AWC 新年度最初の試み   永山


        
#6596/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  11/04/01  20:10  ( 36)
新年度最初の試み   永山
★内容
 かれこれ二十年前の今日、推理小説研究家の英賀保五月が、大手出版社と共
同で会見を開き、ミステリ史上なかなかに重要な発表をしました。間須田惣吉
の未発表原稿が発見され、随時刊行する運びになったと。
 場には微妙な空気が流れたらしいです。何しろ、間須田惣吉なる推理作家を
知る記者が、四分の一もいなかったそうですから。
 つか、私も知らなかったんですけど。プロフィールを朧気な記憶を頼りに書
いてみますと、<間須田惣吉。昭和四十一年四月に長編『干涸らびる死』でデ
ビュー。出版社の力不足もあり、当初はさほど評判にならなかったが、大手の
発行する専門誌に犯人当て形式の短編「嘘つきさがし」が掲載されたのをきっ
かけに、本格派の旗手として注目される。その後は短編を継続的に発表、活躍
を期待されるも、病気のため若くして急逝。活動期間は一年足らずだった。今
日では幻の作家と呼ばれる機会すら減っている。>……こんな感じだったかと。
とりあえず、幻の本格推理小説が読めるという訳で、一部でそれなりに話題に
なりました。
 が、未発表の長編『優れたふぅぷ(フープ)』は結局、刊行されることなく
終わりました。くだんの原稿は英賀保氏の自宅に保管されていたのですが、そ
の年の六月に近所の家から出火、延焼により英賀保家もほぼ全焼。英賀保氏自
身は取材旅行中で無事でしたが、原稿は焼失してしまった。英賀保氏は「自分
が取材なんかに出ず、家にいればどんなことをしてでもあの原稿だけは持ち出
した」云々という後悔のコメントを残していた、はず。
 しかし、それにしてももったいないことをしたものです。防火金庫に入れて
おけとまではいかなくとも、せめてコピーを取っておけば。英賀保氏と編集者
数名、それに生前の間須田惣吉を知る作家一名が、その原稿に目を通しており、
彼らの記憶を合わせて小説の再構築が試みるという案が出されたものの、間須
田の遺族の反対もあって、話は完全になくなったみたいです。ほんと、惜しい
ことを。

 ……というほら話に長々と付き合ってくださった皆様。ごめんなさい。エイ
プリルフールということでお許しを。ちなみに、『干涸らびる死』:HIKA
RABIRUSIと『優れたふぅぷ』:SUGURETAHUUPUは、“二
作”合わせて、四月ばか:SHIGATSUBAKAと、エイプリルフール:
EIPURIRUHUURUからなるアナグラムになっています。
 この他にも二つ、仕込みをしていますので、興味ある方は探してみるのもい
いかも。

 ではでは。




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