#5930/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (GSC ) 10/01/25 10:23 ( 24)
連載 読み飛ばしの質問
★内容
#797 どるちゃんの動物遍歴(10/10) $フィン
作品を読みながら、私の子供の頃を思い出した。
わが家は小さな農家で、父が兎を飼っていた。
兎後やは、母屋の南側の窓下に、壁を隔てて4部屋並んでいた。すなわち、
窓を開けるとすぐ下に、四軒長屋の兎後やがあり、木の蓋を持ち上げて、
餌(川土手で刈ってきた草)を与えることもできるし、幼い私は、ときどき
そこから小屋の中に下りて、兎を撫でたり抱いたりして遊んだものだ。小屋の
広さはほぼ三尺の立方体で、後ろは母屋の土壁、左右は板壁、前(南側)は
葦簾張り(よしずばり)になっているから、明るくて日当たりも良い。床は
セメント張りだが、一部だけ土のままにして置くと、兎が勝手に穴を掘って、
そこから中に隠れることができる。猫でも来たら、兎はたぶんその穴の中に
逃げ込むのだろうし、出産は当然その穴の中で行われ、生まれたての子供を
人が見てはいけないと堅く言われていた。
ところが、四軒のうち一つの小屋だけ、何故か地下に穴を掘らせず、土壁を
隔てた母屋の中に大きな木の箱を置き、土壁に穴を開けて、兎が自由に小屋と
箱を出入りできるようにしてあった。確かその小屋は、窓を開けても蓋に
手が届かず、家の中から餌をやるのに、箱の上の蓋を開けて草を入れていたと
思う。それにしても、兎は箱に隠れることさえできれば、地面に穴を掘らなく
てよいものなのかどうか?
さて、その小屋の兎が箱の中で子供を生んだ。そして程なく、兄たちがその
箱を動かした際に、こいか偶然か中を覗いたら、数匹の可愛い子兎が目に
入ったと言う。それから程なく、その子兎は噛み殺されて死んでしまった。
私は、死んだ子兎の一羽を半日抱いて遊んでいたものだ。