空中分解2 #2187の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
野生児 ヒューイ 悠歩 『世界の終わりの日がきた。 先程、東の空が真っ赤に染まり、巨大なきのこ雲が天まで達した。 5分くらい前に我が国も報復に出たことを告げてラジオは沈黙した。 何やら空の向こうから、尾を引きながらこちらに向かってくるものが肉眼で確認で きる。 どうやらここももう終わりのようだ。 数時間後にはこの国、いやこの世界から生きているものはすべて消え失せるだろう。 どうやら時間のようだ。』 ある男の日記の最後のページより 第一部 『ウー ウー ウー』 けたたましくサイレンの音が建物じゅうに響いた。 「なに? 何があったの」 ティナは訳も分からず、きょろきょろと辺りを見渡した。 「こんな所にいた!! お嬢さん、こっちです」 突然、部屋に飛び込んできた若い白衣の男が、荒々しくティナの腕を掴んで引っ張っ た。 「ヤダ、痛い」 しかし、男は力を緩める事なく走り始めた。 「痛い、痛いわ、アルトマンさん」 13歳のまだほんの少女であるティナに、アルトマンの力は余りにも強すぎた。 ティナの訴えにアルトマンは力を緩めることも、速度を落とすことも無く言った。 「戦争です! 核戦争が始まったんです!」 「そんな…! パパ…パパは」 ティナはアルトマンの手を振り解いて走り出そうとして、もがき出した。 流石にこの抵抗でアルトマンは走るのを止めざる負えなかった。 「落ち着いて、博士も向こうでなんとかするはずです! 第一今から向こうに行って 間に合う訳はないでしょう」 アルトマンは何とかティナをなだめようと言い聞かせたが、無駄だった。 「いや、離して! パパ」 「仕方ありません」 そう言うが早いか、アルトマンはティナを抱え上げて再び走り出した。 「パパー、パパー!」 ティナは夢を見ていた。 ティナ砂漠に一人佇んでいた。真っ暗な砂漠に。 「私、どうしてこんな所にいるのかしら? パパに会いに研究所にきていたはずなの に…」 「研究が忙しくて、五日間も家に帰ってきていないパパに着替えと差し入れのお弁当 を持って…」 そう言えばティナはパパが何の研究をしているのか知らなかった。 そんなことに興味は無かったし、例え何の仕事をしていたとしてもティナにとって パパは世界で一番大好きなパパに代わりがある訳ではない。 「パパ、何処にいるの?」 ああ、そう言えばパパの助手をしているアルトマンさんが、何か言っていた。 何処か他の研究所にいる博士の協力が必要になって、そこに行ったと。 自分は今、その研究所に向かっているのだ。 「ああ、何処だったけ。アルトマンさんに、ちゃんと聞いたのに…思い出せない」 歩いていればそのうち着くだろう。そう考えてティナは歩き続けた。 しばらく歩いていると、地平線の彼方に何か見えてきた。 人影のようである。 こんな暗闇で、そんな遠くのものが見えるはずはないのだが別にティナは不思議に は感じなかった。 人影は全部で三つ確認できた。 ティナは更に目を凝らして、その人影を見つめた。 「あっ、パパ!」 それは紛れも無くティナの父親の姿だった。 「パパー」 ティナは嬉しくなって駆け出した。 そして、あっと言う間にその三つの人影に追いついた。 「良かった。やっとパパに会えた」 息を切らせながらもにこやかにティナが言った。 「君は、誰だい?」 怪訝そうな表情で振り返った父の言葉は、ティナにとって予想外のものであった。 「どうしたのパパ、私よ、ティナよ!」 「あら、あなた。そのお嬢さん、どなた?」 「さあ、私も初めてお会いしたんだが…」 もう一人の影が振り返りティナの父に話掛けた。 「…!」 それはティナがまだ幼い頃に死んだはずの母の姿だった。 「ママ…」 懐かしさのあまり、ティナの目頭は熱いものがこみ上げてきた。 「私、ティナよ。分からないの?」 「まあ」 母は悲しげな目でティナを見つめた。 「かわいそうに。まだこんなに若いのに」 哀れむように父が言った。 「どうしたの、二人とも。私ティナよ、自分達の娘が分からないの!」 ティナは必死で訴えた。 「お姉ちゃん、ティナは私よ」 最後の影が振り返った。 タータンチェックのワンピースに黄色いスカーフを巻いたブロンドの髪の小さな少 女、それは幼き頃のティナの姿だった。 「お嬢さん、私が分かりますか? ティナお嬢さん」 若い男の声にティナは夢の世界から呼び戻された。 「…」 まだ頭に靄がかかっているようだ。 どうやらティナは狭いカプセルの中にいるようだった。 「良かった、目が覚めましたか?」 目の前には見知った眼鏡を掛けた若い男の顔があった。 「アルトマンさん、私…」 ティナはゆっくりと上半身を起こした。 「ひっ!」 辺りを見渡してティナは小さな悲鳴を上げた。 そこは広い部屋になっていて、ティナが眠っていたのとおなじようなカプセルが無 数にならんでいた。 しかし、ティナのカプセルのように無傷のものはほとんど無く、どれもこれも瓦礫 が突き刺さっていたりして傷だらけになっていた。 そしてそれらにはほとんどミイラ化した遺体が並んでいた。 さながら、ホラー映画で見た墓場のシーンのようであった。 「な…なに、なんなの!! アルトマンさん?」 ティナは振えながら、アルトマンの白衣に縋った。 「おそらく計算以上に核兵器の衝撃が大きかったか、私たちの眠っている間に予想外 の天災があったのか…そのためにほとんどの冬眠カプセルがやられてしまったようで す。無事生き残ったのはお嬢さんを入れて六名。私や、お嬢さんが助かったのも奇跡 と言っていいでしょう」 そう言ってアルトマンはティナの眠っていたカプセルの近くを指さした。 ティナのカプセルからほんの五十センチくらいのところだろうか。 天井から崩れ落ちてきたらしい、巨大な鉄筋が深々と床に付き刺さっていた。 ティナは背筋に冷たいものを感じ、しばらくその鉄筋を見つめていた。 「おい、どうだった?」 アルトマンの声に我に帰ったティナはドアのほうに目をやった。 そこにはアルトマンの同僚らしい男が青い顔をしてたっていた。 「どうしたんだ、外の様子はどうだったんだ?」 少し声を荒げてアルトマンが男に尋ねた。 「どうやら…」 男はゆっくりと口を開いた。 「我々の眠っていたのは百年や二百年では済まないのかも知れない…」 つづく
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