#764/3613 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 19/01/26 20:44 ( 35)
本(短編)の感想>「黄瀬木通りの奇跡」 永山
★内容
寝不足なのか風邪の前触れなのか、ちょっと頭痛がする。
そんな訳で、感想の棚卸しです。語りたい事柄がもう少しあるような気がするのです
が、いつまでも寝かせておくのは鮮度が失われるばかりと判断。あ、長編では恒例の点
数付けはとりあえずなし。
東京創元社の雑誌『ミステリーズ!』VOL.92に掲載の短編「黄瀬木通りの奇
跡」を読了。鵜林伸也作。ネタバレ注意です。
バンドを抜け、音楽そのものをやめることにした沖田が、アンプとベースを特別回収
の粗大ゴミに出すが、何度捨てても部屋の前に戻って来る。誰が何のために?
――ざっと言って、この謎一つに集約されるお話。雑誌の予告には楽器が戻ってくる
という表現だったので、クラリネットとかハーモニカとかの持ち運びしやすい、話もか
わいらしい「日常の謎」系と思ってた(笑)。
で、この謎を成立させるために、大きな偶然を根っこにしている。そこを認めた上
で、探偵役は蓋然性を基本にした推理を組み立て、真相を見抜くというスタイルは、何
となくちぐはぐな印象を受けるかなあ。最も肝の部分は偶然で片付けて、他は蓋然性を
認めるのってどうなの?的なもやもや。もちろん、解き明かされてみればちゃんと筋が
通っているのですが、探偵役が真相を突き止めるのは本来、難しいはず。この偶然を認
めるんだったら、楽器が戻されるのは毎回異なる人物の仕業である可能性を検討すべき
では(苦笑)。
細かいこと言えば、楽器類が戻されるところを誰も目撃していないのも不自然な気が
する。沖田の家は社宅用マンションの一室(二階)、その向かいにも団地が建つ。社宅
の方は、朝の時間帯が過ぎれば誰もいなくなるでしょうけど、団地はそうも行くまい。
また、ゴミとは言えゴミ置き場にある物を勝手に持っていくのは許されていない行為。
そういうのに対する“正義感”の強い住人が、暇さえあればゴミ捨て場をチェックして
いるかもしれない。社宅の隣には管理人の家もあるし。
本作を読んで感じたのは、同じ作者の長編『ネクスト・ギグ』にも言えるんですけ
ど、行われていてしかるべきことを覆い隠す(記述せずに済ませる)のがうまいな、っ
てこと。今回は目撃者捜し、長編では警察の捜査。読んでいる間は、さほどおかしく思
わせないだけの力量がある。
一方、キャラクターの造形には、今回、ん?となった。沖田が言うほど斉木っていい
男には見えない。彼女との仲を「お似合いの二人だね」と言われて、おまえ程度の男に
はちょうどいいと受け止める沖田の性格設定にも共感できないというか、ひねくれてる
なあと。
ではでは。