空中分解2 #3050の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
危機を脱した沙織と早瀬の周囲には、かつての早瀬の同僚達が参集して円陣を組 もうとしていた。 独自の高速会話法によってそこまでの状況を交換する早瀬達の会話を沙織は聞く 事が出来なかったが、何故か常人には何の影響も無いはずの早瀬達の会話は沙織に 微かな頭痛をもたらしたのだった。 唇の高速振動によって生み出される超音波域で交わされる早瀬達の言葉は、常人 の可聴域を遥かに越えていたし、頭痛等と関与するはずは無かったのだが、沙織は 確実にそれを聞いて頭痛を覚えていた。何故そうなるのか沙織に理解出来るはずも 無かったが、それが彼女が付け狙われる理由になっている事等、神ならぬ身の知る 所では無かった。 「何だって?」 思わず通常の言葉に会話を切り替えた早瀬の叫びに沙織は頭痛を忘れて振り返る と不審げな目を早瀬に向けた。 「何がどうなったの? 早瀬ちゃん」 穏やかに問いかける沙織の言葉に平静を取り戻した早瀬は、説明の言葉を探して 数瞬の戸惑いを見せたが、嘘をつく訳にも行かず話始めた。 「こいつらが言うには、お前は特異能力者なのだそうだ」 「わたしが? 私は普通の人間よ、それにいったいそんな事を何時話し合ったと 言うの?」 「私達には常人の可聴域を越えた超音波言語があり、それによって先ほどから会 話をしておりました、ですが貴方はその最中にそれを何かの形で関知していた のでは無いですか?」 口を挟んだのは、ビショップであった。 「そう言えば、さっき少し頭痛を感じていたのだけど治ってしまったわ」 素直にそう言う沙織に早瀬の驚きはさらに倍増した。彼等の高速言語を関知出来 る常人が存在し、しかもその人物は早瀬に取って最愛の存在であり、その事実によ って命の危機に曝されていると言うのだ。 その時、早瀬の耳は彼の注意力を現実に引き戻す手助けをした。幼児の吹く笛の 様な音を彼の耳が捉えたのだ。 彼のかつての配下達も例外では無く素早い動きによって地面に伏せると次に来る であろう衝撃に備えた。 飛来した衝撃は彼等の想定を越えるものでは無かったが、一時的に行動の自由を 奪うのに充分なものであった。それに続く正体不明の一団の突撃に彼等が備えるの に必要な時間だけは確保出来たが、早瀬に悪態をつかせるには充分であった。 「まぁったく、ほんの数分の内に2回も襲われるハメになるとは・・・・・・」 一言呟いた早瀬の言葉は沙織の耳に届くと 「嫌なら別の人に守って貰っても良いんだけど」 「ふん!」 他の誰にも沙織を守り切れるはず等無いとの自身に満たされた早瀬は、一言鼻を 鳴らすと敵に向かって脱兎の如き行動に出た。 早瀬の右手がきらめき強大なエネルギーの束を打ち出すと、その光が敵の一人を 捉え眉間に小さな黒い穴をうがつ。それから間をおかず左の兵士へと向かった早瀬 は、左手に握った小石を音速を越える速度で打ち出した。 だが左の兵士はいとも簡単に早瀬の打ち出した小石を避けると空中に消える様に 行動すると、早瀬の背後を取ろうとした。視覚は着いて行かぬながらもそれを知覚 した早瀬は回避行動に出たが、彼の視覚を欺ける程の行動速度を持つ敵の兵士に驚 愕してもいた。(気を抜けば殺られるかも知れない)早瀬のそんな想いとは裏腹に 戦闘はその激しさを増して行った。 ビショップ達の活躍は目ざましく敵の撹乱に成功していたし、沙織の周囲には複 数の見方が鉄壁とも言える守りを敷いて保護していた。それを確認しつつ敵の攻撃 をかわした早瀬は、敵の発する微振動を関知するとその敵が先夜彼によって片腕を 失ったパルドである事までは確認した。 成るほど、奴ならこの動きも納得出来ると一人ごちながら回避を完了した早瀬は 反撃をするべくパルドの姿を捉えた。早瀬は自らの左手を破壊音域にまで振動させ ると、腕の一振りで力に指向性を与えてパルドに向かって投げつけた。 パルドの上半身が泳ぐ様に揺らぐと、背後の木立が早瀬の放った力によって消滅 したが、指向性を与えただけで音速で突進したはずの攻撃をいとも簡単にかわして のけた敵の存在は早瀬に取って初めてのものであった。 その時、兵士達に守られた沙織の頭上に黒い影が降りかかった。 その存在に気付いた兵士達が応戦の構えを見せるが、早瀬にはその存在が物理の 法則を無視したものである事が直感的に理解出来た。 兵士達は精神エネルギーを放出してバリヤの様な力場を形成してそれを防ごうと していたが、敵に取ってそれは障害に成り得なかった。 それを把握した早瀬が、自らの分身として利用しているエーテル体を影と沙織の 間に割り込ませた時、影から一条の光が生じた。その光は早瀬のエーテル体を貫く かに見えたが、早瀬のエーテル体の方が力が少しだけ上だった様で貫通だけはしな いで早瀬の半透明のエーテル体を発光させる事になった。 それを見た敵達が、何故か一時に引き始め味方が追撃する暇も無くその姿を消し てしまった。 「くそ!これじゃひいき目に言っても引き分けだ!」 早瀬の言葉にならない悪態は、ビショップ一人の知る所であったが、彼女もまた 一言も言葉を発しなかった。 それは、影からの発光が早瀬のエーテル体にただならぬ損傷を与えた事を把握し 得る立場にあった事も、助けにはなっていた。 外見的には、何の外傷も無い早瀬が実はエーテル体に重大な損傷を受け活動に支 障を来すかも知れない状況にあった。 グレイ
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