AWC APPLE COMPLEX 【多すぎた遺産】(7)コスモパンダ     


        
#562/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  87/12/10   7:30  ( 95)
APPLE COMPLEX 【多すぎた遺産】(7)コスモパンダ     
★内容
<アップル・コンプレックス> 第1話「多すぎた遺産」
    パート~「カズ、涎を拭きな! 」その3

 赤毛の男はそんなにいやしない。と思ったがとんでもない。結構いるもんだ。
 これでもう五人は当たった。ノリスが付き合っていた赤毛の男。ルノー、シロー、
トッド、カミンスキー、ミッシェル、ハドソン、リー、・・・。もういいや、嫌になっ
てきた。
 マッコイの3DPの映像では、赤毛の男の人相はあまりはっきり映っていなかった。
 カーマインのターミナルを使って、シティポリスのパーソナル・ディテクティブ・セ
ンターのコンピュータに顔の紹介をしたが、返事がない。該当者確立の五十パーセント
以上はいない。とうとう二十パーセント台の確立の者まで洗い出す羽目になった。
 時間はどんどん過ぎていく。あと期限まで八時間と十分。ノリスを見つけるか、時間
を止めるか、どちらをするか決心をつけるべきかもしれない。
「カズ、まだ見つかんないの? 時間無いよ。だいたいこの仕事はあんたが持ってきた
んじゃないか」
 ムスッ、自分がメカに弱いのを棚に上げて、なんだい! 自分で検索システムが使え
ないんで、僕にやらせてるくせに! ノバァめ、検索システムなんか使わせるとコンピュータと喧嘩して、ターミナルをすぐにぶっ壊すんだから・・・。もう一度ムスッ。
 今朝も二日酔いで頭痛いって言っていたのを無理やり起こして仕事に連れ出すのが
大変だった。
 悪態をつき、ゲロを吐くノバァに冷たいシャワーを浴びせ、グチャグニャの身体に活
を入れてカーマインに乗せるまでに大事な二十四時間の内の一時間を使ってしまった。
 なんたって、ノバァの方が僕より背が若干高い。体重だって僕と同じ。抱えてシャワ
ールームに放り込むのがいかに大変か。でも、変だな。エレナは羽のように軽かったの
に? ノバァの身体はエレナの身体、同じはずなんだけど・・・。
 ノバァの奴、太ったな!
 やがてシャワールームからモニョモニョ言いながら出てきた彼女は素っ裸。前を隠し
もしない。僕を男と思っちゃいない。完全に馬鹿にされてる。
 エレナだったら恥ずかしそうに胸だって隠したのに。可愛い声で好きだって言ってく
れたのに。同じ声でもノバァは大歳増の口調。
 ウェーン、エレナに逢いたいよー。エレナ、生き返ってこないかな。ノバァなんか嫌
いだ!
 だが、子娘一人捜すだけで、何と五百万ネオクレジットの謝礼。それだけあれば、事
務所の部屋代、事務所の下のホットドック屋、クリーニングのツケ、そうそうOAシス
テムのローンが払える。しかし、そんなに払っちまうと、僕の取り分が残るかな?
 金に目が眩んだ僕は、とにかく彼女を連れ出したのだ。
「カズ、適当なやつらを二、三人、見繕って捕まえようよ」
「そんな、人違いだったらどうするんだい?」
「女の勘を信じなさい。さあてと」
 ノバァは僕を押し退け、ターミナルのスクリーンを覗くと三人の赤毛の男を選んだ。
 カーマインのコンソールには様々な装置が組み込まれている。その大半が非合法装置
だ。ノバァが手を伸ばしたテレコム(テレビ電話)もその一つ。こいつは、ひどい代物
で、電話に出ている人間の顔や姿形、声や口調、そしてテレコムのパーソナルIDまで
でっち上げて相手に送信してしまう。テレコムの相手にはこちらの素性は全く分からな
い。
「こちら、市警察。御用件をどうぞ」
 げっ! ノバァめ、何をする気だ?
「あたくし、クリスチーナ・マクミランと申します。あの、ハザウェイ警部の知人です
の。何でしたら、お調べくださっても結構ですわ」
「分かりました。まず御用件をどうぞ」
「あの、酷い男を一人捕まえてほしいんですの。あたくし、無理やり車の中に連れ込ま
れて、それで・・・。あの、その、つまり、やられちゃったんです」
「強姦されたんですか? 男の人相とか、特徴、その他、判りますか?」
「ええ、名前をバート・カミンスキーといいます。背は百八十センチくらい、髪は赤毛
で、そう車は青のフォミュラー・スーパー・スポーツの二〇七三年型で・・・」
 酷いのはどっちだろ。適当なことしゃべっちゃって、どうすんだろ?
 ノバァが使ったマクミランという名の女性は、実際に市警察のハザウェイ警部の従姉
にあたる。しかし、本物の彼女は今、オイローパ州に出掛けてパシィフィック・クイー
ンにはいない。そしてハザウェイ警部もここ数日は休暇ということを知っている。
 僕とノバァはこのハザウェイ警部には随分と厄介になっている。だからたまには、警
部の名前を借りてもいいだろう。
「人間、頭は生きてる内に使わないとね。これでカミンスキーは警察が捜してくれる」
 テレコムを切ったノバァはニンマリと微笑んだ。品の無い笑い方すんな!
「さーて、後はカーマインに市警察無線を盗聴させてカミンスキーが捕まるのを待てば
いい。楽勝楽勝。カーマイン、頼むよ」
「ノバァ、私はそういう非合法な命令には従えません」
 偉い! さすがカーマイン、痩せても枯れてもコンピュータ。ロボット法の三原則を
組み込まれたコンピュータ自我を持つカーマインは、人間に危害が及ぶ命令を受付ない
ようになっている。カミンスキーに及ぶ被害を拡大解釈し、連想して判断したのだ。
「あんた、生意気だよ。さっきあたしが言ったこと、もう忘れたのかい。雨曝しがそん
なに好きかい」
 ノバァがカーマインのカメラアイに顔を近付けて歯を剥き出す。
「報告します。パトカー、アダム二一がグランドパレス通りで、カミンスキーを見掛け
たという報告をしています。数分前のことで、すぐに拘束できるとのことです」
 なんだ〜。カーマインの臆病者。ノバァの脅しにコロッと態度を変えやがって、恥を
知れ、恥を。お前はロボットの風上にも置けない。僕は腹の中でカーマインを罵った。
 声を出すと、ノバァの雷が落ちるもんね。
 ノバァは残る二人、ジェットとカールソンも警察に通報した。
 ジェットは可愛い女の子のカバンをひったくり、カールソンはドラッグストアに強盗
に入りかけたところを見た、という通報である。その通報者(もちろんノバァ)は片方
は四十過ぎのおばさん、もう一人はなんと三十歳のおかま。よー、やるわ。
 しかし、本当にこの三人の中に夕べ、ノリスと一緒だった男がいるのかな。
 車の中で夕食のハンバーガーをかじっていると、カーマインがジェットが捕まったと
報告した。その数分後にはカミンスキーが捕まった。
 残るカールソンは女と一緒にいるところを目撃されている。その女は背中まで伸びた
プラチナブロンドの長い髪の持ち主らしい。ノリスの可能性大だ。
 ノバァはカーマインにカールソンの発見現場に急行するように命じ、カーマインに運
転を任すと、リクライニングシートを倒し、ゆったりと座った。
 夜の帳が降りたシティの中央環状道路をカーマインは疾走し、繁華街とは程遠い山手
の高級住宅街に繋がるランプを降りた。
「ノバァ、市警察の無線連絡によるとカールソンと思われる男が、住宅の一つに侵入し
て立て籠もっているようです。女の人質を盾にパトカーの警官と睨み合いになっている
そうです」
 ただでさえ、時間が無いのに、事態はますます複雑になって来た。
−−−−−−−−−−−−TO BE CONTINUED−−−−−−−−−−−−




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