短編 #0149の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
私は、つまらないものを沢山書いていた。言葉の羅列、不規則に、無秩序に並 ぶ単語の中に、私は、形を見出そうとしていたのだ。 それは四角くもあり、丸くもあった。尖った部分からは、膿のような、粘着質 の汚物が垂れていて、表面は、コンクリートでこすったような、細かい傷がつい ている。それら一つ一つが、私の感情を記号化した断片であり、記録でもある。 しかし、まだ形として手に取るまでには、至らなかった。 煙草をくわえて、火をつけてみる。煙を吸い込んで、吐き出してみる。くわえ 煙草などやってみて、その姿を鏡で確認してみたりもする。 埋もれた記憶の奥底で、彼は私の煙草を乱暴に取り上げる。私は、頭の中で、 「何故?」と問うてみる。彼からの言葉はない。女が煙草を吸うのが見苦しいの か、私の体を心配しているのか、私がまだ十九だから云々を言いたいのか、なん にせよ私は、いまだに彼の答がわからないでいる。 彼は、別に無口だった訳ではない。 モニターに映し出された、私の書きかけの小説を後ろから覗き込んでは、彼な りの言葉を漏らした。決してけなすことなく、時には、壁にぶち当たった私を擁 護するかのように、褒めちぎる。 「サイノウアルヨ。ガンバレ」 その彼の言葉が、私を思い悩ませた。根拠のない励ましと、常に味方の立場に 立った愛情表現。さわやかな笑顔、その裏側にあるだろう、手の届かない本音。 私は、彼の、その領域にまで侵食し、苦しめる。 不毛。 自覚。 崩壊。 逃避。 そして、自己防衛本能。その間、私は小説を書き続けることにより、自分のプ ライドを維持する。自分の安定の為に書かれた作品群は、やがて、内的宇宙を浮 遊し、漂い、融合し大きな力を成す。 もちろん、その時既に、彼の姿はどこにもなく、私は、最後に彼に浴びせかけ た汚い罵りと、コールタールの塊のような目をそむけたくなる創作作品達と、独 りで、対面しなければならない。 さらに私は、逃げ続ける。どうしても、面白くならない小説を書き、満足する ことなく、存在し得ない“形”を探し求める。 「何故?」 そうして私は、心のない私小説を書き綴る。 (終わり)
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