短編 #0215の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
昔話 たぬきはおなかがすいていた。少し、不器用なたぬきだったので、なかなか餌 を自分の物に出来なかった。山の上から見下ろすと、人間の里の畑にはたくさん の食べ物がぶらさがっている。人間に係わっちゃいけない、と母親に教わったこ ともすっかり忘れて、たぬきは夜な夜な人里に下りてきた。 「この、いたずらたぬきめ」 ある夜、とうとうたまりかねた畑の持ち主に、たぬきは捕まってしまった。 幾ら謝っても、その老人は許してはくれない。 「歳をとったこの体で、畑仕事をするのがどんなに辛いか。それなのにおまえ は、この一年のわしの努力を、そのいじ汚い口ですっかり台無しにしてしまった」 おじいさんは、たぬきを家の梁にくくりつけた。おばあさんが、おろおろしな がら、事の成り行きを見守っていた。 「この冬、わしらには食べる物が無い。代わりに、おまえをたぬきじるにして 食ってやる」 たぬきは震え上がった。泣きながら命乞いをしたが、おじいさんの怒りはとけ なかった。そして、たぬきじるに入れる山菜取りに出かけるからと、おばあさん に見張りを言い付けて、出かけていった。 「助けて。何でもします。冬中ずっと山から食べ物を採ってきて、畑のものを 弁償します。だから、縄をほどいて下さい」 「約束を守らずにどこかへ逃げられると、わしがおじいさんに怒られるよ」 自分としては助けてやりたいけれど、と言いたげに、おばあさんはたぬきを見 た。 「逃げたりなんかしません。それじゃあ、こうしましょう。私を梁から放して、 もう一度くくり直してください。私は繋がれたまま、一生おばあさんのお仕事の 手伝いを致しましょう。きっと、お役に立ちます」 たぬきの目は本気だった。おばあさんは、たぬきを信じた。毎日の辛い家事か ら開放されることを思って、おばあさんは少し浮足立った。自分一人で、たぬき の縄をほどいてしまった。 たぬきは本気だった。 本気で、自分の言ったことを実行するつもりでいた。 縄をほどかれる迄は。 そして、次の瞬間、たぬき自身でも信じられないようなことが起こった。 自由になった一瞬、おばあさんがもう一度たぬきをくくる前、たぬきはその縄 を奪うと、おばあさんの首に巻きつけて、梁に吊るしてしまったのだ。 もがき苦しみながら死んでいくおばあさんを、たぬきはがたがた震えながら見 ていた。 ああ、死んでしまった。どうしよう。なぜ、自分は、こんなことを。 どうしよう。 おじいさんはもっともっと怒るだろう。 逃げても逃げても追い掛けてきて、きっとたぬきじるにされてしまうだろう。 どうしよう。 どうすればいい? 考えて、考えて、たぬきは、自分がたぬきであることを思い出した。 そうだ。自分は、人をばかすと評判の、たぬきではないか。 おばあさんに化ければ、おじいさんは、おばあさんが死んだことに気がつかな い。そして、何か適当に料理して、たぬきじるだと言って出せば、そのたぬきが 逃げたことにも気がつかないはず。 早く、おばあさんを片付けて、料理を始めなければ。おじいさんが帰って来て しまう。 待て待て、何を料理すればいい? 何か動物を捕まえて来ないと。 一番苦手な仕事だ。 また考え込んだたぬきの目の前に、おばあさんの動かなくなった体があった。 「お帰り、おじいさん」でむかえたおばあさんの顔は、真っ青だった。 さては、たぬきを逃がしてしまったな、とおじいさんは思った。 たぬきじるです、と差し出された大鍋に、おじいさんは集めてきた山菜を入れ た。 「よく、一人で料理できたなあ。剥いだ皮はどうした」と尋ねても、要領を得 ない。 料理は、たぬきじるにしては妙な味だった。やはりな、と思ったが、たぬきが だんだん哀れに思えて来たところだったので、腹は立たなかった。うまい、うま いと、何倍も食べながら、おばあさんの神妙な様子を心の中でおもしろがってい た。 ほとんど食べ終わると、おじいさんは言った。 「いや、変わった味だったが、うまかった。本当は、何の料理だったのか教え てくれんかね」 おばあさんは、卒倒せんばかりの顔色になった。 「いいんじゃよ、ばあさん。たぬきは助けるつもりだったんだから」 おばあさんは、悲痛な叫びを一つきり上げると、たぬきの姿になって、外へ飛 び出していった。 おじいさんは驚いた。しばらく、動けずにいた。突然、大声を上げて、いろり の大鍋に駆け寄った。 「ばあさん!」 鍋の中から、ふやけたおばあさんの顔が、おじいさんを見上げていた。 終
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