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★タイトル (AZA ) 11/08/20 21:50 ( 24)
本の感想>『ペガサスと一角獣薬局』 永山
★内容
・『ペガサスと一角獣薬局』(柄刀一 光文社)17/7442
龍の伝説が伝わる湖の近く、“龍の木乃伊”が飾られた吹雪の山荘にて、奇
怪な事件が起こる。建物の中に侵入した龍が被害者を踏みにじり、玄関を突き
破って出て行ったとしか見えない(「龍の淵」)。使われなくなり、出入り口
や窓を溶接された鉄製の燻製小屋。五年ぶりに開いてみると、中では白骨死体
がうずくまっていた。しかも被害者とみられる人物は三年半前に目撃されてい
た(光る棺の中の白骨」)。一角獣とペガサスらしき生物が相次いで目撃され
た森で、死人が見つかる。被害者を蹴り殺した馬の足跡は、天に駆け上ったか
のように途切れていた(「ペガサスと一角獣薬局」)。
奇想天外な謎を提示する四つの短編プラス一つのボーナストラック。
詩的な謎、あるいは力業のトリックという点で、島田荘司の後継者はこの人
だろうと改めて思わされる作品集でした。とにかく、奇想に溢れています。謎
を作る努力の項目で、満点を超える七点を進呈。八点でもいいくらい。
物語の道行きは、やや淡々としているきらいがありますが、謎とその解明に
焦点を絞っており、そこに魅力を見出せる人なら、充分に楽しめるはず。以前
に比べたら、随分と読み易くなったんじゃないでしょうか。背景となるエピソ
ードを、うまく溶け込ませるようになった印象を受けました。
個人的に最も感心したのは、粗筋で触れなかった「チェスター街の日」。今
やさほど目新しくなくなったトリックを、この分量であっさりと効果的に使う
手腕は素晴らしい。何が起こっているのか判然としないまま引きずり回され、
急に明かりが射した感覚を味わえました。
ではでは。