空中分解2 #2872の修正
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第七章 『楽園の始まりと終わり』 EVEとの日々は、楽しい毎日だった。いつの間にか、それから、一ケ月ほどが、 たっていた。EVEのソフトウェアの仕上がりは、ほぼ完璧なようだった。いくぶ んか、幼く、知恵の足りないようなところもあったが、それは、EVEは、まだ、 生まれたばかりなので、しょうがないことであった。しかし、そのような未発達の 面が、EVEの、可愛らしいところでもあったのだ。EVEと楽しく過ごすことと 併せて、男性型の製作も、順調に進んでいた。製作といっても、簡単な作業が二つ あるだけで、それも、ほとんどDOG任せでよい作業だった。ひとつは、EVEの 体から、細胞を、一つ取り出し、DOGに命令して、培養すること。もうひとつは、 元のプログラムを、DOGが、EVEから逐一採取しているデータを加味して、女 性用から、男性用に変換するというものだった。 その合間をみて、私は、EVEを抱くことに熱中していた。そうして、新しくデ ータを得るという、大義名分はあったが・・・、私の心に、なんらかの後ろめたい ような気持ちがないわけではなかった。私は、決して、性の快楽に負けたのではな く、EVEへの愛の強さに負けたのだ。 それから、さらに、半月が過ぎたころ、男性型のEVEは誕生した。EVEのと きは、使わなかった高負荷の電流を使って、仕上げたので、製造期間は半分で済ん だ。ただ、体が電流の青白い稲妻のようなものに包まれながら、成長してゆくのを、 毎日、見ているのは、あまり、気持ちの良いものではなかった。男性型のEVEを 造るのは、思いつきではなく、最初からの計画に従った、予定通りの作業だった。 男性型のEVEは、大佐に引き渡すために造るものなのだ。最初に造ったEVEは、 あくまで、私専用のものとして、いつまでも、手元に置いて置きたかった。もちろ ん、EVEが、ずっと、そう望めばの話だが。とにかく、私は、自分のパートを早 く終えて、すっきりしたいと、思っていた。 男性型が完成した日、私は、EVEを傍らに呼んで、これからの予定を話した。 『EVE、これから言うことを、よく聴いてほしい。今日、君の細胞から、培養し た男性型が完成した。大佐に引き渡す前に、一度だけ、テストをしたい』 EVEは、何もわからず、私の顔をみつめていた。ただ、私の話しぶりから、ふ だんとは違う、ただならぬものを感じとっているのは、まちがいないようだ。 『最初に、言っておきたいのは、私が、EVEを抱いたのは、決して、意地悪では なく、テストのためだということだ。今回、男性型が完成して、軍に引き渡す前に、 私は、また、テストしなければならない。テストとは、私が最初にEVEにしたよ うな、性行為のことだ。そのデータを、DOGで採取して、分析して、今回、生ま れた男性型が正常かどうか調べなければならない。私は、男なので、男性型と、寝 ることはできないし、また、たとえ、寝たとしても、男性型の精神に、悪い影響を 及ぼす恐れがある。新しい女性型を造る時間も、とても無いし、造ったとしても、 また、私がテストをして、育てあげなければならない。もう、そんな時間的な余裕 は、ないのだ』 私は、そこで、次に言う言葉をためらった。EVEは、理解しているのか、いな いのかは、よくわからないが、私の一言、一言にただ黙って、うなずいていた。私 は、思い切って、EVEに言った。 『あの男性型と寝てほしい』 EVEは、『えっ!』と、小さな声で言って、とても、驚いた顔をして、私の表 情を伺った。私は、EVEに頼んだ。 『一度だけでいい、頼む』 EVEは嫌がったが、私は、手を変え、品を変え、何日も説得して、やっと、E VEを納得させることができた。EVEには話さなかったが、事が済んだら、私は、 EVEの記憶の中から、その忌まわしい部分を消去するつもりだった。私も、EV Eに負けないくらい、そんなことはさせたくないと、願っていたのだ。 その晩、私は、寝室に、EVEと男性型の二人を置いて、外に出た。その光景だ けは、どうしても、映像としては、見たくなかった。音声と、その他のデータの収 集と解析だけで、もしも、男性型に、なんの欠陥もなければ、このテストだけで、 私の役目は、すべて、終了するはずだった。 私は、気を紛らわすために、男性型を、地表に送り出すための作業も、平行して、 遂行することにした。私は、大佐に、手短な電文を書き、電波に載せて、地表の研 究所に送った。そうしているうちに、男性型とEVEとの行為は、始まったようだ。 どうやら、EVEが、まだ、何も知らない男性型をリードしているようだった。私 がEVEに頼んだすえの、そして、当然といえば、当然の結果なのだが、私は、嫉 妬のような感情を、強く抱いた。こんなことなら、もう一体、EVEを造っておけ ばよかったと、私は、後悔していた。私は、いらいらしながらも、男性型を地表へ 送り込むためのシップをスタンバイする作業にとりかかった。男性型に関するデー タその他を、シップの中に、無造作に放り込んだ。ただ、EVEの存在を知られな いように、細心の注意を払うのを、忘れはしなかったが。そうしているうちにも、 私の耳の鼓膜に、イヤホンを通して、男と女の声が響いていた。激しい嫉妬からく る、二人の、その行為を止めたいという感情と、理性からくる止めてはいけないと いう感情との葛藤で、ほとんど、気が狂いそうになった私は、酒を探すために、キッ チンに向かった。いまの私は、普段は、パーティーのとき以外は、ほとんど、口に しないはずのアルコールを必要としていた。ウィスキーの瓶を抱えて、ラッパ飲み しながら、私は、DOGの画面に映し出されている、男性型に関する様々なデータ を横目で見た。データを見るかぎり、男性型のソフトウェアは、ほぼ、完璧に近い ようだ。私は、EVEから男性型を引き離したいという衝動に駆られていた。私は、 酒をあおった。泥酔になりそうなくらい、アルコールを、胃に流し込んだあと、私 は、意識を失いそうになった。気を静めるには、そうするよりも、ほかなかった。 薄れゆく意識の中で、私は、昔、バベル博士に提出した卒業論文のことを思い出し ていた。その論文の題名は、たしか、『性欲こそ、人間の生きる活力である』とい うものであったように思う。 星も瞬かないような宇宙の辺境での電光石火のような閃きの放電現象とともに、 私は、目覚めた。重い頭と、ふらつく足取りで、二人がいる部屋に、私は向かった。 私が、ドアを開けると、そこで、二人は抱き合って、眠っていた。いや、そうでは なく、正確にいうと、EVEが、男性型を母親のように抱き締めていたのだ。瞬時 のうちに、私は、理性を失い、胸が潰れそうになるような、いたたまれない怒りに、 身を任せて、乱暴に、男性型を、EVEから、引き離して、引きずっていった。男 性型をチェックしてから、地表に送り出すつもりだったのだが、私は、男性型をハ ダカのまま、シップに叩きこんで、そのまま、船を地表に向けて、発進させた。男 性型のチェックは、私がしてもしなくとも、どうせ、あとで、大佐が、研究所で念 入りにやってくれるだろう。 あとで、EVEの記憶を消すだけだった。ただ、その前に、私は、彼女にしたい ことがあった。私は、EVEにシャワーを浴びさせた。その間に、私は、強精剤を 飲んだ。これまでの人生で、私が強精剤を飲むのは、これで二度目であった。私は、 EVEの記憶を消す前に、EVEを抱いておきたかったのだ。彼女がシャワーを浴 びて、出てきた。私は、EVEに、一番大好きなドレスを着るように、言い渡した。 彼女が着替えているうちに、強精剤の効果か、私は、また、残忍な野獣へと、変貌 を遂げていた。EVEが着替えを終えるのを見届けてから、私は彼女に襲いかかっ た。彼女の体を、床に押し倒し、衣服を引き裂いて、暴力で、強引に犯した。私は、 何度も何度も、EVEを犯しながら、彼女の、男性型との行為を責めた。そうして、 抱いているうちに、私とEVEは、どちらともなく、力尽きて、眠りに落ちていた。 突然、電話のベルが鳴った。私は、その音で、飛び起きた。もう、太陽が出て、 朝になっていた。ここは、衛星軌道なので、太陽の出没はかなり変則的なのだが、 朝らしい朝は、やはり朝だとしかいえないだろう。私は、しつこい呼び出し音を無 視することができず、受話器を取った。受話器の向こうで、大佐の元気な声がして いた。 『やぁ、ヘンリー。昨夜遅く、荷物が届いたよ。彼の名前も、決まった。【ADA M1号】だ。君には、心からの、お礼を言わねばならない! ほんとうに、ありが とう!』 私は、呻き声をあげて、受話器を落とした。忘れていたことを思い出したのだ。 私としたことが・・・。 『そうだ、奴の記憶を消すのを、忘れた』 と、私は、心の中で、呟いていた。
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