空中分解2 #2173の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
*今回は、カタカナ名前の姓と名の間に・を入れています。どちらが正しいの か分かっていないんです(^^;)。 近頃、アルセーヌ金沢こと金沢剛は、元気がない。理由は、怪盗ユニコーン との勝負が、「凱旋門から見える街角」以来、二ヶ月間、途絶えたままだから である。 「どう思う、ロックは?」 金沢が、私、つまり、推理小説でいうところのワトソン役たるブライアン・ ロックに聞いた。私は答えた。 「ユニコーンのことかい? 凡人の自分には分からないが、二ヶ月も音沙汰な しってのは、どこか他国に行ってしまったんじゃないのかな」 「いや、それは有り得ない。この国には、まだユニコーンが盗ろうとしている 品は、たくさんあるはずだし、この前の事件の決着もまだだ。もし、他国に行 っているにしても、二ヶ月もの間、何も起こさないとうのはおかしい。僕が推 測するに、前回、盗めなかった『フレンチコネクション』の在処を突き止める のに、手間取っているんだと思う」 金沢の答を聞いて、私は、ああ、彼は私の意見を求めたんじゃなくて、彼自 身の信念を私に聞かせたかったのだな、と思った。 「そういう訳かもしれないが、いい加減、他の仕事を引き受けたらどうだい? この前の事件を知った人々から、山ほどの依頼が来ているんだろう?」 「ああ。山ほどとは大げさだけど、来ている。でも、ユニコーンのことが気に なって、乗り気じゃないんだ、他の依頼には。次のユニコーンとの対決まで、 他の依頼はお預けだよ」 「ぜいたくだなあ。そんなこと言っているけど、君にユニコーンが挑んでくる とは限らない」 「いや、くるね。約束したのだから」 「まるで子供だな、こういうことになると」 このときは、これで終わったのだが、数日後に届いた手紙によって、金沢の 言葉が正しかったと証明されるのだ。 その手紙−−と言っても、封筒の中にユニコーンカードが一枚、入っていた だけだが−−の内容は、以下のようなものであった。 「お久しぶり、アルセーヌ金沢剛。ここ二ヶ月、『フレンチコネクション』の 行方を追っていたが、詳細は−−告白すると−−不明なままだった。長い間、 仕事をしていないと、忘れられてしまうかもしれないね。『フレンチ』は後回 しとして、そちらがお待ちかねの予告をここにしよう。今回の獲物は、ビビア ンヌというご婦人が所有する『あやかしの鎖』というネックレス。婦人宅や、 警察には予告を出していないので、そのつもりで。それでは、勝負を楽しみに している。 復活のユニコーン」 これを手にした金沢は、正しく、子供のようにはしゃいでいた。 「見てみろ、僕の言った通りだ。よし、フランソワ。このビビアンヌという人 の住所を調べてくれ給え。できるだけ早く、頼んだよ」 金沢はそう言って、秘書のフランソワの方を見た。 フランソワは、ロングヘアーを揺らしてうなずくと、ファイルを繰り始めた。 このファイルには、役所並の住所登録がされてあるのだ。しかも、高価な宝石 ・美術品の類を所有している人物は、すぐに分かるようになっている。現在、 パソコンに入力しつつあるのだが、なにぶん、量が膨大なので、仲々はかどっ ていない。 「ありました。住所は……」 私と金沢は早速、フランソワに調べてもらった住所に、行ってみた。本来は、 電話を前もって入れるべきところだが、何と驚いたことに、ビビアンヌ邸には 電話がない様子なのだ。ファイルに番号がなかった。 ビビアンヌという人の家は、かなり大きいと言えた。全体の形としては四角 だが、数多くある窓の庇はどれも三角で、庭はそれほど広くないが、やたらと 木が生えている。その周囲には、やや不釣合いな煉瓦造りの塀があった。 門を抜け、玄関先で呼び鈴−−これは本当の鈴だった−−を鳴らすと、七十 はいっていると見える、はげ上がった頭の男が、ドアを開け、用件を聞いてき た。 「何用でございましょうか」 何と表現すべきか、うち震えるような声で、老人は言った。 「新聞記者のアルセーヌという者です。こちらは同僚のカメラマン、ブライア ン。実は、我が社に怪盗ユニコーンからの予告状が届きましてね。こちらのお 屋敷にあるネックレスを盗むという……。ぜひ、取材をさせていただきたいの ですが」 警戒されないように、新聞記者と名乗った金沢は、そう言うと、先のユニコ ーンの予告状の写しを見せた。もちろん、余計な部分は省いてある。 写しの内容を読んだ老人は、 「お待ち下さい」 と、一言残し、奥に引き下がった。どうやら、ビビアンヌに知らせに行った のであろう。しばらくすると、男は戻って来て、こう告げた。 「どうぞ、中にお入り下さい。こちらです」 私達が通されたのは、一階の一番奥にある広間であった。元は、パーティ等 を催すための部屋らしかったが、応接間としてもその役目を果しているようで ある。部屋の広さに反する、小さなソファとテーブルが、まん中に置いてあり、 私達はそこに座るよう勧められた。 金沢に持たされたカメラを持て余していた私に、彼が言った。 「本当に、広い家だな。呆れるほどに広くて、釣合が取れていない。煉瓦造り の塀の中は、こんな近代的な建物とは。それに、こんな広間を応接間としても 使うなんて、どういう考えなんだろうな」 私は黙って苦笑していると、急にドアが開いた。四十過ぎの、少しシワが目 立つが、美しい顔立ちの金髪の女性であった。 「ようこそ、ビビアンヌ邸に。文句はそれだけかしら?」 きれいな、しかしどこか疲れたような声が響いた。それに対し、金沢は立ち 上がって答える。 「ええ、ありますとも。まず、住んでいる人の礼儀がなっていない。主ともあ ろう人が、こんな無礼な入り方をするとは」 「ここは私の城です。勝手でしょう」 「そりゃ構いませんが、電話がないとは、どういうことですかね? 伺わせて もらう前に、連絡を差し上げようと考えたのに、電話がないなんて、不便でし ょうがありません。この建物にも釣り合ってない」 「私は電話を使わないのです。もし、使う必要が生じれば、公衆電話を使えば いいし、相手が用があるのなら、ここに来ればいいんですわ」 「ふぅ、何て人だ、あなたは。ユニコーンの手から、ネックレスを守って差し 上げようと思ったのに……」 「あら、記者さんが、怪盗の手から、宝を守れますの?」 「あ」 金沢は、自らの過ちに気付いた表情だ。彼らしくもなく、興奮の余り、口を 滑らせてしまったようだ。 「フフフ。もう、いいんですわよ、探偵さん」 「……知っていたんですか」 「当然よ。あの事件で、すっかり有名になっていらっしゃるわ、あなたは」 そう言って、彼女は優雅と言える身振りで、ソファに腰掛けた。 「……ふむ。しかし、あなたの生活信条から推測して、新聞はとっていないの では、と考えましたがね」 金沢は、自分も腰掛けながら、ちょっと皮肉ってみせた。 「さすがね、当たりよ。でも、私も、他の中年女性と同じように、ゴシップ好 きな質で、週刊誌には欠かさず目を通してますの」 「はは、これはいい! どうやら、あなたの方が上手だ。週刊誌といい、僕に ボロを出させるために怒らせる手口といい……」 「お世辞は結構よ、探偵さん」 いつの間にか運ばれていたグラスを手にし、口に持って行く女主人。 「それなら、単刀直入に伺いましょう。『あやかしの鎖』というネックレスは、 確かにあなたが所有していますね?」 「ええ。見てみますか?」 「いえ、今はいいですよ。刑事を呼ぶことになるでしょうから、そのときに、 見せてもらいましょう。何せ、この前の事件では、宝石が偽物でしたがね」 「大変ですわね。それにしても、あなたほどの名探偵でも、警察の力を借りね ばならないのかしら」 「ただの怪盗が相手なら、ほとんどは手が読めますから、僕が出るまでもなく、 警察だけで犯人を捕らえることができましょう。しかし、相手はユニコーンで す。アメリカ、ヨーロッパを股にかけ、活躍している大怪盗です。僕は、まだ 一度しか闘ったことがないので、なおのこと、手を読むのは難しい。となると、 警察の物量作戦なる戦略も、必要とされてくるのです」 「時々、私は思うんですけれどね、ずっと宝を見張っていればいいんじゃない のかって」 「能のない手ですが、それも一つの方法です。しかし、二、三人が見張ってい ても、催眠ガスを送られたり、煙を吹き込まれたりすれば、簡単にやられてし まうこともある。まあ、これは極端な考え方でしたが、警察の人数を持ってす れば、大丈夫なはずです。要は、数でなく使い方なのです」 その使い方は、自分が決めると言わんばかりの金沢の口調だ。 「それにしても不安ですわ。私の生活がかかっているのですから」 「ほう? 生活がかかっているとは? そう言えば、失礼ながら、収入源は何 ですか? 御主人はおられないようだし」 「私の考え方を見抜いているあなたには、想像は難くないでしょうが、私は、 男だけでなく、他人に縛られるのが嫌いなのよ。それに、家族を持つって、お 金もかかるし、気も使います。私は、親から受け継いだ僅かなお金と宝物(ほ うもつ)で暮らしていますの。今では、宝物を少しずつお金に換えながらね。 私は、私でこの家を潰すつもりだから、使い切らなければ無意味ではないかし ら」 「なるほどね。宝が少しでも減ると、贅沢ができなくなるかもしれない訳です か。それほど心配されている割には、防犯設備が乏しいようですが」 「それは、そんな些事に使うお金の余裕がないからです。あったとしても、購 入しないと思いますけれど。何故なら、その防犯設備によって賊の侵入が分か っても、確実に捕らえられるかどうか分かりませんし、ひいては宝物の安全も 確かではありませんから」 「ますます、感心します。……とにかく、警察を呼ぶことにしますよ、マドモ アゼル」 金沢は、未婚の女主人に対して、そんな呼掛けをしてみせた。 −続く
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