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★タイトル (AZA ) 05/01/24 20:52 ( 31)
本の感想>『天井の足跡』 永山
★内容
・『天井の足跡』(クレイトン・ロースン著 北見尚子 訳 国書刊行会)
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奇術師探偵マーリニとその相棒ハートは、怪しげな霊媒師の正体を探るべく、
ニューヨーク沖の島に渡った。島に建つ屋敷で、女主人が霊媒師の交霊会を開
くことになっており、その席に身分を隠して乗り込む計画だ。ところが到着し
た途端、無人のはずの屋内で女の死体を発見。現場の天井には、何者かの足跡
が残されていた。しかも被害者は広場恐怖症のため、自室から現場まで行けた
はずがない。その後も放火が起こるわ、毒物が三十種も見つかるわ、海底に眠
る沈没船の宝探しは絡むわで、事件は混迷の度合いを増していく。
複雑な事件で謎もまずまず魅力的なのだけれど、構成が下手過ぎる。もう少
し整理して、手際よく綴ってくれないと、読み進めるのが辛い。加えて、会話
の途中で話題を放ったらかしにして、次の話題に移るパターンがやたらに多く、
読者はお預けを食らい続ける格好になり、これがまたフラストレーションに。
元々複雑な話を、わざと分かりにくく書いたのではないかとすら感じる。
また、登場人物の饒舌さが読みにくさに拍車を掛けてました。饒舌な人物が
一人か二人いるだけなら、キャラクターの特徴になるし、アクセントにもなる
でしょう。けれど、出て来る人物のほとんどが饒舌で、何か言う度に余計な比
喩を付け加えていては、話の展開が冗長になる。
肝心の謎も、設定の面白さに比べると、解決は腰砕けの感が強かった。そん
な推理あるかよ!って。変な言い方になるけれども、解決編がなければよかっ
たのに……と思ってしまった。
あちこちに細かく手を入れれば傑作になりそうな気もする、惜しい作品。
作者のロースンは、マジシャンとしても有名。作中の探偵と同じグレイト・
マーリニの名で活躍したそうな。
そういった背景から、マジック場面を描く参考になるかなと期待してたので
すが、この思惑も外れました。本作では、マジックはほんの添え物程度にしか
出て来ず。
ではでは。