空中分解2 #2945の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
十二月二十三日。あなたは分析学の友人、言葉のプレイボーイの忠 告を素直に聞き入れるには少し不器用すぎるし、あなたは少しも詩的 ではありません。あなたはもちろん詩と言った類の読物を手にしたこ とさえ記憶にないのです。そんなあたなには、実戦よりほかありませ ん。勇気はもっとも単純なものだからこそ、あなたは彼女の唇を奪う でしょう。きっと言葉より先に、あなたはそれを選ぶはずです。 十二月二十四日。イブの朝、あなたは目覚めと同時に電話に向かい ます。彼女の家にダイヤルします。そして簡単に断られてしまいます。 「あなたとは別れたはずよ。」 そう彼女が言ってきたら、あなたはこう言い返しなさい。 「そんなの関係ないよ!。」 彼女はあっさりと受話器をおくでしょう。それが彼女の答だと思って はいけません。あなたはベットの上の実戦主義者なのですから。 あなたは迷わず彼女の家に向かって歩き初めなさい。自宅まで彼女 を迎えにゆくのです。彼女のデートの先約なんて、この際あなたにと っては無効なのですから、、、。 そこであなたはフラワーショップが開店するより早く薬局が開くの を待つことでしょう。あなたはそこで愛の小道具を完璧にそろえなけ ればなりません。それが単純な男の勇気であると、その朝あなたは素 直に勘違いしなさい。思い込みの激しい男の朝は、以外に立つ?もの です。 幸いなことに、現実があなたを目覚めさせてくれることになるので す。彼女はとっくに家にはいませんでした。 「あら、あの子ならとっくにでかけましたよ!。」 そう、あの人のお母さんに軽くあしらわれても決っしてひるんではい けません。 「行き違いになったようね。」 あの人のお母さんにそう言われても、あなたはがっかりしてはいけま せん。 彼女のために包んでもらった花束を、あなたは持って返ってはいけま せん。 「メリークリスマス!!」 少しにこやかに微笑みながら、彼女のお母さんに花束を渡しなさい。 * * 驍烽フです。それが何時なのかは、しかし誰も知 りません。それは時のいたずらなのですから、、、。 あなたは彼女の主催するイブのパーティーに乗り込んでゆきます。 それがあなたの勇気ある論理、行動です。運のいいことに通りで彼女 の友人にばったり出会います。 「やあ、明美ちゃん!。」 「あら、どうしたの?、うかない顔して?。また女に振られた?。」 「まあね、」 「がっかりしてることないのよ!。今夜見つけちゃえばいいんだから !」 ノコついて行くのです。 「キキのパーティー知ってる?。」 「電話してもくれないよ。キキのやつ、あれからずっと僕のこと避け てるんだ。」 「じゃあ 、今夜がチャンスよ!。奪い取っちゃえば?。」 男と別れたばかりの女には必ず『影』がつくものです。あなたはそ れを注意深く捜しなさい。このパーティー会場にかならずいるはずな のですか ら。そうして十二時をまわる前に彼女をものにしなさい。そうする気 がないのなら、あなたは尻尾を巻いて、独り冷たいぼろアパートに返 ってしまうがいいのです。あなたは年が明けたばかりの人影のない通 りを、まるで浮浪者のように力なく歩きまわるのです。負け犬となる pを想像してみなさい。 あなたはパーティー会場で、卑しい真似をしすぎてはいけません。 ダイエットペプシの試飲会、一時間二千円の食べ放題ではないのです から。なぜなら今夜のあなたは、彼女にとって招かれざる客なのです から。いずれにしても、あなたはその空腹を満たす意味を間違っては いけません。あなたの欲しい果実を、食後のデザートを口にすること を忘れてはいけません。 とにかく今夜のあなたは、危険を犯そうとしています。単純な勇気 と、初な思考回路がそれをあなたに促します。歯をくいしばってアパ ートに返るか、彼女と別れる二カ月前から予約済みのホテルのルーム キーを、素敵な夜の静かな街で甘える瞳に写すことが出来るのか、そ れを本当に知るのは今夜のシャンペングラスの冷え具合なのですから 、、、。 * * ます。あなたはキキのお相手、あなたよりハ ンサムな男を憂鬱なくらい呪いたくなります。しかし、そこで我慢し なさい。他の女性と楽しげに食事をし会話しなさい。気の強い女は、 これが案外、移り気なものです。あなたの様子を、気がつかれないよ うに覗いています。しかしあなたはそんな彼女の心内をすっかり知っ ているのです。あなたは、彼女の一日の三分の一を共に過ごすことを 許されて来たのですから、、、。 三分の一。それは睡眠時間と同じ長さなのです。そんな事を、あな たは誰かから聞いたことがあります。そうです、それは彼女でした。 あなたは昔の昔の女(つまりは、彼女の一つ前の女?!)と別れて今 の安アパートに引っ越した時、部屋に程良い大きさのシングルベット が欲しくて街の大きな家具屋を尋ねたことを思い出しなさい。そこで あなたについてまわって店中のベットを誉めちぎった女の店員に、逆 ュ食事に誘っても、まんまと断られたことを 思い出しなさい。あなたより言葉たくみな彼女に、あなたは根負けし て買わされてしまいます。考えていた最高額の予算をかなりオーバー して、あなたはうんざりしていたはずです。それが二人の出会いでも あったのでした。 それからあなたがキキをベットに運び込むまで、少しも手間取るこ とがなかったのですから不思議です。あの時のあなたには、いかほど の言葉が必要だったでしょうか。彼女の服を全部脱がせる必要はあっ たでしょうか? あなたは思い出します。彼女を知るには殆ど言葉が いらなかったのです。あなたはただ、真紅のルージュに恋をして、キ キの薦めたちょっぴり高価なシングルベットで彼女の声を聞いていさ えすれば良かったのです。ベットに揺れる彼女の想いを、あなたはた だ、そっくりそのまま女の告白と受け止めれば良かったのです。あな たが与えた彼女の言葉を、あなたの想像で解する必要はなかったので す。なぜならそれは、あなた自身の言葉なのだから。 あなたは大きな誤ちを犯してしまったことに悔いています。あなた あなた自身の告白によって彼女を傷つけてし まったのですから。 〜 処方箋 〜 告白は、やがて孤独を募らせる。告白の中に托したあなたへの言葉 は、まるで跡形もない香となって消えてしまう。誰も留めもしないで、 それはだんだんと一人歩きしてしまう。それが恋の始まりと言うもの なのでしょう。 あなたはやはり分析学の虜になってしまいます。あなたに理解でき ない女心が、女ったらしの統計学の分析結果の単純な男の甘い言葉で 少しずつ解放されてゆくのを感じています。しかし、あなたは何より 彼女の言葉を信じなさい。それがあなたにとって最良の処方箋となる
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE