#1630/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DRH ) 89/ 6/ 9 7:14 (105)
「魔法のネットワーカーアクセス那奈[第3話−3]」 Tink
★内容
風が強くなってきた。
明後日は、待ちに待った(ちょっと、問題もあるけど)花見なのに‥‥。
天気予報を見てみたら、明後日は、晴れるが、明日は、この辺一体が低気圧に覆わ
れて、雨がふるとのこと。
せっかく智広や、千恵美ちゃんたちが楽しみにしていたミーティングなのに‥‥。
魔法の力で、なんとかならないかなぁ‥‥?
「うーん、ねぇ、プチ!、魔法の力って変身以外にもつかえるの?」
すると、プチは一瞬悩んだような顔をしてから、言った。
「まぁ‥‥だな、元々由美に与えた魔法ってのは、変身するための魔法じゃあ、ない
んだ」
「え?、と‥‥いうと?」
「那奈って言うのは、由美の夢を反映した姿なんだ、ようするに、由美の夢が強けれ
ば強いほど、魔法の力も強くなるっ‥‥て、うーん、どうせつめいしたらいいんだ?
おい、ポポ」
「そうね、簡単にいうと、変身って言うのは、由美、あなたの心の中の夢「「、心っ
ていうのが、大体別の次元に存在するのね、その世界の夢を移すのが、魔法で、変身
っていうのは疑似的に投影した姿、すなわち那奈なのよ、だから、変身すること自体
が魔法じゃないってことね」
うっ‥‥よくわからない‥‥、とにかく変身以外にも力があるってことかしら?
「じゃあ、たとえば天気を変化させることとか、できるの?」
「それはダメ!、自然界に直接影響を及ぼすことはタブーなのよ」
「うーん、駄目かぁ‥‥」
「でも、突然どうしたんだ?」
「うーん、実はね、明後日にプランニングNETでお花見があるんだけどね、明日、
雨ふるって‥‥、明後日晴れても桜がちってたら意味がないでしょ?、なにか良い案、
ない?」
「そうだな‥‥、ないことは‥‥ないかな?」
ないことはないって‥‥できるってことかな?
「どうしたら良いの?」
「まず、花見がある一画に、魔法で結界を張るんだ」
「結界?」
「そう、一種のバリアーと言ったらいいのかしら?」
バ‥‥バリアーね‥‥SFの漫画みたい。
「気を、その場に残すわけだから、疲れるし、完全に雨から守れる保証もないけど、
やってみるか?」
うーん、完全に散ってしまったら、お花見にならないし‥‥、うーん。
「うん、やってみる!」
「よし、それじゃあ早速その場所へ行ってみよう」
「OK!」
★
かなり、風が強い。
いつもなら、水元川まで歩いて十五分くらいなのに、二十分近く、かかってしまっ
た。
桜の花びらが、風にあおられて、まるでピンク色の吹雪のようにも見えた。
あたしは、その、幻想的な景色に少しの間見とれていた。
「おい、由美、準備をするぞ」
あたしは、その台詞で一挙に現実に引きもどされてしまった。
「はいはいはい!」
「まず、ドリーミーバトンを出して」
「了解」
あたしは、まわりに人影がないのを確かめてから呪文を唱えた。
「ルチノウ!」
すると、右腕にはめているブレスレットから、まばゆいばかりの光が出たかと思う
と、いつのまにかバトンに変わっていた。
あたしは、そのバトンを手にとると、プチとポポの方を見た。
「で、どうするの?」
「えと‥‥どうするんだっけ?」
「まず、エレメンタルを招集するのよ」
「エレメンタル?」
「ようするに、水・火・土・風の4大精霊を差すんだけど、この場合は水の精霊ね」
精霊?、うーん、なんかとんでもない方に展開してるなぁ。
「まず、呪文の詠唱から始めるのよ、バトンを胸にだいて、あたしがいう通りに詠唱
してね」
そういうとポポは、なにやら呪文を唱えはじめた、あたしもそれにならって、唱え
た。
すると、呪文がおわるか終わらないかのうちに、空気が振動し始めて、いつのまに
か、目のまえにちいさな、可愛い少女が立っていた。
『わたしを呼び出したのはあなた?』
少女は、声でなく、直接頭に話し掛けてきた。
「あ‥‥あなたは?」
『私はシルフィ‥‥水の精霊よ』
「ぽ‥‥ポポ」
「大丈夫、シルフは人には危害を与えないわ、用件を言って」
「えと‥‥、この付近の桜の木を雨から守って欲しいんだけど‥‥」
『お安い御用よ、それで見返りは?』
「由美、ドリーミィパワーを少し与えてあげて」
えと‥‥それじゃあ。
あたしがバトンを差し出すと、シルフィは、軽く手を触れた。
すると、少し、バトンが光ったかと思うと、シルフィは、手をひき、にこっと笑っ
た。
『ありがとう、それじゃあこの付近の桜の木は雨から守ってみせるわね』
そういうと、シルフはふっと姿を消した。
そして、数秒もしないうちに薄いもやのようなものがかかった。
「どう‥‥なったの?」
「シルフィが霧に同化して、雨から守るのよ、もう、大丈夫、さぁ、帰りましょ!」
「うん!」
★
そして、お花見の当日。
あたしは、智広たちの約束をすっぽかして(一応学校で行けなくなったとは行って
おいたけど‥‥)、那奈に変身すると、集合場所へと向かった。
昨日はすごい霧が出ていたけど(プチがシルフィが雨を霧に分解したって言ってた
な‥‥)、今日は快晴!、雲一つない青空が広がっていている。
そして、皆、集合すると花見の場所へと向かった。
水元川は、凄い活気にみまわれていた。
桜の花びらが吹雪のように流れては消えて行く。
それはまるでおとぎばなしのような風景だった。
その幻想的な風景のなかで、あたしは声には出さないけど、シルフィにありがとう
を言った。
アクセス那奈第3話 END
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