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★タイトル (AZA ) 19/07/13 21:32 ( 39)
本の感想>『100%アリバイ』 永山
★内容
この感想、UP済みと思ってましたが、検索しても見当たらないので、一応。
・『100%アリバイ』(クリストファー・ブッシュ/森下雨村 訳 早川ポケミス)
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英国はシイバロ市で、殺人事件が発生する。被害者のリュートンというその男は、裕
福な暮らしを送っており、召使い夫婦まで雇っているが、何を生業としているのか定か
でない。警察が調べていく内に、職業斡旋業の男・ビースと組んで、家政婦や下男を裕
福な家に送り込み、その家人の秘密を握っては恐喝して金を巻き上げていたらしいと分
かる。後に出て来たノートにより、その被害者は多岐に渡っていた。
リュートンの死亡推定時刻は、電話やその他目撃証言などもあって、夜七時五分から
二十分まで限られた。しかし、五名に上る容疑者達は揃いも揃って完全なアリバイを有
していた。シイバロを休暇で訪れていたワートン警部は、この事件に首を突っ込んだも
のの解決に至らず。そこで彼の友人で、著名な経済学者にして殺人事件解決の実績もあ
るトラヴァースに協力を持ち掛ける。
トラヴァースは容疑者五人のアリバイを子細に検討し、その内の一人が、他から独立
した形で成立していることに着目。100%完璧と思われたアリバイを崩そうと、容疑
者に接近を図る。
『完全殺人事件』で評判を取った作者が世に送り出したアリバイミステリ第二弾。
ミステリ関連のエッセイ本で、この作品が紹介されていて、是非読んでみたいと思っ
ていたものです。その紹介では、「100%のアリバイの前では、法の力をもってして
もどうすることもできない」云々という作者の言葉が示されており、実際その通りの内
容だというから非常に興味を惹かれたものです。
読む前に結末を予想してみました。どうしても犯人を追い込めないため、探偵役が犯
人を殺してしまうか、あるいは探偵が殺されてしまうのかな?と。
幸いにも外れており、作者の凝ったアリバイトリックとプロットが堪能できました。
文章は旧訳のままで、とても読みづらかった。「はつきり」とか「すつかり」、「ち
よつと」はじきに慣れましたけど、何度も出て来た「電話をかけるもいつしよ、背後か
ら突き刺した」の「いつしよ」には違和感が拭えず。文脈からは、「電話をかけ終わる
と同時に」「電話をかけ終えるや否や」と受け取れるんですが、字面だけだと「終わ
る」のニュアンスがないので……。
もう一点、殺人が発生した家に警察が何日間も――それこそ捜査本部がそこにあるん
じゃないかと思えるくらい長々と――居座って捜査を続けるところにも違和感が。てっ
きり警察署に戻ってるんだと思って読み進めたら、現場の家だと分かってびっくりした
です。当時の英国ではこれが当たり前だったのか?
あと、最終盤の辺りは読者への手掛かり提示が不充分かな。だから、完全に見抜くの
は無理でしょう。その点のカバーがあれば、もっと高い評価を出せました。
ではでは。