連載 #4520の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
今回は地獄の第七層と第八層です。 地獄の第七層は、三つにわけられ、 その第一環には、隣人に暴力を奮った者。隣人に非道な死や苦しい深手を負わし、 その所有物をこわしたり、焼いたり奪い取った零落したもの。人を殺めた者、悪意で 人を傷つけたもの、破壊の罪を犯した者、物盗のたぐいがいます。 辺り一面が煮られた熱湯になっていて、その中には眉毛のあたりまで漬けられ、苦 痛からするどい金切声をあげた人が沢山おります。 第二環は、自殺者。自分の命を絶った者、賭博で自分の資産をすったもの(消費者 とどう違うのかわたしにはわからない)。生前自己破壊してしまった人がおります。 自殺者は人間とならず、死んだ魂が、一粒の種と変わりはてています。運命の命ず るまま、どこかの場所に落ちると、種は元気なライ麦のように芽を吹きだします。そ れが大きくなり、野生の大樹になったころ、ハルピュイアちゃん(顔が女で身体が鳥 の汚い生物)がその葉をついばんで痛みを与えてくれます。大樹になったといっても 元は人間、葉であろうと木枝であろうと、人間のお肉をえぐることにはわかりなく、 傷ついたところからはじゅうじゅうと熱気を漏らすような、どす黒い血と言葉が噴き 出してきます。やはり痛いものは痛いのです。苛めるのは、ハルピュイアちゃんだけ でなく、後で説明する消費者たちが枝を折っても大樹は同じ痛みを感じます。。 賭博で自分の遺産をすったものは、野猪と勢子に、掻き傷だらけの裸のまま追っか けられます。そのときには先の自殺者となった樹の小枝(これはなんと茨だった。だ から引きちぎる方も痛い)をくぐりぬけていかなければなりません。通るたびに裸に 茨がつきささり痛い、さらに血に飢えた黒い牝犬に追っかけられて、捕まると噛みつ かれ、きれぎれに引き裂いてから、身体をくわえられます。 第三環は、神への冒涜者、男色者、高利貸し。心に神を否定し、誹り、自然にさから って神の善意をあなどれば、神が暴力をふるいます。 ここは荒れさびれた砂漠、火のかたまりが絶え間なく上から降ってきます。火は地 に落ちてもなお燃えつづけ、そのため砂原は火打石の下の火口のように焼けただれて います。当然着物を着ていても火がついて焼けてなくなってしまうので、裸でいるし かなく、神への冒涜者は地面に仰向けになって伏せ、男色者は身をちぢめてうずくま り、高利貸しはとめどなく歩きまわらなければなりません。 第八層は、十の濠に分けられ、十の嚢があります。 第一嚢 婦女誘惑者、女衒者。角をはやした鬼が大きな鞭をもって、容赦なく裸の ままの魂を引っぱり叩きます。かかとをあげて逃げ出した魂はあわれなもので、もは や二度三度と鞭を待ち受けようとする者は一人としていません。でも鬼は面白いから 叩きます。 第二嚢 あゆ追従者。人間の厠から出た糞尿の中に浸かります。顔中、身体中糞だ らけになってしまいます。もっと糞を浴びようと糞まみれの爪で、身体中引っ掻いて 肉の中まで糞だらけになる人もおります。 第三嚢 聖物売買者。聖物・聖職を金銀と引き換えに売り飛ばした人たちです。鉄 さび色の穴の中に人間が逆さにつるされていて、上半身は穴の中。だけど、足のふく らはぎから下は外に出て、そこから火がついて燃やします。その痛みは足の関節ばた つかせ、その激しさは束ね枝や太綱をももぎ切るほどの、物凄いものなのです。 第四嚢 妖術者、占い師。神をも恐れず未来を占った者たち。顎と胴のつけ根のと ころで、どれもこれも頭が逆になっているの! 顔が背中へ、あべこべあべこべ! 前の方を見れなくて、うしろ向きに歩いてる! 目から溢れた涙が、尻の割れ目を濡 らすほどの、身体がねじれゆがんだほどの、あべこべあべこべ人間よ! 第五嚢 汚職者。収賄したり、汚職したものたち、今の政治家はほとんどここに入 ります。ぐらぐら煮えたぎった濃い瀝青(チャン)、ふつふつ湧き上がる泡のほかに、 何も目にとまらない。全体が圧しあって、それが脹れたりつぶれたりしています。 その中へ、鬼が投げ込み、そんな中に人間が押し込められているのです。もし瀝青 から顔を抜け出ようとすれば、鬼たちが飛んできて、面を罵りながら爪で引っ掻きま す。引っ掻かれるだけならまだましな方です。運の悪い人は顔を出しただけで、鬼に つり上げられ、背中に鉤を打ち込まれ、皮をむかれたりします。 第六嚢 偽善者。色あざやかな金の衣装をつけています。他の場所のように裸でい て楽だと思ったら大間違いです。金ぴかの衣装の裏には、世にも重い鉛がついている のでダイエットに最適です。運動のハードさのため、ひどくのろい足どりで歩くしか なく、顔は疲労と落胆の色がありありとあるのです。 第7嚢 盗賊。地中、水中に住む蛇、空中へ飛び出す蛇、尾で畝をうがつ蛇、一直 線に滑走する蛇、双頭の蛇など、いろいろな蛇が盗賊だったものを苛めます。人は身 をかくすところも、毒消しの血宝石も見つからず、脅えきって裸のままでいるしかあ りません。 ある男の両手をしばりあげた蛇が、腰をしめあげた尾と頭をからだの前でからみ合 わせています。 別の場所では、他の男に、蛇が首のつけ根に歯をたてるとあっという間に、身体中 が火だるまになって燃え上がり、灰になって崩れ落ちたかと思うと、その灰が集まり、 再生してしまうのです。 またある男には六本の足のある蛇が全身にからみつくと、中脚で男の腹をしめあげ、 前脚で二本の腕をつかんで、左右の頬にかぶりつきます。後脚を両腿へのばし、股の 間に尾を差し込んで男の尻から背中にそって、上の方へのばしていきます。こうなっ ては蔦が樹にからみつくどころではありません。二つのもの、男と蛇は、蝋が混じり あったように、ぴったりとくっついて色もまじりあい、黒とも白ともつかぬこげ茶色 になってしまうのです。その姿は、二つの頭は一つになり、蛇の二本の前脚と人間の 両腕からは二つの腕ができて、足と腰、腹、胸などは見たことのないような身体にな ってしまうのです。 さらに、夏のさかりの強い日ざしの下ではこんなことも起こっています。小さい蛇 が、ある男のへそを噛つき、男の前に横たわります。噛みつかれた男は、何も言わず、 ただあくびをするだけです。小さな蛇と男は互いに見つめあい、男の噛まれたへそか らは煙を噴きだし、蛇の噛んだ口からも煙を噴きだし、それらは混じり合っていきま す。男と蛇の煙が混じりあう中で、蛇の尾が二つに裂けたかと思えば、男の二本の足 は一本になり、またたくうちに足の継ぎ目がなくなっていきます。蛇の皮が柔らかく なると男の肌は反対に硬くなります。男の二本の腕が脇の下に入るかと思えば、蛇の 二本の足は延びていき、男の足だったものは縮んでいきます。蛇の二本の後脚がよじ れ、ちんぽになり、蛇のある部分からは体毛が生えてきます。男の足は蛇の脚になっ ていき、人間のある部分からは体毛がなくなってしまいます。蛇だったものはのっぺ りした頬からにゅっと耳が飛びだし、鼻をつくり、人間らしい唇を作り、二つに裂け ていた舌はたった一つの舌になります。反対に人間だったものは、かたつむりが角を 引っ込めるように、耳が頭部に隠れて、一枚の舌が二つに裂けていきます。お互いの 変身が終わる人間だったもの、蛇だったものを取り囲んでいた煙がなくなっていきま した。こうしてお互い人間だったものが蛇に、蛇だったものが人間に変わっていった のでした。 こうして人は永遠に蛇に苛められていくのです。 次回に続く 大舞 仁
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