AWC 本の感想>『三百年の謎匣』   永山


        
#3075/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  05/10/01  16:04  ( 25)
本の感想>『三百年の謎匣』   永山
★内容
・『三百年の謎匣』(芦辺拓 早川書房)16/5452
 とある老富豪が、遺言状作成を依頼した帰途、殺された。小降りの雪が止ん
だ直後の現場は、一種の密室状態であり、しかも被害者自身の足跡が残ってい
なかった。依頼を受けた弁護士にして探偵の森江春策の元には、その後、老富
豪から手書きの書物が届く。そこには、様々な時代の物語が、様々な言語で綴
られていた。東方の水の都、海賊、アフリカ探険、フランス革命と中国奇譚、
西部劇、飛行船ヒンデンブルク……六つの物語はいずれも謎を残したまま。ま
るでこの三百年間、森江春策に解かれるのを待っていたかのように。
 “本格推理と物語性の融合”を画したという、鮎川哲也賞作家の新たな試み。

 それぞれの物語の書き手の個性があまり感じられないものの、内容自体はバ
ラエティに富んでおり、楽しい。また、そこに仕掛けられた謎も、一般的な現
代推理小説では仕掛けづらいネタが多く、この方式を選んだ意味があると思え
た。
 謎そのものは、総じて見破り易かったが、目新しい謎を作り出そうという作
者の努力は、大いに買えます。手を替え品を替え、でもある種の統一性を持た
せようという辺りに、苦心の跡が忍ばれる。
 無論、時代を異にする数人が書き綴っていった書物という設定故、各話相互
に関連はなく、そういった面での仕掛けは端から期待してはいけない。現代の
森江春策とリンクさせる辺りも、少々こじつけっぽくなっている。現代の事件
一つにつき、過去の物語一つをヒントにして解決するという風に対応させれば、
強引な感じは薄まった気がする。が、それをやると長大になってしまうから、
今回はこの形で収めたのかな。

 ではでは。





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