連載 #4486の修正
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プロローグ 惑星ウィルヴィリアでは人類が我が世の春を謳歌していた。 人類は惑星本星の開発だけでは飽き足らず、宇宙にまで開発しようとしてい た。 そしておよそ100年前にその開発の鎚が叩かれる。数年後には宇宙ステー ションが完成するが、ウィルヴィリア政府は国家経費軽減のため民間に開発を 委譲してしまった。このことは後々になって響く結果となるが、当時財務省関 係者は手放しで喜んだものだ。 「無駄なものに経費を使わなくても済む」 これが財務省、いや政府当局の一致した見方であった。 さて民間委譲後の宇宙開発は爆発的な伸びを見せた。衛星軌道上にいくつも の大企業用のコロニーが建設され、そこに本星では手狭になりつつあった生産 ラインを次々に移管していった。生産ラインの移管が行われた理由は幾つかあ げられる。中でも重大なのは「税金」の問題である。所得税・法人税等の企業 や個人にかけられる税金は通常通り払わなければならないのだが、建物や土地、 すなわち不動産に関わる税金を払う必要がなくなってしまうのだ。 「コロニーは地面に建っているのではなく、地面の遥か上に浮いているのだか らコロニーの税金は払う必要がない」 これが民間企業の一致した考えであった。これに政府は猛反発した。当たり 前である。大事な大事な税金収入が減ってしまうのだから。最終的に法廷でも 争われた。その結果は大方の予想通り、国の敗訴。 「国の憲法は範囲を自国に定めたもの、すなわち惑星ついてに定めたものであ って、宇宙、この場合コロニー、にまでその効力は及ばない」 最高裁判所で下った裁定は以上のものであった。 それでも政府は何とかしようとあの手この手で締め付けようとするが、議会 で法案はすべて廃案に追い込まれた。国民はそんな事はお構いなしに宇宙へと 飛び出していく。おかげで税金収入はどんどん目減りする。コロニー問題は急 を要する課題になっていった。しかし、うまい手だてはそんなに簡単には見つ かるはずがなかった。 ある日、ついに「手だて」を発見した。政府は少なくなってしまった予算か ら政府独自のコロニー建設を決定、これもまた議会の反対にあったが、裏工作 を地道に進めた結果、僅差で補正予算案は議会を通過。国家の宇宙開発が再開 されることとなった。中断から既に20年以上経っていた。 その間、文明発達のつけが日ごとに増していった。環境破壊である。企業や 国が本星で大規模な開発をおこなった結果、自然系が崩れ去ってしまい、絶滅 する動物や土地の砂漠化が後を絶たない。こうしたことも、政府の宇宙開発再 開を後押ししていた。 数年経って、お国の第1号コロニーが完成。第1期入植者が入るとともに、 政府はコロニー内に自治市を作り、次いで本星の法律がこのコロニー内にも適 用されるという条例を即日施行した。それから60年もの間にこの第1コロニー と同じようなものを政府はさらに23個つくり、順次人々を入植させていった。 ところでどこの国にも軍は1つや2つ、いや2つあると問題かもしれないが、 存在する。単一国家惑星であるはずのウィルヴィリアにも通称「惑星軍」とい う軍隊が存在していた。存在理由については色々諸説があるのだが、現在の国 民は、「惑星軍? 別にいいんじゃない?」、程度の認識でしかない。そのた め未だ軍はつぶれない。 軍の厄介なところは異様に高い軍備費である。軍上層部は、いかに財務省の 頭でっかちから予算をぶんどるかに腐心していた。そのかいあってか、ある一 定の水準までは軍事費として国家予算から出ている。しかし、新規プロジェク トなんぞがあると一定の水準だけでは到底足りない。ではどうするのか。予算 の増額を頭でっかちに突きつけるのである。それも前年度のおよそ2倍の額で。 当然頭でっかち達は反発する。そこから後は無理矢理すりあわせていくだけで ある。それでほぼ前年度より1から2割ほどの増額となる。新規プロジェクト も100年の単位でみていくと、かなりの量になる。それも、プロジェクト終 了後約10年で「その考え方は古い!」とか、いちゃもんをつけて、再び似た ようなプロジェクトを始めるに至る。 コードネーム「イレーザー」も同様であった。基本的に中性子爆弾のアレン ジ版で、人間だけを殺すというものではなく、惑星だけを壊すという、なかな かビッグなプロジェクトであった。中性子爆弾のコンセプトから考えると、本 末転倒になっているような気がするのだが、そのことは軍では一回として意見 は出なかった。 さて「イレーザー」の開発は順調に進み、ついに最終段階。隣の惑星をちょ っと壊してみよう、ということで、発射の準備が着々と進んでいった。その惑 星の近辺数千キロの範囲でシップの航行を禁止したり、死刑確定の囚人をその 星に連れ込んだり、など様々な準備がなされた。この実験はいつの間にやらマ スコミに漏れ、全国民がその実験の動向に注視していた。 そして実験開始時刻。 惑星は消滅した。 ただし消滅したのは本星だったが。 爆発の衝撃波はすさまじいもので、民間、官製の分け隔てなく惑星の周りを まわっていたコロニーを襲った。衝撃に流され、隣のコロニーに衝突し爆発す るもの、衝撃自体に耐えられず自壊してしまったもの、などほとんどのコロニー は何等かの理由によって壊滅してしまった。 耐えられたコロニーはただ1つ。 政府がもっとも新しく作ったコロニー「W−24」である。 このコロニーにはまだ第1期入植者しかいないくらい、最近に作られた物で あった。さらに、この「W−24」には政府の技術者がお試しでつけた新機能 が、民間には非公開であったものの、幾つかつけられていた。その内の一つに コロニー推進装置があった。何の役に立つかは設計した当時の技術者にもわか らなかった。大体、コロニーは惑星の重力などの複雑な力関係の上になりたっ ており、変に別の力(この場合推進装置による力)が加わると、ラグランジュ ポイントを離れてしまい、最悪の場合、宇宙のゴミになるか、惑星に衝突とい う危なっかしいことになりかねない。そのため、このことはごく一握りの人間 にしか知られていなかった。 その厄介ものである「推進装置」が今回の惑星消滅のときに威力を発揮した。 衝撃波はちゃんと「W−24」にも襲ってきた。そしてそれを推進力に惑星 の爆発危険エリア内から脱出することができたのである。こういった使い方が あるとは技術者立ちは想像もできなかったに違いない。もっともその技術者達 は惑星と運命を共にしてしまい、その目で実際に役に立っているところを見る ことはできなかったのだが。 さて、その推進力を得た「W−24」は外部の損傷はかなりあったものの、 それを自動修復し、順調に航行を続けた。途中、辛うじて生き残ったシップや 他のコロニーの脱出船を回収しつつ、惑星の属していた星系をおよそ10年で 離れ、「プラズマの向くままに」航行していた。コロニー内の産業も、コロニー 自体が基本的に自活できるようにできていたため、こちらも順調に発展してい った。 その10年内にいろいろな出来事があったのだが、特筆すべきなのはコロニー が「国家」に飛躍を遂げたことであろうか。 自治議会はコロニーの惑星ウィルヴィリアからの分離独立を全会一致で採択 する。その採択は惑星ウィルヴィリアの国民憲法の改正第112条、「コロニー 自治議会の採択に関して、本星は拒否権を発動できる。ただし、それは1ヶ月 以内におこなわねばならない。」、における「拒否権」が本星政府の消滅によ り発動がなされることが永久になくなったため、事実上この採択が「国家樹立」 の第一歩となる。 後日、正式に「独立」が宣言され、国家名と暦、国旗が制定された。 国家名「ウィルヴィリア」、暦は本星消滅の年を「ウィルヴィリア暦元年」 と制定。「ウィルヴィリア暦」8年10月のことである。国旗は青地に黄色の 星を十字形に8個並べたものとした。この8という数字は独立の年、ウィルヴ ィリア暦8年の8を由来としている。 「ウィルヴィリア共和国議会」と名称を変えた元「W−24自治議会」は憲 法、法律等は本星と同じものを施行することを賛成多数で可決。さらに国家元 首として任期5年(施行の初年度は2年)の大統領を置くことを決めた。 ウィルヴィリア暦12年、隣接していた星系B1258まであと12光年時 点で1隻の大型船に遭遇する。その船からの通信によると、船のエンジンが完 全に故障しており、専門のドッグでないと直せない状況だという。そして乗員 5千の人々を賄う食料もまもなく尽きてしまうことを伝えた。 政府は「人道的」にその船の乗員の上陸を認めた。乗員が上陸の際にウィル ヴィリアの検疫員が見たものは「人類」ではなく、むしろ「蜥蜴」的な外見を したものだった。慌てた政府は一時、別ブロックに彼らを一般市民から隔離し、 医師団により厳重すぎるくらい厳しい検査が行われた。しかし、彼らから人類 に対して有毒なものを持っていなかったため、結局隔離を解除した。一般市民 ははじめ脅えたものの、時間が経つにつれて彼らを受け入れるに至る。彼らは ウィルヴィリアよりも遥かに高度な文明を有しており、その外見から想像もで きないような高い知性を持っていた。そのため、文明を知性を求めて企業が我 先にと彼らを研究員として採用していった。 その高度な技術力の最たるものが次元シャフトエンジンである。これを推進 装置に取り付けることによって、ウィルヴィリアは光年単位の距離をかなり短 い時間で航行することができるようになった。しかし、部品が彼らの星系(マ ンドリン星系というらしい)にある金属で一部できているため、このエンジン は年に1回程度しか使用できないという不完全な代物であった。それでもウィ ルヴィリアの航行能力を格段にあげたのは間違いない。 話を少し戻すが、国家樹立の際に官公庁の整備もほぼ同時に行われた。この 官庁も本星と同様の様式であったが、違うところが幾つかあった。 まず本星にあったものでここに無いものをあげていくと、まず「外務部」。 これは当然といえば当然である。外部との交渉があるはずがないのである。基 本的に。あと「環境整備部」。これはこのあと説明する、「衛星管理部」の範 疇に入るため統合された。 そしてこのウィルヴィリア独自に作った官庁には、先程あげた「衛星管理部」 (略して「管理部」といわれることもある)がある。これはコロニー「W−2 4」の総合的な管理をするところである。具体的にはコロニー外壁のメンテナ ンス、コロニー内の天気調整等等ウィルヴィリアの根幹を管理しているところ と思っていただければいい。 あと細かい付け加えとして「総務部」に「苦情課」なるものが設置された。 これはいわゆる「総務課」から苦情部分の仕事だけを抽出したところである。 おかげで本来の「総務課」から仕事の半分が消え去り、「総務課」は閑古鳥の 鳴く寸前になっている。 またこの「苦情課誕生」には裏話がある。どうやらある代議士からの圧力が かかったため、こういう訳のわからない部署が出来上がったのだという噂もで きてから10年ぐらいたった今でもちらほらとささやかれている。 今回はそのいろいろと噂の的である「苦情課」にスポットを当てて話を進め たいと思う。最後までお付き合いのほどを……。
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