短編 #0267の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
あのね、こんなお話、考えたの。きいてちょうだい。 数寄屋橋交差点前でビルの飾り窓にもたれ掛かかり、時折手帳に何か書き付け ては、また虚ろな瞳を宙に泳がせる少女が、申し訳なさそうに遅れてきた男性を 迎える第一声。 不意をくらった男性の眉根も見ずに、語り始める。 おんなのこがね。とってもすてきな、おとこのひとと出会うの。そのひとが連 れていってくれるところは、たとえば待ち合わせの場所だって、一緒に入った喫 茶店だって、プレゼントの服の趣味だって、なんでもみんな最高で、おんなのこ はとってもうれしくなるの。ひとつとして同じデートはないの。いつも違う街で 違うイベントが待ってるの。おもいでは、すてきなものばかり。 それでね、あるとき、銀座でデートするの。地下鉄の、B9の出口、って待ち 合わせるの。ところが、おんなのこは、迷っちゃうの。B9の出口が、わからな いの。それらしい出口はあるんだけど、どこにもB9の表示が、ないの。おんな のこは、数寄屋橋の辺りをぐるぐるぐるぐる、最後にソニービルの中で、人に尋 ねるの。B9の出口、どこですか、って。その瞬間、おんなのこは泣きそうにな るの。どうしてこんなことしてるんだろう、って。そして、気付いたの。それま での、おとこのひととの付き合いは、爪先立ちの背伸びだった、って。ぜったい しない、って決めてたはずの、陳腐な図式の恋だ、って。どうしてなんだろう、 それとも陳腐な図式に当てはめてしまうからいけないのかな。だったらせめて、 最後くらい、カッコよく決めたいよね。 そういうお話。 それは、さようなら、って意味か。 いささか物わかりのよさそうな顔で男性が呟く。 少女はこくん、と頷くと、取り繕った微笑を浮かべる。歩行者用信号が青に変 わり人波が打ち寄せ、少女の姿はかき消える。男性の手には少女の別れのプロッ トだけが残る。 了 1994.06.29.17:10 1994.06.29.26:20
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