AWC 本の感想>『ボーン・コレクター』   永山


        
#3043/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  05/09/07  21:30  ( 36)
本の感想>『ボーン・コレクター』   永山
★内容
・『ボーン・コレクター』(ジェフリー・ディーヴァー 著 / 池田真紀子 訳 
                       文芸春秋)18/6552
 ニューヨーク市警の科学捜査本部長リンカーン=ライムは、捜査中の事故に
より、四肢麻痺に陥る。首より下で動かせるのは左手薬指のみ。職を離れ、自
宅で寝たきりの生活を送る彼は、自殺をするために手伝ってくれる医者を見つ
け出していた。
 そんなとき、かつての同僚から、ある殺人事件に関するアドバイスを求めら
れる。骨に異常な執着を示す犯人――ボーン・コレクター――は鑑識の知識に
通じ、犯行現場に次の犯行に関するヒントを巧妙に織り込んでいく。ライムは、
同僚らが初手から罠にはまっていることに気付き、半ばやむを得ず、協力する。
そして、第一殺人現場の初動捜査に当たった女性巡査アメリア=サックスを手
足のように使って証拠を集め、ボーン・コレクターと対峙することになる。
 恋愛小説版『羊たちの沈黙』とも称された、犯罪ミステリの傑作。

 探偵役のライムが、最先端科学捜査と豊富な知識を活用し、犯人の残す手が
かりを読み解いていくのだけれど。この本が出た当時なら、圧倒的専門性や、
手足となって動くサックスに遺体の手を切断しろとか、匂いをかげと命じるく
だり等に驚嘆させられたに違いない。しかし、今やドラマ「CSI」などで科
学捜査の最先端に触れてきた我々読者には、インパクトがいまいち薄い。ライ
ムの折角の分析・推理も、専門用語の羅列で、ともすれば流れ作業めいて映る。
その意味ではもったいない。もっと早く読むべきでした。
 理解しがたい箇所もある。たとえば、カップルが行方不明となり、その片割
れが遺体で見つかったと聞いたライムが、女性の方は?と尋ね返す場面。何故、
遺体で見つかったのが男性と分かるのか。このシリーズを読むのは初めてなん
で、ライムが犯行に関与しているのかと思ってしまった。これは、原文では遺
体で見つかったのは男性と分かる記述だったが、訳すと曖昧な日本語になって
しまったという可能性なきにしもあらず、ですが。
 とまあ、不満な点を挙げてきましたが、本書を傑作と呼ぶのに何のためらい
もありません。それはこの物語が、最新・専門のネタに頼っただけの情報小説
ではなく、堂々としたミステリに仕上がっているから。さらに言えば、過剰な
ところはあったかもしれないが、決して無駄はない。計算の行き届いた作品。
 その面白さを語ろうとして、ポイントに少しでも触れると、ネタバレにつな
がってしまいそうなんで……“四の五の言いませんから、読んでください”本
ということにしておきます。

 ではでは。





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