AWC 騎甲神ナイザー  《Vol.1》


        
#596/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (SMB     )  87/12/17   1:20  ( 46)
騎甲神ナイザー  《Vol.1》
★内容


   騎甲神ナイザー
−騎甲神伝説−
 古き都『リミルガ』の回りには、『巨岩石の森』と言われる茶色くすすけた巨大岩
石がそびえ立ち、それらを包みこむように灼熱地獄の『魔の砂漠』が広がっている。
とうてい人が住む処とは思えない不毛の大地にオアシスのようにひっそりと『リミル
ガ』は栄えていた。
 今、都では騎甲神が誕生して千三百年目を祝って祭りがひらかれていた。そして、
司祭者である『キャシノス・ラーラ・クレストン』の十七歳の誕生日でもあった。
 都の中央部にあたる神殿は見事な純白の大理石で造られている。神を祀る祭壇には
青白いローブ(布)をまとった美しい少女がいた。透き通るような白い肌、風になび
く長い金髪。太陽の光によってさらに、その美しさを誇示している。誰からも愛され
る可愛い笑顔には、クルクルとした大きな金色の瞳が興味深く祭りの様子を眺めてい
た。彼女がラーラである。十七歳の若さであらゆる知識に長けていた。この世界のし
きたりでは能力が有れば十歳に満たない子供でも成人することが許されている。それ
ゆえに、能力が無ければいくつになっても成人は許されないのだ。ラーラは既に成人
していて、民から絶対の信頼を受けていた。彼女を見て心奪われぬ者はいないほど、
その美しさは極限に達していた。そんな彼女の誕生日なので都は湧き躍っているのだ。
 ラーラの頭には白銀の宝冠が載せられ、色取り取りの宝玉が散りばめられ、その美
しさを強調していた。
 彼女は神殿の下に広がる庭園に集まった大衆達へ興味の目を向けた。まだ子共っぽ
さを残す顔立ちだが、どことなく気品と尊厳を感じさせた。彼女の手には、白銀の奇
妙な形をした小手がされていた。中央に透明の水晶が埋めこまれている。彼女はその
左手を高々と挙げると恒例の呪文染みたせりふをいった。
 「リミルガの民よ
  大いなる崇高な神に
  我等の平和を感謝し
  その平和が永遠に続くことを祈り
  そして騎甲神の守護のもとにおいて
  その魂を愛の為に使うことを
  我等が神に誓いたまへ・・・」
鈴が鳴るような澄みきった美しい声が都の隅々まで響く。
 その声に魅せられた大衆が歓喜の声をあげる。彼女は軽やかに手を振り人々へ最高
の笑顔を贈った。大衆の中には興奮の余りに泣きだす者もいたりする。ラーラは祭壇
の階段を降りて怪我人や病人達の前に歩いて行った。
 彼女はまず、足の肉が裂けて歩けなくなった男の所で立ち止まった。男の家族が怪
我の説明をしようとしたが、ラーラは首を振り、
「わかっています。大丈夫ですよ。」
と、一言いって男に話しかけた。
「私、今日はとても気分が良いの。だって、カーニバルですものね。『あるきたい!』
って祈って下さいね。そうすればきっと歩けるわ。私も張りきっちゃいますから。」
と、年頃の娘のように茶目っ気をだす。そこが彼女の良い所なのだ。つられて怪我人
の男も緊張気味の表情を崩し心が安らいでいく気分になった。このときラーラは、
『魅了(チャーム)の呪文』を掛けていた。この術で相手の警戒心をなくすためだ。
ラーラは、男の目を見て言った。




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