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★タイトル (AZA ) 05/08/01 23:14 ( 30)
本の感想>『そして死の鐘が鳴る』 永山
★内容
・『そして死の鐘が鳴る』(キャサリン・エアード 作/高橋豊 訳 ハヤカワ
ミステリ文庫)16/6451
その事件は、ロンドン郊外の町には似合わない、不可思議な状況を呈してい
た。教会の鐘の塔で、男の遺体が発見される。男の上には、工事のために移さ
れていた巨大な石像が倒れ、砕け散っていた。その破片のおかげで、内開きの
扉は開閉がままならず、現場には誰も入ることもできなければ、出ることもか
なわない事態になっていたのだ。
その後の調べで、石像は故意に倒された疑いが強まる。つまりこれは不幸な
事故ではなく、悪意ある殺人、しかも密室殺人なのだ。スローン警部が勇躍、
捜査に乗り出すが、状況を確定するにはなかなか到らない。
有栖川有栖『密室大図鑑』において、「なるほど、すごいトリックだ」と評
された、豪快な荒技を用いた快作。
最初の内は面白く読んでいましたが、段々、単調に感じてきました。抑揚に
欠けるというか、報告書を読んでいる気分になってくる。物語の展開そのもの
は、起伏に乏しいというほどでもなく、それなりに変化を付けていますが、各
シーンの描き方が互いに似通っているせいか、どうにも淡々とした印象が拭え
ません。表現に洒落たところがあって、決して読みにくくはないのですが。こ
のミステリの見せどころはトリックにあり、ということなのかもしれません。
さて、そのトリック。
上にも書きましたように、『密室大図鑑』(新潮文庫)で取り上げられてい
たのを目にし、興味を持った作品。有栖川有栖は同書であることを記述してい
るのですが、そこから、こうではないか?と一つの推測を立てました。むしろ、
その推測が当たっているかどうかを確かめる意味で、本書を読み始めたという
感じです。
そしてめでたく、推測が外れたので、大変よかった(笑)。確かに凄い。よ
くもまあ、こんなこと考え付くもんです。ネタバレを恐れずに言い表すなら、
“地球が殺した”となりましょう。
ではでは。