AWC かわらない想い 11   寺嶋公香


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★タイトル (AZA     )  99/ 7/31  22:35  (200)
かわらない想い 11   寺嶋公香
★内容
 それには同感と、公子もうなずく。しかし、悠香は強く否定。
「冗談! 喧嘩友達みたいなもんだわ、ったく」
「頼井君、同級生はもちろん、一年生にも人気あるよ。知らない?」
「知ってますよ。知ってるから嫌なの、あのすけべが。順番にみんなとデート
してるのよ、信じられんわ」
「どうして知っているの?」
 奇妙に感じて、公子は言葉を挟んでみた。
「何が?」
「頼井君がみんなとデートしてること」
「嫌でも目に入るんだよね。土曜とか日曜に、あいつが似合わないおしゃれし
て、いそいそと出かけて行くとこが。あーあ、あんな奴の隣なんて」
 悠香は顔をしかめ、舌を出した。
 そのとき、後ろから声がかかった−−当の頼井から。
「誰の話をしているんだ、うん?」
「……。聞いてなかったなら言いたくないし、聞こえていたのなら言う必要は
ない」
 悠香は悪びれず、はっきりと言った。
「ふん。ま、いいさ。それにしても、こんな場所で相談とは、まだまだ女のこ
とはよく分からないな」
 今度のプラネタリウム行きの話を決めてしまう約束をしてあったのだ。わざ
わざ校舎の外で話をしなくても、という頭が男子にはあるのかもしれない。
「まず伝言」
 頼井と共に来た秋山が、いささか事務的に始める。
「石塚の奴、都合が悪くなったんだと。行けないって」
「何かあったのかしら」
「あいつ、新聞部だろ? もう少し先の予定だった他校との交流が、早まった
んだってさ」
「そうなの。残念」
 声を落とす公子。それからすぐに疑問が浮かんだ。
「それじゃあ、今度は五人になるの?」
「……誰か連れて来た方がいい?」
 少しの間を取って、秋山が言った。無論、公子一人だけじゃなく、女子全員
に向けられた言葉である。
「自分としては」
 頼井が言った。多少、にやけた表情。
「二対三の方がうれしい」
「いつものようにはいかないわよ」
 悠香は釘を差すのを忘れない。
「それで、どっちなの?」
 秋山が、あきれた風な口振りになった。
「五人のままでいいっ」
 要は胸の高さに持ち上げた両拳を握りしめ、力説した。
(カナちゃんはそうよね。秋山君がいればいいもの。私も……)
 公子は、知らず描いていた思考を、はっとしてやめた。
「公子ちゃんは?」
「あ、私もこのままがいいなぁって。あはは」
 怪訝そうにする秋山。
「何で笑うの?」
「え、あ、あのさ、石塚君が戻って来たとき、はみ出るようなことになったら
悪いでしょ。だから」
 我ながらうまい理由と、内心、自画自賛する公子。
「なるほど」
 秋山と頼井も納得したか、どこかコメディめいた態度で、うんうんとうなず
き合っている。
「次、集合場所と時間は?」
「いつも通り、H**駅の正面改札に……十時半?」
 悠香がみんなの意向を確かめるように言った。
「ちょっと待って。言うの忘れてた……」
 秋山は、ポケットから何やらメモを取り出した。
「何、それ?」
「プラネタリウムの上演開始時刻。夏休みの最中に、科学博物館に電話して聞
いたんだ」
「さあすが」
 手を叩いて喜ぶのは要。
「尊敬しちゃう」
「俺だって、普段のデートなら、これぐらいは調べるよ」
 頼井の主張。
「すると何かね。私ら相手では、本気になって調べてなんかいられないと、こ
ういうわけ?」
 揚げ足を取るのがうまいというか何というか、悠香はまた、頼井にいちゃも
んをつける。
「うーん、公子ちゃんとカナちゃんだけなら、そうでもないんだけど、ユカが
いるとねー、どうも気が乗らなくて」
「あー、そうですか。どうせ」
「漫才はそこまでにして」
 秋山がメモを見ながら、話を元に戻そうとする。
「一時間強の上演が日に四回ある。各開始時間は、〇九:二〇、一一:四〇、
一三:四〇、一五:二〇。ちなみに館そのものは九時に開く」
「駅から博物館まで何分かかるのかしら?」
「乗り継ぎの待ち合わせなんかを考えると、五十分ってとこ。もちろん、着い
てから入場券を買うわけだから、もう少し余裕を見て、一時間ぐらいが無難か
な」
「三回目の上演がいいんじゃない?」
 悠香の意見。
「一回目は早すぎるし、四回目は遅すぎ。二回目はお昼に重なっちゃうから」
「それもそうよね」
 同意する公子。みんなも納得した様子。
「じゃあ、結局、駅への集合時間は」
「最初に言った通りの、十時半でちょうどじゃないの」
「えっと」
 少し上目づかいに、計算する様子の秋山。
「ま、そうかな。仮に早く着いても、他に見るところはいくらでもあるから」
 決まった。
「一応、聞いておくけど、プラネタリウム、初めての人は?」
 秋山の質問に、頼井を除く三人が手を挙げた。
「あんた、いったことあるの?」
「甘く見ないでもらいたいね、悠香クン。プラネタリウムは、デートコースの
一つに数えられ−−あてっ」
 話の途中で、悠香からげんこつが飛んだ。
「初めてだと何かあるの?」
 要が不安そうに聞いた。
「いや、たいしたことじゃないけど」
 帰る素振りを見せる秋山。
「行っちゃうの? 気になるわ、秋山君」
 要と顔を見合わせてから、公子が聞いた。秋山はくるっと振り返って、
「前の日は早寝すること。いい?」
 と、いたずらっぽく笑った。
「分かった。プラネタリウムって暗くしてやるものだから」
「公子ちゃん、正解。くれぐれも眠ってしまわないように! ははは」
 秋山のいかにも楽しそうな笑顔とは正反対に、要の表情は不安げに曇ってい
った。暗いと眠くなる質らしい。

 曇り空の下、科学博物館は威厳を持ってそびえていた。曇っているからこそ、
そう感じるだけかもしれないが。
「何か、大げさな建物ねえ」
 ほとんど気にしていない口調の悠香。
「一年くらい前に改装して、外見も現代風になったんだけど」
 わけ知りの秋山は、注釈を付けた。
「時間は?」
「十一時二十分」
 待ち合わせた駅から五十分かかっている。秋山の言った通りである。
「とにかく、中に入ろ」
 石の階段を上っていく。日曜ということもあってか、なかなかの人出である。
 入場料は、中学生料金で五百円。高いのか安いのかよく分からない。入場券
には、プラネタリウムだけでなく、現在やっている展示−−天気予報の仕組み
とか化石などについて謳ってある。
「外見はお堅いイメージだったけど、案外、面白そうね」
「外見と中身が一致しているおまえとは大違い」
 悠香に対し、余計な一言を口にする頼井であった。
「二人はほっといて、お昼まで、色々回ろう」
 公子と要の間で、秋山がささやいた。
「大丈夫かしら?」
「平気だって。頼井がここのことはよく知っているし、十二時半に食堂前で待
ち合わせだから、はぐれやしないよ」
 公子の心配を一蹴する秋山。
 さて行こうとしたとき、公子はふと思い付いた。
(カナちゃん、秋山君と二人きりの方がいいのかな?)
 公子は秋山に断って、要と二人でひそひそ話。
「カナちゃん、二人きりになる方がいい?」
「そ、それが……」
 顔を赤らめる要。下を向くから、頭にちょこんと載せた緑のベレー帽が、落
っこちそう。
「学校とかならともかく……こういう場所では、まだちょっと」
「恥ずかしい?」
「うん。もしも秋山君と二人になったら、私、一言も喋れなくなりそう。キミ
ちゃん、いっしょに回ろ。ね?」
「そりゃあ、私も一人になるのは寂しいし。いいけど」
 そう答えてから、急に自分が嫌になった。
(私のばかっ。何て恩着せがましいの! 私だって、秋山君といっしょにいた
いだけなのに……。正直に言えないのが、こんなにも辛いなんて……)
「ありがとう。恩に着るっ」
 要は楽しげな表情になって、秋山の方を振り向いた。
「話は終わった?」
「ええ」
 三人で、天気予報の仕組みとやらに足を向ける。
 お客が多いせいもあって、ざっと回ってみたところ、ラジオゾンデという観
測のための気球の紹介、雲のでき方や種類、気象予報士になるための試験をク
イズにしたコンピュータ等、分かりやすい内容になっていた。
 気象衛星の「ひまわり」についても、模型と共に紹介がされていた。秋山が
最も興味を示したのがこれである。
「これ、星の観測なんかはしないのかしら?」
 要が秋山に聞いた。
「そうみたいだね。星のデータを収集するのは、ちゃんと別に天体観測用の衛
星があることだし」
「わざわざ宇宙で観測するんだ?」
「うん、大気−−空気の関係で。空気がない方が、星を鮮明にとらえられるん
だよ」
「ふうん。こんな透明な物でも、邪魔になるのか」
 宙を手でかき回す要。
 その仕種が何ともかわいらしくて、公子も秋山も笑ってしまった。
「あー、ばかにして」
「そ、そんなことないって」
 ふくれた要を、秋山がなだめにかかる。
「ぜぇったい、そうよ。ふん、秋山君もキミちゃんも、ちょっと頭がいいから
って」
「私は違うったら。秋山君はそうだけど」
 公子は冗談めかして、要の味方に回った。
「こんなことですねられたって、僕はどうすりゃいいのさ、まったく」
 小さく、お手上げのポーズをする秋山だった。
 それから、化石の展示を回る時間はないと判断、食堂に向かった。
「こういうとこって、あまりおいしくないんだよね」
 文句が自分に来ないようにするためか、秋山は予防線を張った。まあ、真理
ではある。
「ねえ、それよりも、ユカ達がまだよ」
「そう言えば」
 左袖をまくり、腕時計を見やる秋山。
「十二時三十一分ってところだけど。どうしたのかな……。あっ、来た来た」
 秋山が目線で示した方向には、何やら言い合う悠香と頼井の姿があった。
 そのあと、五人そろって昼食をすませ、いよいよプラネタリウムのあるホー
ルへ向かう。
「席、前の方がいいの?」
 先に行っていた要が秋山に振り返る。
「プラネタリウムそのものが邪魔になるから、前の席はあまりよくない。やっ
ぱり、中程が一番かな。映画館といっしょだよ」
 そのアドバイスに従った結果、公子達はちょうど中程の座席に横一列に収ま
った。映画館の座席に似ているが、座ると背もたれがかなり後ろに傾く。上を
見やすいようにするためである。
「影絵が描いてあるんだ」

――つづく




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