空中分解2 #3028の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「もしもし」 金沢は相手を驚かせないように、マネージャーに声をかけた。 「あ、あなたは昨日の」 振り向いて気付いたらしく、石尾マネージャーは声をあげる。 「何か大変なことが起こったみたいですね」 「ええ……。ドア、開け放していたから、御存知でしょうけど、高村さんが刺 し殺されて」 「何か犯人につながる物はありましたか?」 金沢は遠慮なく聞いていく。 「……そうか、あなた達は探偵でしたね。高村さんから聞きました。お話して いいものかどうか分からないのですが、高村さんは血文字を遺していたのです。 01451と」 「ダイイングメッセージですか」 「何です、それ?」 「あ、知らなければ別にそれでいいんです。できるだけ正確に、その文字を書 いてみてくれませんか?」 「はい……。書く物を下さい」 私が紙とペンを渡すと、石尾マネージャーは次のように記した(末図参照)。 「血がにじんでいて、はっきりしないんです。何せ、床はカーペット敷でした から」 「これで充分、結構ですよ。で、彼女の息子さん、どうしました?」 「どうしてそれを?」 相手はびっくりしたようだ。 「いえ、ちょっと見かけたもんで。かなり親子でもめていたみたいでしたから、 気になって」 「はあ、五郎君は高村さんと亡くなった旦那さんとの間の子供なんですがね。 私もよく知らないのです。ただ、そろそろ押さえつけないと、やばいんじゃな いかなとは思っていました」 「それはスキャンダルのことで?」 「そうです」 その時、例の男−−昨夜、高村利子を訪ねていた男だ−−が、通りかかった。 ここぞとばかり、金沢は呼び止めた。 「ちょっと、何を慌てているんですかな?」 「な、何だ、おまえは……。私は忙しいんだ」 男は奇異な物を見る目をしていた。が、すぐにその場を去ろうとする。 「高村利子さんのことでしょう?」 「何故、それを知っている?」 突然、こちらに掴みかからんばかりに、歩み寄ってきた。 「どういう関係ですか、高村と」 石尾マネージャーが鋭い口調で質す。 「おまえこそ、どういう関係だ?」 「私は彼女のマネージャーです」 「何だって? そうか、利子はマネージャーをかえたのか。前の船越君は、辞 めさせられたのかな」 こう言われ、やや戸惑う表情になる石尾。 「詳しくは知りませんが、私は、船越さんの後釜に違いありません」 「ははあ、じゃ、利子が私に話さなかったのも無理ないな」 一人で納得している男。 「あんたこそ、誰なんです?」 「……殺人事件が起こっては、名乗らざるを得ないだろうな、くそっ。大磯だ。 大磯篤志。不動産業をやっている。高村利子とはちょっとしたお付き合いでね」 やけ気味に、大磯と名乗った彼は、笑いながら答えた。 「昨夜は何時頃、利子さんの部屋を出ました?」 いきなり金沢は切り込んだ。 「な、何のことかね?」 「ごまかそうたって、無駄ですよ。我々は見ているんですから、昨日の夜九時 頃、あなたが高村利子の部屋に入って行くのを」 「そんなことがあったんですか!」 知らなかったマネージャーは、大いに驚いている。 それに構わず、大磯は口を開いた。 「……見られたなら仕方ない。自分の部屋に帰ったのは、夜の十一時半くらい だったかね。その後は寝ていた」 「もちろん、部屋を出たときには高村さんは無事だったと主張なさる?」 「当然だ! 他にも怪しむに足る人間がたくさん乗っているんだろう、この船 には。利子から聞いたぞ、うるさいマスコミ関係者や、利子の息子の五郎君も 乗っているそうじゃないか」 「そう言えば、お子さんの五郎君とやらは、どこにいるのでしょうね。母親が 死んだことは知っているのかな?」 少しとぼけた口ぶりの金沢。 「五郎君には、私から知らせておきましたが、『石尾さん、本当に?』と言っ た切り、部屋に閉じ込もってしまいましたよ」 マネージャーが答えた。 「じゃあ、今は話は聞けないでしょうね。週刊誌記者らしい坂上は、石尾さん が取材OKを出したんでしたよね? ちょっと立聞きしたんですが」 「ええ? 知りません。いえ、坂上さんなら知ってますよ。坂上伊予さんのこ とでしょう。あの人、乗っていたんですか。きっと、高村利子のマネージャー たる私の名前を知って、利用したんですよ」 憤慨する様子の石尾マネージャーだったが、こんなことには慣れているよう で、すぐに冷静になった。 その後、坂上伊予を探してみたのだが、うまくつかまえられなかった。取材 費節約のためか、二等客室だったこともある。 仕方なく、事務長に頼んで、船内放送をやってもらった。すると彼女は、す ぐに姿を現したので、まずは一安心である。 「警察へ協力してもらうため、着岸後も拘束します。ご了承下さい」 こう、事務長が我々六人に言い渡す頃、船は港に着いたようであった。 警察の調べで判明したことは、死亡推定時刻は昨日の夜十一時から日付がか わった一時の間で、大磯の申し立てたアリバイは意味がなくなった。 また、当然と言うべきか、現場には高村利子以外の指紋は、マネージャーの 石尾、息子の五郎、そして大磯のものもあった。坂上伊予のものだけは、ドア のノブにわずかに認められたに過ぎなかった。 そして現場の血の跡から、遺体が動いた可能性があるらしい。これは船の揺 れによるもので、例の「01451」の血文字は、丁度、逆さまの位置から書 かれたことになるのだ。そんな器用なことができるのか、また、どうしてそん なことをする必要があるのかは、不明である。なお、「01451」について、 関係者の誰も、心当たりがないということであった。 さらに、遺体は眼鏡を掛けていた。刺されて転倒した衝撃を考えると、眼鏡 はずれていなければおかしいのに、きちんと掛けられていたという。 警察から解放された私と金沢は、とりあえずは当初の目的地であるホテルに 向かった。その車中−−。 「ロック、君は誰が犯人か分かったかい?」 金沢は意地悪そうに笑っている。 「船上の殺人の? いや、さっきから考えているんだが、さっぱり分からん。 01451ってのが特に」 「あれは反対から読まないとね」 「え? 反対から?」 私はメモした文字を反対から見てみた。 「そうか! 分かったぞ」 私が叫ぶと、金沢は、ようやく分かったか、といった顔でうなずいていた。 −問題編.終わり <図> ** * * * **** * * * * * * * * * * * **** **** * * * * * * * ** * * **** * さて、犯人は誰でしょう? さほど厳密な論理で当てるものではありません が……。解答編は当分、UPしませんので、よかったら考えてみて下さい。 ではでは。永山でした。
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