#76/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 86/12/ 5 16: 4 (151)
『RUN ☆ ONLY!』 (前編) Last Fighte
★内容
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『RUN ☆ ONLY!』
八木 裕介(LastFighter)
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何年何月何日何時何分何秒なのかは、わからない。
時刻は夕方近くだろう。それが証拠に、下校中の中学生が沢山いる。
「三田中学校」、それがこの中学生たちの通っている学校名だがそんなこと
この小説には関係ない。
その学校より一人の男子生徒が駆け出してきた!鞄を片手に走り続けている。
別にこやつが特別な人間であるわけはない。しかし何故走っているのか?
学校の教室から聞こえる声を聞いてみよう。
「げっ! 篠原のやつ!また逃やがったぞ!」
「あんにゃろ〜!掃除当番のくせに、真面目にやったこと一度もねぇじゃんか!」
「えっ!?篠原君、また逃た!?」
「あなたたちがしっかり見張っとかないからよ!」
「な、なんで俺たちのせいにするんだ?」
「男子の責任だからね!また、先生にどやされるわよ!」
「なんだと!?勝手なこと言うな!」
と、こんな具合である。この後この言い争いは延々50行にまでわたるが、そんな
ことをすると、わけがわからんので止めておこう。
とにかく、この篠原と呼ばれた生徒はとてつもないスピードで学校から逃だした
のである。さて、この中学校の正門を出て、しばらく進むと下り坂にさしかかる。
この篠原という生徒もここを下る。いつもの事だ、さして気にする事はない。
彼自身もいつもどおり、タッタッターッと駈けおりていく。決して彼の体育の成績は
良い方ではないが、坂の勢いも加わってか物凄いスピードだ。だからといって彼が神の
領域に踏込むとかそういった物語ではない。
[なははは、また成功しちまったぜ。掃除なんて俺の性格に合わないもんな〜]
彼はそんなことを思いながら駈けおりていく。少し苦しいが、駆けることは止めなかっ
た。この坂道は、100m弱で終る彼がその終りまで来た時初て駆けるのを止めた。
此処まで来れば良いだろう。まさか追っかけてはくるまい。そう思って歩き初めよう
とすると上の方から声が聞こえた。
「だめよ!」
彼は驚いて上を見上げた。すると彼と同い年位の女の子がいた。
とはいってもなんとその子は空中に浮いているのだ!
「な、なんだ〜!?」
おもわず、篠原は叫んだ。その声を聞いてその空中の女の子はあわてた。
「あ……ま、まずい!」
そう叫んであわてて女の子は、腕に付けているリングの様な物に手をやって、作動さ
せる仕草をした。その途端、まわりの景色があっという間に白黒写真のようになった。
「げげっ!?」篠原は、驚いた。一瞬自分の目がおかしくなったのかとおもった。
だが、その次の瞬間もっと驚いたのだ。
「ひえっ!?」なんとまわりにいる人間全員が止まっているのだ!
ふと見回せば何もかもモノトーンの中で止まってしまっている。
これがウイングマンの世界なら理解できよう。しかしあれは白黒ではなくて逆さまに
なるはずだが……。篠原がおろおろと驚いている最中に、先程空中にいたはずの少女
が篠原の目の前に降てきた。
「ふ〜ん、確にこの人で間違いないんだけどな〜。」
そう言いながら、何処からか取り出した手帳を見ている。
「な、な、な、な、、、、!????」
篠原は、頭の整理がつかなく口だけがわけのわからん言葉を吐出していた。
「な、なんなんだよ?君は?」
やっと真面な言葉が出た。少女が顔を上げた。
[かわいい ☆!]
非常識にも少女が顔を上げた時、篠原はそう思った。まったく、自分の状況が
判っとるのだろうか?
「あのね!あなたは今日、此処で心臓マヒ(うぅ、第一水準のつらさだ〜)を、起こ
して死ななきゃならないの!」
「へっ?」
あまりにも突然の言葉だ。これで[はい、そうですか]と、死ねるわけがない。
「だから〜あなたは今日死ぬわけ!」軽い言葉で少女が答えた。
「な、なんでだよ! 大体、君は誰なんだ?」
「わたし? わたしは臨時霊魂輸送係員よ。あなたの魂を運ぶの。」
「えっ、だ、だって俺生きてるぜ!!」
「それが変なのよ、この坂であなたは死ぬはずなのに、ほら。」
少女は先程の手帳を開いて篠原に見せた。なるほど、開いたページには篠原のフルネ
ームと生年月日等々が記されている。そして今日の日付で[死亡…心臓マヒ]とまで
書いてある。しかし、篠原の心臓はまだ元気にドックドックと動いている。
篠原は顔を上げて少女を見た。
「じゃぁ、君は死神か?」
「3次元人はそう言ってるみたいだけどね。でも私は本職じゃないわよ。
アルバイトでやってるんだから。」
「ア、アルバイト〜?」
「そっ!」少女は、かる〜く答えた。「衝動買いしすぎちゃって、毎月のローンが払え
なくなっ……なっ、何言わせるのよ!」
「自分で言ったくせに。」
「と、とにかく貴方は今日此処で死ななくちゃならないの!」
「だから俺はまだ生きとるって!」
「うぅ。」少女は、黙りこんで手帳の最後の方のページを読み始めた。
「まいったな……… コンピューターミスかなぁ?」
篠原は、必死に手帳を見ている少女にたずねた。
「おい、ところで何なんだよ?この白黒世界は?」
少女は、手帳を読みながら答える。
「えぇ?あー、此処?一時的に時間を止たのよ。あなたの死亡予定時間の直前にね」
時間を止めた! うーむ、やはりこの娘は本物の死神なのか〜。と、篠原は認識
した。しかし、今日自分が死ぬと言われた事を思い出してあわてた。
[うーむ、今日俺が死ぬだと〜!?ま、間違いに決まっとるよな〜。
しかしまてよ本当の事だったら今のうちに逃た方が‥‥‥ ]
そんな事を考えていると、少女が手帳を閉じてまたもや空中へ舞い上がった。
篠原は、別に驚きはしなかった。此処まで来れば誰でも驚くまい。
しかし、一寸ためらったが篠原は少女を見上げて叫んだ。
「お、お〜い!お、俺が死ぬってどうなったんだ〜?」
少女は、5m位で停止して答えた。
「あなたが死ぬって事は本当よ!ただ……」
「ただ?」
少女は、体制を変えた。頭が下になっているが平気のようだ。
「一寸、コンピューターのミスでね〜。貴方が死ぬことのプログラムが落ちていた
みたい。だから〜」
そう言うと少女は何処からか取り出したのか、ハンドヘルドコンピューター位の機
械を取り出した。そして、パカッと蓋を開けた丁度その形はPC−98LTに似て
いた。少女は何やらキーボードを打つ仕草をした。と、同時にでっか〜い石ころが
転がって来た!しかも、篠原に向かって!
「げげっ!」
篠原はたまらなく逃だした!しかし、石も追いかけてくる。しかも凄いスピードだ
「ぎゃ!ぎゃーーー!!!」
意味不明の言葉を口走りながら必死で篠原は走続けた。
白黒世界の、カーブを曲っても階段を昇っても、石は器用に追いかけてくる。
しかし、篠原も命がけだ。ぐちゃぐちゃに逃げまくる。
「こ、こら〜!ど、どういうことだ!?こいつは〜!?」
走りながら先程の少女に叫んだ。少女は篠原の上を飛んで追いて来ているのだ。
「だからあなたに此処で心臓マヒで死んでもわなないと、わたしが困るわけよ。」
「んな!無茶言うな!」
「ほら、もっと速く走らないと潰されるわよ!」
更に石のスピードが上がった。きっと少女が操作したに違いない。
篠原は、走った、走った、走った、走った、走った、走った、走った。
どんどん走った、走った、走った、走った、走った、走った、走った。
死ぬほど走った、走った、走った、走った、走った、走った、走った。
とにかく走った、走った、走った、走った………………
読者の皆さんにここで言っておくが、この表現方法は事実をより正確に書こうと
している訳であり、別に行かせぎなどではないのである。
篠原の体験した事実をそっくりそのまま文章に仕立てあげるためには不本意ではあ
るが、これしか方法がなかったのだ。で、あるため作者の手の内を詮索するのは止め
てもらいたい。事実こんなことを繰り返して書くことは単純作業であり非常に疲れる
のだ。やらなきゃ良かったとひたすら後悔をしているのである。
(しめたこれで、10行もかせげた!あわわ、本音が‥‥‥‥)
篠原は走り続けた。しかし、もうそろそろ限界である。心臓音がドクドク聞こえる。
「こら〜! いいかげんに心臓マヒで倒れてよ!」
なかなか、心臓マヒを起こさない。篠原にしびれをきらせたのか少女が怒鳴った。
「んな、無茶な!そう簡単に心臓マヒが起こってたまるか!」
「起こせばいいでしょ!」
「あ、あのな!」
「人間死ぬ気でやれば。なんだって出来るわよ!」
「本当に死んでどうするんじゃ!」
「ほら〜!早く死なさいよ、早く死なないと殺すわよ」
「意味が見えん!」
走りながらの会話で篠原は更に疲れた。もう、だめか?
「もういい!やるならば、ねちねちやらないで一思いに殺せ!」
篠原は、これ以上苦しくなるのにたえられなくてそう叫んだ。
「だめよ‥‥、心臓マヒ以外の死に方じゃ。わたしが減給されちゃうもの。」
「な‥☆に‥★」
篠原は、走るのをピタッと止めた。すると不思議なことに今迄追い駆けてきた石は
篠原を通り越してフッと消えた。
「あ☆」少女が短い声を発した。そう、この石は幻影だったのだ。
「ふっふっふ、やっぱりな...。はっはっはー!」
篠原は勝誇った声を発して言い続けた。
「要するに君は俺が心臓マヒ以外で死ぬとまずいと、いうことだな?」
「い☆」少女はしまった!と思った。余計な事を言ってしまったのだ。
「ふふふ、やい!俺を殺そうとして見ろ!」
篠原は、鞄(走りながらもしっかり持っていた。)から美術用の彫刻刀を取り出し
一番鋭いやつを首にあてた。(設定が不自然かな?)
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(前編終り、後編に続く)