#1671/1850 CFM「空中分解」
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家畜 永山
★内容
「変な夢を見ちまったよ。どんな夢かって?聞いてくれるのなら、話そうか
・・・。」
ある朝、目を覚ましたんだ。そしたら、いきなり、檻の中。俺の他にも人は
いるんだが、誰も、檻の中にいることを不思議には思っていないようだ。何か
ひそひそ話をしているんで、聞いてみたら、「次は誰が召されるのだろう。」
だってさ。何のことやらと思っていたら、檻の前に誰かが来た。そいつが人間
じゃあないんだよな。偉そうな牛と、好色そうな豚と、神経質そうな鶏だ。奴
ら言葉をしゃべりやがるんだぜ。俺達の中から、誰か一人を選ぼうとしている
みたいだ。やがて、一人、若い娘が選ばれ、「身を清めておくように。他の家
畜は、これを食え。」と言って、俺達の前に粉っぽい物を置いた。鳥の餌みた
いだった。何やら分からんが、さっきの娘を除いて、みんな、がつがつ食い出
したから、俺も食った。まずかった。食いながら、娘に聞いた。どうしてあん
たは、食わないのか。私は、選ばれたから。選ばれたってどういう事だい。私、
お牛様に食べてもらえるのよ(にっこり)。た、食べてもらえる?何を驚いて
いるの、名誉な事よ。君は恐くないのか?ちっとも、それより、がんばって、
きれいにしなくちゃいけないの、身体を。・・・。あっけに取られてしまった。
何と言うことだ。ここは、牛が支配している?一日、娘は何も食べずに、「き
れい」にしていた。翌朝、娘は連れ出された。俺は、隙を見て脱出を狙ってい
たのだが、その必要はなかった。俺達も、外に出されたのだ。何故か?何やら、
大通りみたいな所に、列ばせられた。俺達だけじゃなく、他の檻にいたと思わ
れる人もだ。やがて、パレードみたいなのが始まった。先の娘が、裸で大きな
山車のてっぺんに座って、周りの人に笑みを振りまいている。大歓声だ。俺は、
たまらなくなって、娘を助けようと飛び出した。誰も止めようとはしない。牛
達もだ。もう、お祭り気分に酔っているのか。神殿らしき所に、その山車は入
って行った。大きな皿に娘が載せられ、その皿は、牛の王様みたいな奴の前に
置かれた。牛がナイフとフォークを持った。娘は笑っている。フォークで押さ
ヲ、ナイフで・・・。
「これだけさ。ここで目が覚めた。変な夢だろ。ところで、今朝の朝食が残
っちまったんだが、始末してくれないか。ハムエッグとローストビーフさ。う
まかったけど、途中で、身体の節々が痛くなってね・・・」
−終−