短編 #0160の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
FLYING KIDS「続いてゆくのかな」 より 学校から行くこの山の学習、一番仲のいい純ちゃんと同じ班でホントらっき ーだった。そりゃクラス他の子だって別に嫌いじゃないけど、友達じゃないか ら。例えばエッチな話をしてても、“高岡はまだまだこどもー”とかいって入 れてもらえないんだ、私は。17にもなるとゆーのに。っても、実際の恋愛の 話とかするよりも、純ちゃんとする読んだ本やマンガの話とか町でみかけた馬 鹿の話とかしてるほうが楽しいんだから、ホントにガキなんでしょーね。 ご飯も無事終わり、キャンプファイヤーの始まるまでの30分の自由時間、 私と純ちゃんはロッジの2段ベッドの中でだらだらと馬鹿ばなし。教室でもロッ テリアでも山の学習でも変わらない私たち。ふっと純ちゃんが話題を変える。 (これもいつものことだ)「そういえば高岡、あれ知ってる?」 「どれ? テントに水子の霊の影が映ったって話? 3番ロッジの後ろの便所 がキケンって話?」 「違う違う。生徒会長のキャンプファイヤーの話だよ」 「あ、それは知らない」 「何年か前、うちの学校の山の学習でキャンプファイヤーしてた時の話だって。 キャンプファイヤーしてる時にいろいろ出し物も終わってみんなで火を囲んで たら、その時生徒会長してた子が火の方へ歩き出したんだって。で、みんなが “え? え?”って見てる間に火の中に入っちゃって、死んじゃったんだって」 「何それー? ガセじゃないの? だって火に入っちゃうのを全員がぼーっと 見てるか、フツー?」 「でも有名な話だよー」純ちゃんが口を尖らす。 「・・まあ、このジャージって奴はよく燃えそうだけどね」私は布団に仰向け になって目をつむる。「おなかいっぱい。ずっとこうしてだらだらしてたーい」 純ちゃんが欠伸をしつつ返事をする。「キャンプファイヤーするより、部屋で 喋ってたいよねー」 「とか言いつつ、この気合の入れようは一体・・」私は寝転んだまま、自分の 前髪に巻いたカーラーをぽんぽんと揺らす。純ちゃんが笑う。 「あ、5分前だ。そろそろ行こう」 炊事場の横の石のごろごろしたキケンな下り道を、純ちゃんと降りた。純ちゃ んが歌いはじめる。 ♪笑ってるれど目だけは悲しんでる 遠くの景色を焼き付けてる 楽しみにしてたキャンプファイヤー ファイヤー♪ 純ちゃんは小学校の頃昔塾に通っていて、帰りはいつも道が暗くて怖いから歌 を歌って帰ったらしい。今ではすっかり癖になってしまったみたいで、暗い道 を歩くときは必ず歌ってる。今みたいにあっちやこっちに人が歩いていても、 だ。 「それ誰の歌?」と私。 「誰のかは忘れたー。でも加奈ちゃんずCDだよ」 「ふーん、じゃ最近のじゃないね」 加奈ちゃんは純ちゃんのお姉さんだ。私と純ちゃんがまだ小学生の頃、加奈ちゃ んが高校のころバンドブームで、彼女もそれにどっぷり漬かってて、すべての 小遣いをライブ行くのやCDに費やしていたという。もー言うこともカッコウ もトキトキにトンがってて、そのころ小学生だった私は純ちゃんの姉とはいえ、 加奈ちゃんのことは本気で恐かったのを覚えている。 「でもピッタシでしょ、“キャンプファイヤー”」 「うん」 加奈ちゃんは自分の持ってたCDを全部純ちゃんにあげてしまったという。あ んなに好きだって言ってたのに。・・・加奈ちゃんは本当に変わってしまった。 怖くなくなったのは良かったけど、なんか寂しかったよ。あんなに好きだって 言ってた、そういう気持ちは一体どこに行ってしまうんだろう。ぜんぶ、全部 が思い出になってしまうのかな。みんな変わってしまうのかな。 ♪みんなーウキウキ ヨレイヒー みんなーウキウキ ヨレイヒー♪ なおも続く純ちゃんの歌声に、前を歩く男の子達が不審顔で振り返る。私はちょ っと恥ずかしくなって純ちゃんの袖をひっぱる。「もういいよ、純ちゃん・・」 なんてゆっくりしてたらすっかり遅れてたんで、ばたばた走って集合場所へ 行く。もうキャンプファイヤーは燃えはじめている。息を整えて、空を見上げ ると、あらまキレイな星空。うちとここは車でほんの1時間弱の距離なのに、 まるで違う空みたいだ。 「いいなあいいなあ、田舎の人は。こんなん毎晩見ちゃうのかなあ」 その声に私が振り向くと、うしろの純ちゃんがすっかり感激してまぬけづらし て空を仰いでる。だけど私は、こんな凄い星空を日常的に見てしまうことは、 果たして幸せなのでしょーか と聞こうとしてやめて、純ちゃんの首に軽くチョ ップをくらわす。と次の瞬間、純ちゃんの左手が私の脳天をバシリと叩く音が した。 「やーめーてーよー。さっきカーラー巻いたのにー」 「最初に手を出したのは君でしょーが」 「それにしても最前列は炎で顔が熱いよ」 「あ・高岡、鼻のあたりがなんかもうアブラぎってるー」 「嘘ォ!?」 「うそさ」 そしてオーソドックスに“こんばんわーどなたですー”の歌で始まる狂乱の 出し物と、その他大勢な私と純ちゃんは笑って、歌って、拍手してちょこまか と場所移動して、歌って笑って、それからみんな、ゆっくり無口になってキャ ンプファイヤーを見てた。日々のヤなことや、くだらないことが吸い込まれて 燃えていくような錯覚。 私は、炎のむこう側でオレンジ色に揺れている伊藤くんの顔が見える、ただ それだけで泣きたいくらいにうれしかったりする。クラスのみんなは私のこと ガキっていうけど、別にこの年になって恋愛一つもしないなんてことはない。 ちょっとでもキレイに見られたくて前髪にカーラー巻いたり、きっとホント人 並みなことしてる。ただ、みんなみたいに彼女になりたいとか、そんな段階ま で考えつかない。ただ、こうして見ていられるのが一番の幸せ。でもこれもみ んなに言わせれば、恋に恋するガキの所以ってとこなのかな。でも世の中の恋 愛がホントで私のこんな気持ちが錯覚や嘘だなんて、どこの誰が言おうと、私 は言わない。どんなに年をとったって私は言わないから。 火のそばに立っている先生が時計を見はじめる。プログラムではあと20分 でキャンプファイヤーはおしまい。ずっとここにいたいね。火の中に入っていっ てしまった生徒会長の気持ちが、少しだけ分かるような気がした。だけどやっ ぱりキャンプファイヤーはキャンプファイヤーで、ヤなことやくだらないこと が吸い込まれて燃えていくのは錯覚で、辛く楽しく日々は続いていく終わって いく。 私は今日、こうして見たこんなきれいな星空をきっとずっと忘れない。みん なで笑ったその瞬間とか、炎のむこう側でオレンジ色に揺れている伊藤くんの 顔とか、暗闇からする純ちゃんの透明な歌声、きっと今ここにしかないこれら すべて。みんなここにいられないけど。みんなここにいられたら。 おしまい
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