空中分解2 #2175の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
それから二日後、金沢の探偵事務所に、ユニコーンからの予告が来た。 「今回の予告日をお知らせする。明日五日の午後六時から、六日の午前0時ま での、六時間で『あやかしの鎖』を頂戴する。楽しみにしていたまえ。 あや かしのユニコーン」 これが、その内容の全てであった。 私達は、カーター刑事に連絡を入れると、すぐさま、ビビアンヌ邸に向かっ た。私達二人とカーター刑事は、ほぼ同時にビビアンヌ邸に到着し、用件を執 事のベルグソンに話すと、中に通された。例の広間である。 「明日ですか。急ですわね」 ビビアンヌは、呆れた様子で、ため息まじりで言ってみせた。 「それで、他に何か?」 「僕はありませんが、こちらのカーター刑事が、あるようですよ」 金沢に促されるようにして、カーター刑事が言った。 「実は、私自身も警備に就きたいのです」 「もちろん、構いませんが」 「それで、宝物部屋に鎖を置くのでしょうかな?」 「そうです」 「私は、実は、宝物部屋の中で見張りたいのです。だから、見張り易いよう、 台か何かを用意して、その上に鎖を飾ってもらいたいのです」 「いいですわ。元々、そのつもりでしたし」 「そうでしたか。では、頼みますよ。私は、まだ色々と手配せねばならんので、 これで一端、引き上げます。金沢達は、もう少しいるんだろう? それでは、 明日、また」 と、カーターは、あっと言う間に帰ってしまった。その様子を見て、ビビア ンヌが言った。 「随分、お忙しい方ですわね。私、台を用意したいので、席を外します」 金沢がうなずくと、女主人は二階の宝物部屋に向かったようだった。 「なあ、金沢。これからどうするんだ? このまま帰っては、刑事と一緒だ」 「そう言われても、することは特にない。電話がないから、こちらに足を運ん だだけさ」 「そうか。ところで、君は明日、どこの警備をするつもりだい?」 「そうだねえ、カーター刑事みたいに、財宝とにらめっこするつもりは、少な くともない」 「そうそう、それだ。考えてみたんだが、カーター刑事がユニコーンの変装と いうことはないかい?」 「それはないね。そんなことしたら、もうすぐ、ここに本物が来て、すぐバレ てしまう。ユニコーンがそれに気付かないはずがない。それに、偽のカーター 刑事一人が、宝物部屋の中で警備にあたったとしても、お宝を持ち出すことは 困難極まりない。もし、窓から外に投げ出しても、すぐに見つかってしまうだ ろう。以上の理由で、ユニコーンがカーター刑事に変装することはない」 「そうかねえ」 私は心配だった。 「不安そうだな。そんなに不安なら、君も刑事と一緒に見張ればいい」 本気かどうか、金沢はそんなことを言った。 「うん……。そうさせてもらうかな。で、話を戻すが、君はどこに?」 「そうだね。僕はのんびりと、一階のホームバーで、ビビアンヌさんと話しで もしながら、ワインをもらおうかな」 「な、何を言ってるんだ! こんなときに、冗談はやめてくれよ」 思わぬ返答に私が叫ぶと、金沢は、私の表情がおかしかったのか、 「クックックッ……」 と笑って、それ切り、まだニヤニヤしながら、黙り込んでしまった。どうも、 名探偵というのは、何を考えているのか分からない。 その後、私と金沢は、ビビアンヌに呼ばれて、宝物部屋に行き、ネックレス を置いた台を見せてもらった。 さらにその後、金沢は、執事とコックの部屋を見せてもらい、なおも調理場 に行き、何かを調べていた。勝手口どころか窓もない調理場を、やけに熱心に 調べていたのが気にかかったが、どうせ聞いても教えてもらえないだろうと思 い、私は聞かないでいた。 そうして、私達は帰途についた。 いよいよ、五日の午後五時三十分、警察と共に、私と金沢は、ビビアンヌ邸 に集まった。カーター刑事は挨拶もそこそこに、部下三十人に命令を下し、そ れぞれの持ち場につかせると、自分も宝物部屋に椅子を持ち込み、陣取った。 私も同様に、宝物部屋に入らせてもらった。 金沢はと言うと、どうやら本気で、ビビアンヌと酒を飲むようだった。何を 考えているんだろうか。 ベルグソンは自室に引っ込み、コックのシグルドは全員の食事を用意するた め、調理場で奮闘している。と言っても、警備についている三十人の警官は、 すでに食事をとっているので、私や金沢、カーター刑事にビビアンヌ、ベルグ ソン、そしてシグルド自身の分を作ればよいのであるが。 さあ、午後六時。どこからでも来いという気持ちで、私は身構えていたが、 一時間、二時間経っても、何事も怒らない。 カーター刑事と話すのにも、そろそろあき始めていた午後八時半、シグルド が料理を持って、部屋の前にやって来た。 私はカーター刑事と共に、その料理を食べながら、シグルドに、金沢の様子 を聞いた。彼は、相変わらず、下で酒を飲み、ビビアンヌと話し込んでいると のことだった。私はいらいらしていることもあって、何をしているんだと、心 の底から金沢をなじってやった。 そうするのにもあきて、ぱっと時計を見ると、午後十一時。残すところ一時 間か、と思っていると、ドアがカシャッと音を立てた。私達はどきっとして身 構えたが、扉を開けたのはシグルドだった。彼は、コーヒーを持って来てくれ たのだ。コーヒーカップを置くと、彼は、ドアの外で見張っている警官に二言 三言話しかけつつ、去って行った。 私やカーター刑事は、コーヒーを飲んだ。ところが、それが失敗だったのだ。 徐々に眠くなってきたかと思うと、もはや記憶は曖昧に……。 (この後のことは、金沢から聞いたことと、想像したことが大部分である。) シグルドが、コーヒーカップを取りに、午後十一時四十分頃、宝物部屋にや って来た。彼は中に入ると、ドアを閉め、声色を使って、私や刑事が起きてい るかのごとく、一人芝居をしばらく演じ、時を見計らって、ネックレスを手に した。 それを水差しに隠し、外に出る。このとき、室内は、外の警官達にはっきり と見えないようにする。 シグルドは調理場に戻ると、酔いつぶれているらしいビビアンヌと金沢を覗 き見て、意識がないことを確かめると、そっとつぶやいた。 「うまくいった、フフ。金沢君、今度は私の完全勝利だね」 そうして、変装を解きもせずに、調理場の冷蔵庫を横にずらした。そこには、 秘密の抜け穴とも言うべき、勝手口があったのだ。 水差しからネックレスを取り出すと、ポケットにねじ込み、シグルドは外に 出ようとする。後は、塀を越えればいいだけだ、音を立てずにそうすることぐ らい、訳ない。そう思っていた。 そんなシグルドの背に、声がかかった。 「待ちたまえ、シグルド。いや、ユニコーンとお呼びしようか」 金沢であった。彼は、酔いつぶれたフリをしていただけだったのだ。 シグルド、いや、ユニコーンは、はっとしながらも、冷静に振舞おうと努め ていた。 「全て……知っていたの……か?」 「ああ。ユニコーン、君なら、よほどのことでないと強行突破はしないだろう と、僕は考えた。また、岩石層のため、地下からも無理だ。 となると、誰かに変装して、屋敷に入り込むしかない。警察の誰かに化ける のも手だが、これは意外と不利だ。カーター刑事は本物との鉢合せがあるかも しれないし、他の警官については、どんな顔の持ち主が配置されるのか、当日 になるまで分からないんだからね。僕やロックに化けるのも不可能。ビビアン ヌさんに聞いたところ、彼女自身やベルグソンは滅多に出かけないから、この 人達になりすますのも不可能だと分かった。だが、シグルドだけはコックだか ら、毎日、外出している。君はここに目をつけ、巧みに彼と入れ替わった。本 物のシグルドは、またどこかに監禁しているのだろう。ああ、それと、シグル ドが面やサングラスをしているのも、君には好都合だったに違いない。 さて、ここまでは、僕にも割と簡単に推理できた。だが、どうやって君が宝 を持ち出すかが、仲々分からなかった。単に隠し持っているだけでは、すぐに 見つかるし、窓や玄関には見張りがいるので抜け出せない。シグルドとして君 が何をしても怪しまれない場所として、この調理場があるが、ここには窓も勝 手口もない。 そこで、僕は抜け穴を考えた。君のいない間に調べたんだが、時間が足りな いこともあって、どこに抜け穴があるのかは突き止められなかったが、冷蔵庫 のほこりがいやに少ないことが気になってね。いかにきれいにしてあるといっ ても、ちょっと異常だった。 ともかく、事件が起こる前の時点で、僕はかなりの確率で、ユニコーンはシ グルドだと見破っていたのさ。さあ、ユニコーン。どうするかな?」 「……さすが、と言っておこうか。すっかり、聞きほれてしまったよ。でも、 捕まえることはできるかな?」 ユニコーンはそう言うと、素早く勝手口から飛び出そうとした。 その腰に、金沢が飛びつく! が、金沢にとって、思いもよらぬ感触があっ た。その華奢な、やわらかい肌触りに一瞬、戸惑ってしまった金沢。 さらに、ユニコーンの、 「きゃっ!」 という叫び声に、思わず手を話してしまっていた。 その間に、ユニコーンは顔を赤らめながら(これは、完全なる推測である)、 疾風のごとくという形容がぴたりとはまる早さで、塀を越えて去ってしまった。 抜け穴となった勝手口からは、エッフェル塔の先が、夜の闇を裂くかのよう に、映っていた……。 「それで?」 私が、金沢に続きを促すと、彼はぽつりと言った。 「……ユニコーンは女だった。それだけさ」 「どうして、女だと断言できる? 腰を触っただけだろう?」 「それはその……。だいたい、分かるだろう?」 そう言うと、金沢はそっぽを向いてしまった。 ひょっとしたら、腰よりもう少し上か下か、触ったんじゃないのかい、金沢? −FIN. 訂正。怒らない>>起こらない です。何行目かは分かりませんけど。
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