連載 #7156の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
『アモールとプシケー』(黄金のろば)より 物語のあらまし(その1) 昔あるところに三人の美しいお姫さまがいました。なかでも末娘のプシケー というお姫さまはとりわけ美しく、ヴェヌス(アプロディーテ)御自身のよう に人々はうやうやしく接するのでありました。そしてヴェヌスの神殿よりもプ シケーを見るために人々は集まるので、ヴェヌスの神殿は荒れ果てようとして いました。 面白くないのはヴェヌスです。恋愛を司る力のある息子クピードを呼びつけ てプシケーは世界で一番卑しい人間とこの上もなく激しい恋に陥るように命令 したのです。 さてこちらは万人からは褒め称えられてもプシケーには良人となる方がおり ません。父王は困り果て神託を受けると、プシケーに死に行く嫁入りの装いを させ高い山の嶺に置きなさい。婿として人間の胤から出た者ではなく、荒く猛 々しい蝮のように悪い男を待ちうけることになるであろうという言葉が返って きました。 プシケーは死の婚礼をして山の嶺に行きました。すると目の前に立派な宮殿 があるではありませんか。プシケーはよく見ようと宮殿の中に近づき、ついに は中に入っていってしまいました。美しいその有様に心を奪われ、次々と覗き 見をしていくうちに大きな倉のあるところまで行きました。倉の中には沢山の 宝物がぎっしり詰まっているにもかかわらず、何の鎖も錠前もはては番人さえ もついていなかったのです。 プシケーが嬉しさで夢中になってみているとどこからか声が聞こえてきます。 「沢山の財宝を見てびっくりなさいます。これはぜんぶあなたのものです。さ あ、寝間にいらしてお疲れを癒した後、お風呂におはいりくださいまし。お体 がすっかり元気になりましたら、御馳走をさし上げることになっておりますか ら」誰一人姿は見えず、ただ言葉だけが聞えて、つまり声ばかりがお給仕をし ているのでございます。 プシケーは床に入り、夜も更けた頃耳元で優しい声が聞えて、闇で見えない 良人が彼女を新妻として迎えいたわると、夜も明けないうちに急いで出かけて しまいました。するとすぐに声たちが寝間へ来て、花嫁のお世話をし、少女の 気のさまざまに乱れたこころを慰めるのでした。 プシケーの両親が悲嘆するのを見て、二人の姉姫の耳にもプシケーのことが 伝わりました。その頃プシケーの良人は「運命の女神は意地悪くお前の命も危 ないほどの難儀をさせようとしているだからもっと十分に気をつけて用心して いなくてはいけない。お姉さんたちがやってきても、返事をしたり、顔を出し てはいけない」と言うのでした。 プシケーがせがんだり、はては死んでしまうといって脅すものだから良人は 根負けして新嫁の頼みを聞き入れることにしました。「話しをしてもいい。宝 石もやりたいだけやってもいい、ただし姉たちのよこしまな勧めに唆されて、 自分の顔だけは見ようとしてはいけない。つつしみのない好奇心から、幸せの 絶頂から奈落の底に落ちてしまうばかりか、良人に遭うこともかなわなくなる」 と脅かしつつ、いさめるのでした。 姉たちがやってきました。プシケーは西風に言って姉たちを自分の宮殿へと 連れて来てもらいました。宮殿の宝石をもらったり、御馳走を食べて、再会を 喜んでいた姉たちはプシケーの天国そのままの暮らしに妬み心を強めていくの でした。終いにはプシケーの良人をあれこれと聞きます。プシケーはまだ若く て、綿毛のようなひげが口元にうっすら生えたばかりだと答え、姉たちを西風 に呼ぶと送り返したのでした。 二人の姉は自分たちの暮らしとプシケーの暮らしぶりを比較して不満を覚え、 悲嘆にくれる両親にも誰にもプシケーの暮らしぶりを伝えることなく、立派な 贈り物も懐に隠して、プシケーが不孝だと皆には言うのでした。 一方プシケーの良人は「運命の女神は遠くから見ているだけだけど、姉たち には気をつけるのだよ。断じて良人については何一つ、耳に入れても答えても いけない。今ではプシケーのお腹の中には子供がいるのだからね。その子は、 お前がこの秘密を黙って守りおおせば、天界のものになろうし、もし破ったら 人間にされるのだ」と言いました。この知らせを受けてプシケーは知らない間 に身重になったのを不思議がりつつも喜びました。 二人の姉は前のように西風に乗ってプシケーの前にやってきます。そしてプ シケーは「良人は沢山な資本の商売をしていて、もう中年輩のちらほらとたま に白髪も混じってみえるほど」などと言い、ほんの一寸でそんな話は打ち切り にして、またどっさりとと立派な贈物をもたせ、風にのせて二人を送り返しま した。 二人の姉は前には柔らかい髯が生えかけたばかりの若者だと言ったくせに今 度は中年輩で白髪が白く目立つなんて、そんなに一寸の間に様子が変わること がないと話しあいました。そしてプシケーが神様の子を身ごもっているなんて ―母親だって呼ばれるようになったら、首をくくってやると言いあいました。 二人の姉は、今度は朝早くからプシケーの元に行き、プシケーの良人は幾重 にもとぐろをまいた大蛇だと言い、プシケーのお腹の子が十分に育ってきたら 一層おいしい果実のはいったところを一口に食べてしまうだろうと脅し、彼女 によく切れる剃刀と油をいっぱいいれた燭台を寝台のそばに置いておくように うながしました。二人の姉は罪深い所業の現場に居合せるのが怖くて仕方なく なったので、いきなり妹を置き去りにして逃げ足早くすぐさま帰っていくので した。 一人取り残されたプシケーは、ただ涙にくれて迷い、心はこうと思いきめし っかり固めていても、さて実際仕事に手を下すとなると、また考えがぐらつい て、身に降りかかった災難と姉たちが言う事柄をさまざまに繰り返しては思い 惑うのでした。その間に夕暮はいつしか夜となり、良人もやってきて、ひとし きりヴェヌスの前哨戦がとりかわされるほどなく、深い眠りに落ちてまいりま した。プシケーは今宵こそ姿を見せぬ良人の秘密を明らかにしようと決意し、 ついに燭台をとり出し、剃刀を手に握りしめました。ところがそうして寝間に 照らし出してみると何ということでしょう。いきなり眼に映ったものはあらゆ る神々のうちでも一番優しい、一番に可愛らしい神、クピードが、ぐっすりと 寝り込んでいる姿ではありませんか。プシケーは飽きることを知らない熱心さ で、好奇心にかられるまま眺めて、心の急ぐままやたらに接吻を繰り返しては、 ただ眠りの頃あいだけに気を使うのでした。 そうこうしているうちに、ついうっかりして彼女は、燭台が燃えている芯の 先から熱い油を一滴、神様の肩へ落としたのです。こういうわけで体を焼かれ て、秘密がこのように破られて目茶滅茶になったのを覚ると、クピードはいき なり不仕合わせな妻の接吻や抱擁から脱け出て、「私はお母様のヴァヌスのい いつけもてんで憶えずに、お前をみじめなこの上もなく下らない人間の恋に縛 りつけて、とても卑しい結婚をさせてしまうはずだったのを、われとわが身を 自分の矢で傷つけてしまって、お前のことが好きになって自分の妻にしてしま ったのだ。そのあげくがどうかというとお前には野獣と見なされて、刃でこの 頭を斬り落とされるところだったのだ」そう言うと空高く飛び去ったのでした。 プシケーは眼の届くかぎり良人の飛ぶさまを追い眺めて、ただ泣き悲しみな がら心を痛めましたが、良人が見えなくなると、近くの流れの岸から真逆さま に身を投げました。けれども川は巻添えを恐れて少女を渦巻きにのせ、そっと 怪我をしないように、草花の咲き乱れた河岸へ置くのでした。 ちょうどそのとき野山の神様パーンとエコーがいて、心を傷め気も絶えだえ のプシケーを傍に呼び寄せ、いろんなわけから悲しい話もとうに知っていまし たので、「身を投げたり自分から好んで死ぬような真似は、なさらぬがよい。 歎いたり悲しんだりするのを止めて、それよりもクピード様に、この方は神様 の中でも一番偉い神ゆえ、よくお祈りして願いなさい。でお気に入るよう誠を 尽くして御神意に叶うがよかろう。あの方もまだ年若で気の優しい遊び好きな 神様だから」と優しく言いました。 こう諭してくれた牧の神様に手を合わせるばかりでプシケーは歩み去ってい くのでした。 そうこうしている間にクピードの母親のヴェヌスは、息子は火傷が大変に痛 んで困っていながらも、プシケーに死ぬほど焦がれていることを知るのでした。 ヴェヌスはすっかり腹をたて、プシケーをケレースとユーノの二人の女神に探 し出してくるように命令するのでした。 一方プシケーはあちらこちらと駆け巡っては、夜も昼も良人を探し尋ねて心 の憩むひまもなく、ただひたすらにその憤りを、よき妻としての優しい言葉を かけてもらうのはもうかなわぬにして、少しでも和らげてもらえるように願い 求めるのでした。そのうち高い山に何かお宮があるのを見つけますと良人がい るかも知れないとせわしく足を運んでいきました。高い尾根を超え登り、とう とう神座のすぐ傍まで辿りつくと、刈入れ仕事の道具一式が、みんなあちこち に散らばっています。プシケーはいちいち丁寧にわけて、ちゃんとそれぞれ片 づけて蔵いました。心をこめてせっせとお手伝いをしているところにケレース が来て、少女を見つけると大きな声で呼びかけ、ヴァヌスがもうかんかんにな って世界中をお前の行方をしきりに探しまわっていると言い、プシケーを追い 出しました。プシケーは自分のおもわくとは反対に追い出しをくって、二重の 悲しみに打ちひしがれ、またもとの道に帰っていくと、木立の間から工匠の腕 をつくしたお社があるのを見つけました。そこでもプシケーは同様にしてユー ノからも追い出されてしまいました。そこで彼女はもうこれ以上羽根の生えた 良人を捜し求める力も出ないほど気落ちし、あらゆる望みも失せ果てて、ただ ひとり歎き悲しむのでした。
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