#2782/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 05/03/08 21:13 ( 24)
本の感想>『騙し絵の檻』 永山
★内容
・『騙し絵の檻』(ジル・マゴーン 著/中村有希 訳 創元推理文庫)
15/5550
かつて付き合い、今は人妻となったアリソンと、見も知りもせぬ私立探偵の
男を相次いで殺害したとして終身刑を言い渡されたホルト。十六年後、仮釈放
された彼は復讐に冷たく燃えていた。真犯人を捜し出し、殺してやる。独自で
動き始めたホルトの前に、元新聞記者というジャンが現れる。彼女の協力を得
て証言と事実を拾い集めたホルトは、推理を組み立てては崩すを繰り返した末、
遂に一つの結論にたどり着く。終盤最後の十ページにおいて、アクロバティッ
クな論理が事件の様相を逆転し、真相を明るみに引きずり出す。
まっさらの状態で読んでほしい、とだけ書くのがベストかもしれません。が、
それでは感想にならないので。でもほんとは、予備知識なしに読むべし。
出だし、構成が分かりづらくて少々戸惑いました。現代と十六年前とが交互
に描かれるのだけれど、そのつなぎ目がわずかな空白行だけで表され、それが
ちょうどページの終わりに来た場合、空白があるのかないのか判別しにくい。
そういった点は抜きにすれば、なかなか面白く、読んでいる間はのめり込め
た作品。大げさな道具立てはないものの、ロジック一本槍で勝負しようとする
姿勢が好みです。描写もか簡素で、しつこくないのがよかった。
それと、やはりラストが見物。逆転の構図に、あっと唸らされる。ミステリ
の女王と謳われたアガサ=クリスティ張りの巧さ。堪能できます。
……ただし、まっさらの状態で読んだらの話ですが。
かような訳で、本作の採点は微妙なものとなっております。
ではでは。