#1638/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (CSJ ) 89/ 6/11 23:57 (109)
霊界紀行 「「序章「「 Saito
★内容
「ショヲ、ヲヲイ! ヲ8ジ10プヲ!」
何か聞こえる。妙にまぶたがとろんとしている。
「晶! 起きなさい! もう、8時10分、学校に遅刻するわよ!」
なんだ、俺を起こしてるんだ。でもまだ眠い。
「晶! 起きろ!」
突然、ふとんをひっぱがされた。途端に眠気が覚める。
「もう少しー。あと10分、5分でいいからぁー。」
「うるさい、起きなさい!」
「もう起きてるよー。だけど、まだこのままでいたいんだよー。」
姉きがしつこく俺を起こそうとする。仕方なく、俺はもぞもぞとベッドを這い出た。
「着替えるから向こうへいってよ。朝シャンすっからシャワー用意しといてね。」
「高校のガキが生意気な。」
姉きは相変わらず言葉が悪い。社会人2年生のくせに恋人一人いない。ざまあみろ。
「あんた、何か言った?」
やっと目が覚めた。のろのろと制服を着てかばんを持つ。それから部屋を出て、階段
を降りる。その時、何かめまいがして足を踏みはずした。
どがががらがしずずずずべち!
一気に一番下まで落っこちた。すんごく痛い。
「何、いま凄い音がしたわよ。」
「どうせ晶の奴が何かドジしたんだろ。」
俺はふらふらになって食卓に来た。今日は何か学校に行きたくない気がする。
「俺..今日学校休もうかな...。」
「何言ってるの。あんたただでさえ遅刻が多いんだから...。」
「おつむも弱いしな。」
「うるさい! 行きゃーいーんだろ。行きゃー。ところで、親父は?」
「今日は、会議があるから、早めに出るんですって。」
「あんたとはえらい違いね。」
俺は家を出た。マジでいやな予感がする。今日みたいなのは初めてだ。
でも今は学校に間に合うか間に合わないかの瀬戸際だ。走らなきゃ。
ぴーこんぴーこんぴーこんぴーこん。
信号が点滅してる。横断歩道をわたろうとしたら、こけた。しかし、俺はまた起きあ
がって渡る。まだ、車道の信号は黄色だ。その時!
ほわぁぁんんんほわぁん!きぃー、どぢゃっ! ぐちゅばちゅっ!
.......................................
ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、ほわん...
どこかで救急車の音がする。ずっと遠くで。目の前は真っ暗だ。いったい、何が起き
たんだ!地球の終か?身体がしびれて何も感じれない。ただ、何かが聞こえるだけだ。
「ドウダ、マダイキテルカ?」
「イヤ、モウイキテルニシタッテテオクレダ。」
「ハヤクヌノヲカブセロ! ミモトヲカクニンシロ!」
「................」
「アッ、セイトテチョウガアルゾ。...ナマエハ、「オガタ ショウ」ダ。」
「ヨシッ、ダレカカゾクニレンラクシロ!」
何! ばかな!そんなこと、そんなことあるわけがない!お、俺が死んだなんて!
何か、気が遠くなっていくようだ。くそっ。気絶、死んでたまるか!死んでたまる!
か!こんなの嘘だ!うそだぁぁアアア......。
.......................................
はっと目が覚めた。なんだ、夢か。嫌な夢だ。
そう思い、俺は辺りを見回してハッとした。
親父もおふくろも姉きも達公もみんな泣いていた。親戚の人がほとんどいた。
棺があった。そして中には..俺だ!俺がいる!蓋がしてたけど俺には見えてた。
ぐちゃになって、ほとんど見分けが付けなかったが....。だけど、俺だった!
「お気持ち、察しますわ。 まだ17歳だったのに..。」
「うっうっう...。 こんな事ならこの子の言った通り学校休ませればよかった
のに...。 おーい、おいおいおい。」
「あたいのせいよ!あたいが無理に行かせたんだ!あたいが晶を殺したのよ!」
「晶子、おまえのせいじゃない、運命だったんだ。」
「晶ぅーーーっ おーいおいおいおい......」
部屋には暗い雰囲気がながれてた。とても映画「お葬式」のような感じは無かった。
(お父さん、俺はここにいるよ! お母さん、お姉ちゃん! 誰でもいい、返事をして
くれーーーっ!)
その時、俺は声が出ない事、それどころか、咽、身体さえ無いことを知った...。
(愚か者、あれだけ忠告しといてやったのに..)
どこかで声が聞こえた。
(誰だっ!)
(わしは、お前の守護霊じゃ。いや、守護神といってもいいかもしらんがな。)
俺は驚いた。泣いているお母さん辺りにぼわっと、神々しい人間の姿が浮き出てきた
からだ。しかし、俺はこうなって(死んで?)から初めて、人間(?)と話せたから、
嬉しかった。何か、複雑な気持ちだ。
(えっ?守護神?何の事ですか?)
(わしは、貧弱なお前が人間界に転生した時からお前を守ってきてやった霊だ。しかし
、そんじょそこらの低級霊とはいっしょにするな。お前はもうすぐ、霊界に旅立つの
ぢゃ。)
(ニンゲンカイ?テイキュウレイ?レイカイ?..丹波哲郎みたいな事を言う人だな。
俺はいったいどうして、こんな風になっちまってんだ!あんたがやったのか?)
(無礼者め! わしはお前にこの事を教えてやったのぢゃぞ!それをわしが殺したのな
どと...。)
そういえば、階段から転げ落ちたり、横断歩道でころんだり、それらしい現象がある
な。家を出た時の予感も.....
(やっと判ったか。この馬鹿者め。あんなことができるのは、わしのような偉大な霊だ
けじゃぞ。鈍感な奴め!)
(...じゃ、俺は...俺は本当に死んじゃったんですね。)
(うむ。やっと事態が飲み込めたようぢゃな。)
そんな!まだ俺は未練が腐る程あるぞ!バイト代たまって、やっとオートバイが買え
るようになったし、まどかとだってまだヤッてねーぜ。冗談じゃねぇ。俺が何をしたっ
つーんだ。ふざけんなー。
(運命ぢゃから仕方ない。)
(生き返れねーのか?おい?)
(無礼者め!目上の人間に対する態度がなっとらん!)
(わたしは、生き返れねーんでしょうか?)
(まあ、いいだろう。教えてやろう。『無理』ぢゃ。)
俺は呆然となった。なぜ、こんなことに....。
(とにかく、お前の身体が埋葬されたら、お前は霊界に転生ぢゃろうて......
さらばぢゃ!またいつか会えるかもしれん。)
人間の姿がかきけすように消えた。
俺はまだ信じられなかった...
そして、俺の遺骨が墓に入れられた。もう、親父達は泣いていなかった。
ひゅうううう...
からだが、熔けていった。熔けていった様だった....
霊界....か...。
遠のく意識のなかで俺は生きてる時の事、そしてこれからの事を思っていた....
「「「 続く 「「「
by SAITO(CSJ85143)