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★タイトル (AZA ) 10/05/16 21:34 ( 32)
本の感想>『グッドホープ邸の殺人』 永山
★内容
・『グッドホープ邸の殺人』(ブルース=アレグザンダー 著/近藤麻里子 訳
ハヤカワポケットミステリ)11/1451
十八世紀後半。印刷工の父を不当な刑罰により亡くしたジェレミー少年は、
生まれ育った土地から逃げ出し、流れ流れてロンドンに行き着く。初めて見る
大都市、右も左も分からぬジェレミーは、親切ごかしに近付いてきた小悪党に
手もなく陥れられ、盗人の罪を着せられる。法廷に引き出された彼を裁く治安
判事は、盲目のジョン・フィールディング。サー・ジョンと称される敏腕判事
は、先入観にとらわれることなく、明敏な推理と公平な判断で、ジェレミーを
窮地から救う。
その後、職を見付けるまでの間、サー・ジョンの庇護下に入ったジェレミー
は、折しも発生したグッドホープ邸での殺人事件について、治安判事の目とな
り手足となって、仕事を手伝うことになる。
実在したジョン・フィールディング治安判事の活躍を描く時代ミステリ。
えー、上記の紹介では省きましたが、本には密室殺人であることがうたわれ
ています。でも、こんなトリックで密室殺人を売りにしてはいけない。はっき
り言えば付け足しで、あってもなくても関係ない。密室に期待して読まないよ
うにご注意をば。
それ以外のミステリ部分も、あんまり大したことありません。この当時なら
ではの欺瞞が用いられているものの、ある意味、素直すぎて意外感があるかも。
手掛かりの提示も、読者の知り得ない点がいくつかあったし。
反面、十八世紀後半の英国の雰囲気を味わうには、なかなかいいんじゃない
でしょうか。私は詳しくないのでどのぐらい忠実に描写されているかは分かり
ませんが、当時のロンドンはえらく物騒だったんだなと感じます。
また、ジェレミー少年の成長物語としても読めましょう。本書は大人になっ
たジェレミーが、少年時代に関わった事件をメモを見ながら文章にしていく体
裁を取っており、特に社会・風俗について、小さな子供の頃には分からなかっ
たことが、今なら分かるという形で記されています。
そんな訳で、ミステリとして読むと期待外れですが、英国時代小説としてな
ら楽しめるかと。
ではでは。