始める。
「あなたたちの力をかなり借りたわよ、でも...」
 ビクッと身体が一瞬硬直し、壁にもたれかかる。
「...そ...そんな、け...契約は守るわよ...でも」
 腕を動かし自ら身体を押さえた。
 手は固く握りローブの布が破けそうだ。
「...でも、でも! なにもこんな所で...あぅっ...!」
 レナが抵抗出来たのもそこまでであった。
 「「「身体が、からだが...
 急激に身体全体に脱力感とともに生温い暑さが広まった。たまらずにレナはその
場にへたり込む。首をイヤイヤするように左右に振るのだが無駄なる行動にそれは
すぎなかった。
                   *
 ダグの視線は一点にそそがれている。
 先程から全裸で娘達の生血を浴び続けているケスクという女だ。
 ダグは眼を見張り、ゴシゴシと擦って錯覚でない事を確認する。
 「「「間違いない!
 ケスクは娘達の生き血を浴び始める前には二十代後半の雰囲気を漂わせていた、
それが今はどうだ! どうみても二十歳前後にしか取れないぐらいに肌に張りが出
ており顔も乱暴に言えば幼くなりつつある。
 ケスクは今、若返り始めているのだ。
 さらに金属桶からは一滴の血もあふれていない。
 流れ落ちた血はそのままスポンジに吸収されるかのごとくケスクの身体へ消えて
行くのだ。いつのまにやら、天井から吊り下げられた娘で首が残っているのはただ
一人となった。先程ダーシィが最後に逆さ吊りにした娘だ。いや、その娘をたった
今、眼の前でダーシィの剣によって首を失った。
 真っ赤な鮮血がケスクに振りかかる。
 ケスクは恍惚の表情を出し、甘美に酔いしれあえぎ声を出す。
 その声も今までのしわがれた声ではなく透き通った声に変化していた。
「あぁ...はぅ...ぅぅ....」
                   *
 さて、金属桶中のケスクから直線にして半kmもしない所でもう一人、恍惚の世
界に酔いしれてる人物がいたということは知るよしもなかったであろう。
「はあ...あ、..あ...う.あぁ...」
 レナの身体の各部からじっとりと玉のように汗が吹きだし始めやがて流れ落ちる。
 あえぎ声が徐々に荒くなり、眼はトロンと焦点を失い始めており拒絶の声は既に
歓喜の声と変化しつつあった。
                   *
「誰だっ!」
 声と同時にダーシィが剣を放った。
 剣は空を跳びダグの目の前に突き刺さった。
 ダーシィは既に動き始めており腰の剣を抜きさりダグへと突進している。
 ダグは腰の短剣をあわてて抜きダーシィからの一撃をかろうじて受け止めた。
「何者だきさま!?」
 ダーシィの目は既に常人の目ではない。
「ただの迷い子...っていっても見逃してくれないだろうな。やっぱ」
 ダグはため息を吐き出す。
 相手の得物と自分の得物を比べれば完全なるギャップがありすぎる。
 まともでの剣での勝負はあきらかに不利である。
「ふざけた奴め.....」
 ダーシィがジリジリと間合いを狭め近付く。
「まて、ダーシィ」
 ケスクだ。
 全裸のまま立ち上がりその肌を隠そうともしない。
「おもしろい男だな...どーやらガーゼットが倒されたようだ。男、他の2人は
どうした?」
 今のケスクの外見や声はどうみてもダグ自身より年下である。
 先程とは反対の口調のギャップがケスクからは感じられる。
「だから、迷い子だって言ったろ? はぐれたのさ」
 そう答えながらも必死にこの場を逃げ出す方法を考えているのだが...結論が
出そうにない。
「ククク...どうやら、わしが若返りをしている間に鼠が3匹ほど我が聖域に紛
 こんだようだな...男、きさまにもっとも相応しい人物を相手にさせてやるわ」
 ケスクが自分の両手を組み合わせ何かの言葉を唱えた。
 するとダーシィとダグとの真ん中あたりの空間にゆらめきが起こり人間があらわ
れた。その人物は先程のダーシィが投げ放った剣を地から引き抜きダグへと襲いか
かる。
「ダーシィ!ついてこい!」
 ケスクはそう言いはなちダグには見向きもせずに奥の方へすすむ。
 金属音とともにダグの短剣が弾け跳んだ。
 ダグはあわてふためいて短剣をひろおうとしたがその前に相手の剣が視界をふさ
ぎ行動を抑制した。
「えーぃ! ティスタいーかげんにしろっ! ..ってもだめだなこりゃ」
 いまにもダグへと切りかかろうとしているのは、まぎれもなくティスタその人物
である。
                   *
 さて、一方。
 レナといえば....
「ああ、ううぅ...うっく... ああん、いぃ....もっとぅ...」
 ......だめだこりゃ
                        (RNS.#1)<つづく>




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