#278/1160 ●連載
★タイトル (yiu ) 04/05/13 22:49 ( 20)
戦国演義(6) 早川龍胤
★内容
籠の中で竹千代は考えていた。自分が何時解放される、かと。信秀は情に厚いから、二
年ぐらいだろうと竹千代は思った。外で『じゃり、じゃり』と音がする度に籠が揺れ
た。竹千代が輸送されている最中信広は、自ら馬に跨り手勢を纏めて那古屋城へ向かっ
ていた。
「拙者の解放に身代わりになってくれた者の名は?」
「はっ。信長様からの伝令によりますと、竹千代という、小姓であります。」
「勇気のある者だな。よし。尾張に帰ってきたら、褒美を取らせよう。」
駿河城は横に広がっていて、高くできた尾張の那古屋城とはまったく違う物に竹千代
は見えた。これから何年ここにいることになるのか。
駿河城に着くや否や、今川義元と面会が始った。義元は、眉毛を剃り、顔を白く化粧
してお歯黒だった。正に、平安時代の貴族気取り。この男はすぐに滅ぶな。竹千代は直
感した。
「帥が、竹千代という小姓か。年はまだ幼いそうだな。織田も非常な奴等じゃ。」
ぶてぶてしい、贅肉を震わせながら喋った。
「はっ。竹千代にござります。どうぞ、好きなように使ってくださりませ。」
「ほほぉ。愛い愛い。心配することはない。この義元が可愛がってやろう。」
「はっ。忠義を貫きたく思います。」
「あっはっはははっは。」
義元の出っ張った腹が振れていた。