空中分解2 #3071の修正
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十時になると、俺は、喫煙室に向かった。実は、給湯室を覗く為だ。十時になると 、花田さんは、総務の連中のお茶を入れるのだ。給湯室に行くと、いたいた。後ろ から目隠しをして、「だーれだ」をやろうかと思ったが、急須を持っていたので、 それは止めにして、そっと忍び寄ると、キューティクルの全然はげていない綺麗な 髪の毛に息を吹きかけた。一瞬、ビクッとして、花田さんは、振り向いたが、すぐ に、お茶汲みの続きをした。人の為に尽くすタイプなのだ。アルミのお盆に沢山の 湯呑みがのっていて、みんなに均等に美味しいお茶が飲める様に、それぞれの茶碗 に少しずつ入れていく。 「大変だね」と言って、俺はニッコリと微笑した、人の背中に。 「今、忙しいんだけれど」と花田さんはお盆に向かって話したが、なんとなく空々 しい響きではあった。 「昨日の約束だけれども」 「後にして下さらない」 「え」っと、少し驚いたが、しかし、俺は続けた。「友達にお風呂屋さんがいて、 そいつに頼んで、タダ券が手に入りそうなんだ」 「ケチ」 「ええ」と今度はかなり驚いた。 「一回、コーヒーしたぐらいで、あんまりなれなれしくして欲しくないのよね」 「そんな」俺の微笑は、元に戻らないまま、顔面神経痛になってヒクヒクと痙攣し た。俺は、思わず、両頬を押さえると(ムンクの『叫び』)、給湯室の壁にへばり ついた。 お盆を持った花田さんは、全く堂々と、絶対に指一本触れられない自信のある極道 の妻の様に、丸で、俺なんか、居ないかの様に、やり過ごして行った。 その時に、カバーマークの残り香。俺は、首筋に薄い紫のキスの印を見た様な気が した、いや、見えた。 誰だ誰だ誰だ、岩田や、総務や、その他の課の連中の顔が、頭の中で、ぐるんぐる ん回って、同時に、給湯室の天井がぐるんぐるん回り出した。
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