#2270/3619 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/07/02 21:57 ( 35)
映像化の難しさ 永山
★内容
BS松竹東急で放送の二時間ドラマ「招かれざる客」(二〇〇一年の制作)を録画視
聴。ネタバレ注意です。
原作はアガサ・クリスティによる同名戯曲。観たことないですし、読んだこともあり
ません。ただ、本作の評価が高いことは見聞きした覚えあり。
実際はどうだったか。始まってしばらくは、やや通俗的な、いかにもな二時間サスペ
ンス物の滑り出し。山中の道で乗用車が脱輪して動けなくなり、困った男(車のセール
スマン)は助けを求めて近くにお屋敷を訪ねる。ちょうどその頃、屋敷ではある計画殺
人が進行中だった。……。可憐なと呼ぶにはやや年齢が上のヒロイン(浅野ゆう子)が
罪を自白し、なかなかの男前であるセールスマン(三田村邦彦)がそれをかばってあれ
これ工作を開始する。……。
うーん、粗筋を書こうとしたんですが、どう書いてもフェアな記述にならない。視聴
者の視点を取って書くのが一番なんですが、それはそれで個人差があるでしょうから難
しい。
とにかく、観始めてからしばらく、というよりもずーっと、『二時間サスペンスに慣
れた視聴者なら半数以上が見透かすであろうレベル』のちょっとした“仕掛け”が目に
付くストーリーが展開されます。解決に入ってもそのちょっとした仕掛の答合わせが進
んで、そのまま終わる……という感じでした。
が、残り十分余りの頃に、刑事の一人が“ちょっと気になって調べてもらっていた”
ことへの返答があって、流れが一変する。あれよあれよという間に、真相の解明が進
み、どんでん返しが決まった。なるほど、この仕掛けの構造は面白い。
複数の犯罪者が同日同時刻に行動を起こす偶然が引っ掛かるけれども、ミステリとい
うものを充分に味わえる出来映えだと思いました。あ、あとできれば確実なロジックや
物証が欲しかったですね。
書物に当たって調べてみると、原作は誰もが怪しく映るような構成を取っているとの
ことですから、確実な物証を用意するのはさすがに厳しいか。それに、真相を確定させ
ないままエンドを迎えるみたいだし、そうなるとますます物証なんてあり得ないわな
〜。
そして、全員が怪しく見えるようにということは、誰を主役に据えて撮ろうともいい
島は成り立つんだろうし、逆に誰か一人に観客目線の視点を固定してしまうと幻s買う
本来の狙いが損なわれる。純粋に観客目線で撮影するのが一番なんでしょうけど、それ
とて舞台劇と異なり、ドラマは場面場面で部分的にクロースアップするのが普通だか
ら、純粋な観客とはなり得ない(観客は舞台のどこを見るかを自身で選択できるから
)。そういった意味から、映像化困難な作品だと思いました。
ではでは。