#518/1850 CFM「空中分解」
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「紙飛行機」 第1話 メガネ
★内容
「紙飛行機」 第1話 メガネ
「痛ててっ!」
昼休み。僕は突然下腹部に激痛を覚えた。
「どうしたんだよ。」
「いや、何か突然腹が痛くなって…」
「またまた。早退したいんだろう? 仮病か?」
「アホ! 本物だ!」
「う〜ん、そう言われてみると顔色が悪いな。」
「だから本当だといっとるだろうが!!」
「どら、保健室に連れてってやるか。」
「悪い。頼む…」
そこ迄言いかけて僕は失神してしまった。
僕は北海道大学に通っている学生。今迄ずっと健康が僕の取柄であり自慢だった。
これで成績も良ければサマになるのだろうが、その面には全くもって自信がない。1
年から2年に上がる時も法学の先生の前で30分も土下座をして助かった。
その僕がたかが腹痛で失神するとは…甚だ情けない。気が付いた時は保健室のベッ
ドの上だった。2人の親友と、みったくないババア…もとい、歳をとられた昔は可愛
いかったであろう保健担当の先生が僕の顔を覗き込んでいた。
「おお、大丈夫か酒井。」
「残念、未だ生きてたのか。」
憎まれ口を叩く奴だが、根はとてもいい奴…だと思いたい。おっと忘れていたが、
僕の名前は酒井数斗。薄幸の美少年である。「醗酵」ではないので留意されたい。僕
は腐ってはいない。
「どう、未だ痛むのかぃ?」
むしろ腐ってるのはこのババア…いやいや、先生の方だろう。「バタリアン」との
異名も持っているのだから。
「はぁ、かなり……」
「大丈夫か? 顔がもう真っ白だぜ。」
「お前、女の子だったら良かったのに。」
人が苦しんでいる時に平気でギャグを飛ばす奴の気がしれない。
「病院に行って検査して貰った方がいいのかねぇ。」
うっせーバタリアン。言われなくても行ってやらあ!
「じゃ俺達が担いでいってやるよ。」
2人は僕を担ぐと学校のとなりにある中央病院に駆け込んだ。この病院で、もう3
0人が楽になって昇って行ったという噂を聞いている。2人がこの病院に駆け込んだ
のは何か意図があるのだろうか。どうでもいいが。
早速診察室に入れられた。2人の親友は待合室で待つ事になった。僕がベットに横
になると、白髪の医者が入って来た。
「どういう風に痛いんです?」
「はあ、何と言うか、針でつっつく様な感じで。」
「う〜ん…針ねぇ。」
医者は僕の腹を押えた。
「あたたっ!」
「ほう。痛いですか。」
何を言っているのだこの医者は! 痛いから来たのだ!
「この辺はどうですか?」
ヘソの辺りを押して言う。
「あつつつ!! 痛いです!!」
「ではこの辺は?」
「いて、いて、いつつつ!! 痛いって言ってるじゃないですか!」
ヤブ医者め! 楽しんでいるのではないのか?? そういえば何となく目が嬉しそ
うに見えない事も無いが。
突然医者が本当に嬉しそうな顔になった。
「う〜ん、こ、これは…」
「なんなんですか??」
「…あなた…男性ですよね。」
「見れば判るでしょう。」
「やはり………はい。判りました。」
「そ、そうですか!! なんなんですか?」
「喜んで下さい。おめでたです。」
………僕は一瞬気が遠くなってしまった。おめでた? 妊娠?? まさか! そん
な筈はない! 俺は男だ!!
「ま、また、そんな冗談を…」
「はっはっは。やはりきづかれましたか。ジョークです。」
僕は遊ばれているのか??
「いやいや、患者を驚かすと病気が治る事がままあるんです。いわゆるショック療
法という奴ですな。」
「先生!! 患者を驚かせて遊ばないで下さい! 本当はなんですか!!」
「急性盲腸です。早速入院の手続きをしましょう。」
僕は次の日から学校を休む事になってしまった。
第1話 完
第1話は殆どギャグになってしまいました。次回からはまともになります。
メガネ