AWC リレーA>第11回 戦い 加奈とナオミ T−BELL


        
#282/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (TZJ     )  87/ 8/29   7:20  ( 79)
リレーA>第11回 戦い 加奈とナオミ T−BELL
★内容

「これを読んでおいてくれ。いろいろと役に立つ。」
 堤は、俺に分厚い紙の束を渡した。
「ここに書かれているほとんどのことは、必要があれば、自動的に君の脳へ直接送ら
れるから本来なら読む必要はない。だがそのあたりは、まだ故障が多くて肝心なとき
に機能しないことがあるようなんだ。ほかに機能強化の改造も度々で、まあ正直なと
ころまともに動いているのが珍しいくらいだ。でも故障と判ったらすぐ直してくれる
から安心してくれ。おまけに最新機能も付けてくれるし。」
「そんな。」
「仕方がないだろう。なにせ高価な機械だ。いくらすると思う。600万ドルなんて
言わないでくれよ。そんなに安くない。ともかく、君の体は最新最高性能のマシンな
んだ。まあ最新最高性能になった分はまだテストされていないんだが...。開発の
連中は、データがとれるって喜んでるよ。協力してやってくれ。」

 何にでも付いてくる「取扱説明書」。普通分厚いのがとりえだが、健の体の「取説
」は、開発者が書いたメモと技術資料の寄せ集めだから、たまらない。
...をすると、...となることがある。...の時は...に注意すること。
...異常の際は、右脇腹の「へ の 六」点検扉(日本語表記なのである)を開け、
スイッチ6−6をOFFにした後、左耳を軽くひねり...

「うー。」
 やめた。ぱらぱらとめくってはみたが、到底彼の理解の及ぶところではない。ただ、
彼の「取説」には、恐ろしく重要な1行があるのだが、このての本の常として、見つ
けられないようにつつましく書かれている。もちろん、彼は知らない。

 「○○○をしないで下さい。...のためシステムが破壊されることがあります。」

 閉じて、前の机に軽く置こうとすると、まだ慣れない体、バランスを崩して前のめ
りに。慌てて手をついたとおもいきや、嫌な音を立てて手が机にめり込んだ。しばし
呆然。
堤は、にやにやしながら眺めている。
 なるほど、俺、サイボーグかと今更ながら感心して無傷の手を眺め、
「ふうむ、10万馬力か(古いな)、これで空を飛べたら赤いケープでも買ってこな
けりゃな。」などとつまらないことを言ってみる。
「飛べるかもな。」
「堤さん、こんな具合いならたぶんほかも強化されてるんでしょう?走れば時速10
0km?目は闇夜も見える赤外線?それより腹の中はどうなっているんです?」


Iミ、あなた、ずいぶん私を読んだわね。これからどうするつもり?」
「◎●□▲〒%●♂&)▽》《...」
「あなたはどちらにつくの?」
「#♂♂♂◎→〆´」
「まだお話は無理かな?仕方ないわね。教えてあげる。こうするの。」
「‖〇ぬひょか×♂◎◎わー」
「だめーぇ??」

「あんたこそどうするつもりなのよ!さっさと出てってよね!」
「!!」
「ふん。今じゃ、あなたを追い出すこともできるのよ。あなたのおかげでね。」
「何ですって。さんざん私から吸い取って、いらなくなったらもう捨てるのね!そん
な...あんまりじゃない。あなたと私は...ナオミ...あなた...」
「えーい、ごたごた言ってねえでさっさと荷物でもまとめな。」
「ね。ナオミ、考えなおしてよ。ねえ、お願いだから、ナオミったらあ、ねっ。」
「.........どういうつもり?」
「...あなたと...一緒にいたい...」
「あ、え、何?そういうのわたし嫌い。ちょっと、加奈、何か勘違いしてるんじゃな
いの。」
「そう...だめなのね。私たちもう...」
「やだ。違うったら。ともかく私から出てほしいだけよ。勇弥にでも取り憑(つ)け
ばいいじゃないの。」
「そう、駄目なのね。あなたは私の敵になるのね...じゃ、はじめましょうか。あ
なたを乗っ取るわよ。」
「さあいらしゃい。あなたを消してみせるわ。」
「手ごわいわよ。そうね、乗っ取ったら健もついてくるのね。あんまり好みじゃない
けど。ひさびさの生身の肉体、あなたの体は具合いがいいわ。もとの体には戻りたく
ない...。そうだあの人機械の体なんだ。うふっ。」
「あ、いやだ。健はあたしのものだからね。そんな魂胆もあるのね。じゃあたしは、
勇弥を。あんたを消すまえに、勇弥とどんなことしてたか覗いちゃお。」
「ナオミ!やだ!そんなとこ読まないでよ!」
「ブロック技術はそれほどでもないのね...なあんだ。」
「何よ!」
「何よ!」
...

とまあ、低レベルな戦いも始まったのである。

                                                     《つづく》





前のメッセージ 次のメッセージ 
「CFM「空中分解」」一覧 T−BELLの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE