空中分解2 #2224の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
8−SIDE・A【美鈴】 言葉は錆び付いたオルゴール。 誰かが言っていた。 伝えたい事がなかなかうまく伝わらない。 とてももどかしくて、やるせない気持ち。 その日は一日中、あの子の事で頭がいっぱいだった。 一瞬の時しか知らないあの子。 だけど…… あたしもあの子と同じでないとはいえない。 生きるという勝負に負けてしまったあの子は、あたしとどう違うんだろう。 きっと、さびしさから逃れたかったにちがいない。 誰かに助けてもらいたかったにちがいない。 傷だらけになってぼろぼろになって…… 楽になりたかったのだろう。 死は安楽へと通ずる道なのか? 悪夢から目覚めさせてくれる唯一の手段なのか? だめ…変なことばっかり考えてしまう。 今の生活が夢の中だったらいいなんて…… ・ ――あなたは、負けないでね ふいに心の中によみがえる言葉。 あの人があたしにくれた言葉。 あの人の言葉には実感がこもっていた。 まるで、負けたことがあるかのように。 負けてしまった経験があるかのように。 いや、負けた人間が生きていられるわけがない。 きっと、あたしの思い過ごしだろう。 あの人みたいに強くなりたい。 壊れてしまった微笑みはもとに戻るのだろうか? 思わずため息がこぼれる。 9−SIDE・B【綴】 茜色の空は、時間の感覚を曖昧にする不思議な輝き。 闇と光の狭間の混沌とした曖昧さはとても好き。 私は、幼い子供の立ち去った公園で、ブランコに揺られながら茜色の光を全身に 浴びていた。 ブランコに座っていることに意味はない。 ただ、なんとなくこの公園に誘われてしまったのだ。 このなんともいえない雰囲気に浸っているのが好きなのだ。まあ、たまにやるの がオツなんだけどね。 ぼんやりと静かに揺れる私の視線に一人の少女が映る。どこかで見かけた顔だ、 としばらく考えてはっとする。 そうだ、あの子じゃないか。 「やっほぉー!」 私は立ち上がってあの子に声をかける。少し陰鬱な気分をまぎらわす為に、わざ と脳天気な口調で呼びかける。 「え?」 あの子はこちらを振り向く。少し幼げな素顔。やっぱりあの子だ。 「あ!……あ…あの、今朝はありがとうございました」 あの子は少し驚きながら返事をする。 「今、暇?良かったらこっちこない?」 「あ、はい」 私の気まぐれな誘いにあの子は素直に答える。なかなかかわいいではないか。 名前… そういや、あの子の名前知らなかったな。ちょうどいいや、聞いてみよ。 私はそれとなく質問する。 「そういえば名前聞いてなかったよね?」 10−SIDE・A【美鈴】 こんな所でまたあの人に逢えるなんて、あたしはとっても感激してしまう。 あの人と言葉を交わせるなんて夢のよう。 「そういえば名前聞いてなかったよね?」 ほんと、そういえばあたしったらあの人の名前も知らなかった。 自分の名前も名乗ってなかった。 せっかく、神様が再びめぐり逢わせてくれたのだもの。あの人のことをもっと知り たい。そして、あたしを知ってもらいたい。 そう、まずは自己紹介ね。 「あたしは楢崎美鈴。美しい鈴と書いて『みりん』ていいます」 美しいなんて言葉、自分に使うのは気がひけるから、ついつい照れてしまう。 「へぇー、『みすず』って読むんじゃないんだ。『みりん』ちゃんなのね」 あの人は本当に関心している様子でそう答える。 「友達には調味用のお酒の『ミリン』と同じで変とか言われるんですけどね」 あたしは説明しながら苦笑する。 「そう?私はなかなかチャーミングな名前だと思うわ。『みりん』って響きがとって もいいわよ」 チャーミングな人にチャーミングだと言われるのは、なんだか複雑な気持ち。だけ ど素直に喜びたい。 「あの、お姉さまは…」 あたしの問いかけにあの人はけらけらと笑い出す。 「お姉さまはやめて…お姉さまは…」 我を忘れて笑い転げるあの人もなかなか素敵。だけど、どう呼べば? 笑いを押し殺しながら、あの人は自己紹介をはじめる。 「私はね、佐々間綴。言葉を綴る、文字を綴る、のアレね。わかる?」 頭の中にぱっと『綴』という文字が浮かび上がる。 「うわぁ、かっこいい」 イメージ通りの名前にあたしは目の前のあの人−綴さんを惚れ惚れと見つめる。 「かっこいいだなんて…美鈴ちゃん、ちょっと大げさよ」 綴さんは困ったような笑みを浮かべる。 「いえ、ほんとに。その…素敵なお名前です」 あたしは再び出逢えたうれしさで、完全に舞い上がっているみたい。 「そこまで言われると、私は照れてしまうぞ」 綴さんは、ほんのちょっぴり頬を赤らめたように思えた。 夕焼け空のバーミリオンの光のせいかもしれない。 でも、そんな綴さんの姿は夕陽によく映える。 「美鈴ちゃん。立ち話もなんだから座らない?」 綴さんは近くをぐるりと見渡して、座れるような所を探している。 「あ、ブランコ…」 子どもの頃の想い。そんなものが心の中に浮かび上がってくる。 「ねぇ、綴さん。ブランコに乗ってみません?」
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