#287/1160 ●連載
★タイトル (yut ) 04/06/06 00:15 ( 58)
揺らめぎの狭間と、少女〜その壱 天魔・零
★内容 04/06/07 16:09 修正 第3版
月が微笑む夜。照らされるは、漆黒の森。
森は、風で唸る。唸る森を走る、少女がいた。
黒髪の長髪。目は大きく、形のよい唇。少女は、漆黒の森に似つかわしくない、セー
ラー服を着ていた。
走り続ける少女を追いかけるものは、全身を銀色の毛で覆った虎だった。
風は森を唸らせ続ける。夜は、まだ終わらない。
「誰だ?こいつ」
朝、近くの村で、誘いの森、と呼ばれる場所で、コクウは木に寝そべっている、少女を
見つけた。
「見慣れない服、着てるなー」
コクウは、少女を訝しげな目で見ていた。
当たり前だった。
コクウからすれば、こんな所で寝ているだけでも非常識なのに、さらに見慣れない衣
服。そして、森の主に見つからず生きている、と言うだけでコクウが疑いの眼差しを向
けるのは当然だった。
「変な奴だな。意外に、京の貴族だったりしてな」
コクウは、一人で冗談を言い笑う。
「とりあえず、起こさないとな。話はそれからだ」
コクウは、少女に近寄った。
こうして見ると、なかなか可愛いな、とか思いながら肩を叩いた。
少女は、すぐ目を覚ました。
寝ぼけ眼で、
「おはよう〜」
と、言いながら。
「おはよう。じゃあ、起きたばかりで悪いが、質問だ」
「ん」
「お前の、出身國は?後、名前もな」
「隊長〜、私も同じ質問をヨロシイですか〜?」
寝ぼけ眼のくせに、即行で質問をカウンターしてきたことに、驚きながらもコクウは答
え
た。
「俺は、コクウ。出身國はここ、レイジェスプの極東の村、サイレロだ」
言い終わると、すかさず
「私は、祈祷絢水(きとうあやみ)。出身国は日本で北海道で生まれ、北海道育ちだよ」
と、返してきた。
「アヤミか。ニホンって、どこら辺にあるんだ?聞いたことない國だな」
コクウは、考えながら聞いた。
「ええと、日本はアジアの東にあるよ。北海道は、日本の北だね」
コクウは、さらに考える顔になった。だが、すぐに元の顔に戻り
「どこだよ、アジアって。まぁいい。この件は保留だ。まずは、俺の家に来い」
コクウがそう言うと、絢水は驚き
「連れ去られる〜。美少女拉致監禁事件だ〜」
と、笑いながら喚いた。
「お前、起きてすぐからハイテンションだな。つか自分で美少女とか言うな」
コクウは、即効でツッコミを入れる。
「分かったよ。コクウくんの家に行くよ。お腹も空いたしね」
「くんとか、付けるな背筋に悪寒が走る」
実際、コクウの腕に鳥肌が立った。
「うん、じゃあ、コクウの家に出発だー」
一人で、おー、とか言いながら、先行する絢水。
先行する絢水を、ヤレヤレと言う顔で追いかけるコクウ。
二人は、そうして出会った。
終わり。