短編 #0270の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
たしか梅雨明けの2日前の6月28日だった。 じりじりと日差しが強い。 たんぼの水はひからびてはいなかったが、ぬるそうである。 その男は自転車を結構なスピードで操っていた。 自転車は俗に「スポーツタイプ」と呼ばれるものだ。 10時を10分くらい回っていた。 曲がり角。 いつもは軽々と曲がっていく。 しかし、今日は横に滑っていって、こけた。 横倒しになった自転車の前数メートル前に1台のタクシーが止まっている。 後部の乗客は良く見えないが、運転手の顔は見て取れた。 陰になっていたのを考慮したとしても、若干あおざめた顔である。 「大丈夫ね!」 足が自転車の下敷きになってしまっていた男に叫ぶ。 「大丈夫です、すみません」 その男はすぐに立ち上がって、自転車を道路の脇に寄せながら言った。 「気をつけんねよ」 タクシーは走り去った。 しばしそのタクシーを見ていたが、すぐ少しひしゃげた自転車に向き直って、曲が ったハンドルを元に戻す。 そして、体をあちこちと見ている。 左足のズボンをまくり上げて、 「よかったぁ」 安心したように呟く。 「あーあ、完璧に遅刻しちゃったなぁ」 自転車をさっきよりもゆっくりと漕ぎ出した。 男はそのまま学校の保健室へ入る。 「すみません、消毒お願いします」 保健室にいたのは女性だった。 「どうしました?」 「足、怪我しちゃって」 「それじゃ、こっちに」 隣の部屋に入っていく。 男もそれに続く。 「どこです?」 ズボンをまくり上げ、男は顔を青くした。 さっき痣しかなかったところから血が滴っている。 「ちょっ・・・と、ひどいですね」 女医はそういうと、小瓶をケースから取り出す。 「しみますよ」 小瓶の口を開け、そのまま傷口の上に流す。 午後2時40分頃。 男はもう一度保健室に行った。 「なんでしょう?」 と、さっきの女医。 「汁が止まってないようなんですけど」 「そうですか?」 そういうと、消毒した部屋に再び入る。 「見せてください」 男は何も言わずズボンを上げる。怪我の代わりに白いガーゼがその場所にあった。 女医はぺりぺりとテープをはぐ。 傷が丸出しになる。 男の言う通り、汁がまだ出ていた。 女医は改めて処置を施す。 「まだ出るようだったら病院へ行ってください。できれば整形外科がいいですね」 男は部屋を退出際にいった。 「ありがとうございました」 午後4時20分頃。 病院へ男は入っていった。 「お願いします」 受け付けで診察券を出す。 「今日はどうしました?」 「膝を怪我しました」 「前の傷ですか?」 男は苦笑して、 「いえ、あれは治ったんですけど、また同じ所を怪我しちゃって・・・」 受付の人は軽く笑って、 「はい、しばらくお待ちください」 そう言って奥に引っ込んだ。 「○○さん、処置室に入ってください」 と、アナウンスが流れる。 男は立ち上がって、処置室に入っていく。 「横になってください」 看護婦が指示する。 男は黙ってベッドに横になった。 男の医者が来た。後ろにもう一人いる。 「傷がぐちゃぐちゃになっとるね。跡になるよ」 先に来たほうの医者が言った。 「オキシ」 看護婦に指示を出す。 「蒸留水を君はもっといて」 後からきたほうにいう。 看護婦がプラスチックの瓶を先の医者に渡す。 「しみるからね」 透明な液体を患部に流す。とたんに泡が出る。 「うわぁ」 「すごい」 一部の看護婦にそういう呟きが出る。 「蒸留水をかけて」 後ろの医者に指示する。 「はい」 患部に液体を流す。 やがて少し中に残った状態で出なくなった。 「これはね、針をすこしだせば・・・」 そう言いながら蒸留水の瓶のノズルを少し出す。 そして、また流す。 「わかった?」 「はい」 後ろの医者はうなづく。 横に寝かされた男は顔をひきつらせていた。 午後11時50分頃。 「痛たっ」 ベッドに男は横たわる。 「また、1カ月の病院通いかぁ」 ため息をついて、部屋の電気を消した。 <了>
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