AWC リレーB>第4回 旅先の女   *** AYASE ***


        
#225/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HWA     )  87/ 7/17  23: 4  ( 83)
リレーB>第4回 旅先の女   *** AYASE ***
★内容
 「あなたの国では、それが礼儀なのかしら。」

 しばし、声も出せずに惚けていた僕に、含みのある声でババさんが言う。

 「しっ、失礼しました! あのっ、芳岡っていいます!はじめまして!! デ、

 無茶苦茶あせった。 ババさんの声に。微笑みに。 静まらない僕の鼓動の音に。
そして、その信じられない情景に。
 ヒマラヤの雪をも溶かしそうな熱を出し出し、僕は、とんだ醜態をさらしたも
のだと、うつむいてしまった。

 「ほっ。ほっ。 まっ、そう熱くならずに。聞いたらどうじゃな。捜しておる...

 「(そうだった!) けっ、啓子!! 啓子の行方を占って下さいっ!!」

 優しいカラモラさんの言葉を遮って、僕はしゃべった。

−−−−−−−−−−−−−− ガタンッ! −−−−−−−−−−−−−−−

座っていた椅子を蹴倒すほどの勢いで、ババさんに近寄る。すると僕の額にその
占い師はそっと人差指をあてた。 瞬間、不快な感覚と共に、占い師の声が僕の
中に響き渡る。

 「ヨシオカサン。 アナタガ来ルコトハ、予知シテイマシタ。 アナタノ場合、
  言葉ニスルヨリモ、心ヲ読ミトッタ方ガ、イイヨウデス。 思イ浮カベナサ
  イ。 アナタノ願イヲ。 ***ト引キ換エニ占ッテサシアゲマス。」

 テレパシィ(!?) のろのろと回る思考の中で、僕は順に願いを思った。 ある
言葉を聞きのがしたのも知らずに。。。

 いつの間に眠ってしまったのか、腹の音で目を覚ました。
”僕の腹時計もすてたもんじゃないな。” 食を抜いて御機嫌ナナメの腹をなだ
めながら僕は思った。 ”音を止めるスイッチはないけどね。”

 時は6時を過ぎた頃。 僕はネボケ眼で部屋を見回した。 外の薄明るい光が、
少しづつ流れ込み、他の2人を浮かびあがらせる。

 寝袋のカラモラさんは、プッ、相変わらずの黒い梅干しだねぇ。 僕はご飯が
懐かしいよ。
 こみあげてくる笑いを抑えてババさんを見た時、僕の笑いは消え失せ、再び
遭った信じられない情景に息をのんだ。

 そこには、両の手の間に紅い玉を浮かせ、体から蒼白い光を漂わせて浮いてい
る、ババさんの姿があった。 冷えた空気の中、汗を吹き出たせ、長い髪の毛は
生き物のごとく動めき、ババさんは呪文を紅い玉にかけながら、小刻みに震えて
いる。

 紅い玉が高く浮いた瞬間、「パンッ!」と弾ける音がして光ったかと思うと、
ババさんは倒れた。 紅い玉はない。

 サッと、いつ起きたのか、カラモラさんが駆け寄る。 僕は、情けなくも一歩
も動けずに、そこにつっ立っていた。

 「余程強い力がはたらいたと見えるのぉ。 ババの占いは静かで有名なのじゃが。」

 ババさんを介抱しつつ、カラモラさんがそっと言った。

 ババさんに頼んだ願い事。 啓子の消息。
時間も金も余裕のない今、一刻も早く知りたい事だ。 ”無事でいてくれ”
そう思った自分の言葉に、僕は虚しさを感じた。 無事手いたところで、啓子は
僕とは帰らない。 何故なら啓子はアイツを追って来たのだから。 アイツを追って..

 そんな思いにふけっていた時、カラモラさんの声が耳に響いた。

 「大丈夫かの。 ババよ。 起きれるか(!?)」

 ババさんは、うなずいてカラモラさんの手を取り、立ちながら僕に言った。

 「ふぅ。油断したわ。 影があんなに強かったとはねぇ。。。
  芳岡さん。 あなたの願い −2人の消息− は、邪魔があって、私では
  占えません。 もともと私は、近未来の占いを専門としているのです。
  そこで、勝手でしたが、あなたについて占ってみました。」

 影が強い(!?)邪魔がある(!?) 頭が混乱している僕に、ババさんが続けて言う

 「あなたはスグに、味方になりうる有望な方と巡り逢うでしょう。 西へ、西へ
  お行きなさい。 そして、その方にお尋ねなさい。 額のルビー・左手のアザ・
  賢者の剣が目印です。」

 収拾をつけようとしていた時、不意にカラモラさんと目が合った。 ニッコリと
笑い返してくれる。 その隣で、ババさんが妖しく微笑んだ。

                         *** つづく ***




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