#6124/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 10/05/27 20:52 ( 25)
本の感想>『B/W 完全犯罪研究会』 永山
★内容
・『B/W 完全犯罪研究会』(清涼院流水 太田出版)13/6331
天見仄香は、異なる殺人鬼から三年続けて狙われ、生き延びたことで、日本
一有名な被害者になってしまった。今はその経験を活かし、警視庁の犯罪被害
者支援室に勤務する彼女だが、新たに、未解決事件の再捜査を市民が審査する、
完了犯罪検討会の試験運用に携わることになった。その会で最初に取り上げら
れたのが、疑惑の少年M・Tこと真壁巧にまつわる事件だった。現在大学生の
真壁の周辺では、これまでに五つの事件で二百名以上もの人間が消えているが、
いずれも解決には至っておらず、真壁自身の立場も判然としていない。彼は加
害者なのか被害者なのか。日本一有名な被害者と疑惑の少年が交わるとき、そ
こには何が生まれるのか。
うーむ。
流水小説にまともな解決を期待してはいけないと分かっているものの、これ
は普通に無理筋という気がする。作中で示されたやり方では、これほどの多人
数を消失するのは無理だと断定せざるを得ません。被害者各人が消されるため
に、それぞれ単独行動を取っていたとしたら、あるいは可能かもしれないけれ
ど、それでも相当な偶然に助けられる必要があるでしょう。
設定自体は相変わらずユニークで、リーダビリティが高いものの、締めがぐ
だぐだなのも相変わらず。謎解きのあともミステリ的な快感が弱い。本作では、
ミステリらしい趣向が最後になって登場しますが、取って付けた感が窺えて、
残念。もっと大事に使えば、それなりの効果を発揮したと思われるだけに、な
おさらです。描写視点というか叙述のテクニック的にも、ちょっと問題ありで
はないかなと思う。
ではでは。