CFM「空中分解」 #1759の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
流れついたのは無人島 NINO 1.海へ行こうよ カレンダーってのは正直者だ。カレンダー通りの服装すれば、間違えない。カレンダ ーの女の子は、やっぱり寒い月は暖かそうな格好だし、暑いときはさわやかな格好して る。まあ、親父のもらってくるのは、一年中裸のまんまだけれど。 そんでもって、今。カレンダーの女の子がこう言う、 『海へ行こうよ』 って。泳げもしないのに、特に行きたいって訳でもないのに、友達に連れ出されると なんとなく、海に来てよかったって気になる季節。 だけど、今年は少し誘いにくかったみたいだ。なんせ、俺一人、浪人サマだったか 天下御免の受験生なのだ。夏? 海? 冗談じゃない。夏の過ごし方ひとつで、受験校 のランクがひとつ上がるか下がるかするんだぜ。俺もそうやって断わるつもりだった。 結局は、海にきちゃったんだけど。 台風一過。一番高くて、青い空。潮風だっ! 波頭はキラキラしてる。いいよなぁ。 泳げないことを忘れて、沖まで出たくなる。 「おいっ。何すんだよ。毎年毎年」 「どうせニタニタしながら座ってんだから」 「この辺りじゃ有名だぜ。いっつも砂に埋められてる男って」 「そうそう。恒例、夏の行事」 俺は決まって砂に埋められることになってる。よく俺は海が嫌いにならないな。自分 でも不思議に思うよ。まったく。 「今年はお子様ランチにしてやるから」 「誠、去年なんだったけ?」 「えっと……」 やられた俺が一番よく覚えてる。 「なんだっけ」 「東京ドームだろ」 三人はわざと俺が言うまで待ってるんだ。 「そうそう。あんまりウケなかったけどな」 「形が単純過ぎたんだよ」 信ちゃんが何か鞄から取り出した。嫌な予感。 「ほら、口開けろ」 ぜってー開けねーからな。ちっきしょう。 「ほらほら、お子様ランチの旗だよ。これがなきゃ、何だか分からないだろ」 「無理矢理開けっぞ」 「わざわざこの歳で、お子様ランチ食った俺の立場考えろって」 「あきらめろ、な。宿命って奴だ」 屈辱的な言葉だが、ホンと、その通りだ。俺は素直に日の丸の旗をくわえた。どうせ 三十分かそこらの辛抱だ。連中が泳ぎたいときに、泳げないものは我慢するしかない。 「よーしできた。じゃ、ちょっと泳いでくるから、待ってろよ」 「いじけんじゃねーぞ」 「伸彦っ。ほら、周りのおねぇさんが笑ってくれてるぞ。これで夏の人気者だぁー」 祐ちゃんがそう言った。俺は祐ちゃんから借りたサングラスの下で、辺りを見回し おねぇさん、ってのは子供だった。ガキに笑われてる。そりゃアホ面して旗くわえてり ゃ笑うわな。 って、その時。ちらり右に視線を向けると、隣に同い年くらいの女がいた。どうして こういうオイシイことに気付かなかったんだろう。シニヨンっていうのかな? 編みこ んだ髪した、ワンピースの水着の娘。結構、スタイルいい。 一瞬、ワンピースだったからスクール水着かと思ったけど、それが五着は買えるんじ ゃないかっていう水着だった。黒い色のせいだな。顔の感じはカーイイ水着って方があ ってる。まあ、いいか。そんな事。 俺はペッと旗を吐き出して、寝ることにした。こんな状態じゃ、手出しできない。ま あ、手は出てるけど。言葉通り手ぇ出したら、ただの痴漢だよ。どうせ彼女は、こんな 男を相手にしてくれないだろう。旗くわえるような男は。 2.運命の赤い糸 悲鳴で目が覚めた。人食いザメでも出たのか? 「ちょっと、やだぁー」 黄色くて、かわいい警笛の震源地。それは、お隣りさんだった。お隣の編んだ髪の女 の子。 「あんたがやったの?」 何だ、怖い目して。げっ。もしかしたら、俺……痴漢した? 「すみません。ごめんなさい。許して」 自覚はないが、こうなったら誤るっきゃ方法がない。 「どうすんのよ。これ」 様子が違う。どうやら俺に怒っているのとは違うようだ。 「ねぇ? 鍵は。鍵はないの?」 「知らない。ぼく知らない」 「ねぇ、坊や。それじゃ、お父さんかお母さんは? お父さん何処にいるの?」 「知らない」 何だ、そうか。一瞬、痴漢が受験に響くんじゃないかって、恐ろしいこと考えちっ た。俺が悪いようではないな。助かったよ。 俺はそろそろ三人が泳ぎつかれて帰ってくるんじゃないかと思って、腕時計を見よう とした。腕が重い。砂を被ってんだろう。それにしちゃ、変だな。 「げっ」 腕時計の替わりに、黒い鉄の輪っか。 「なんだこりゃ」 その先に黒い鎖。 「ちょっと、あんた引っぱんないで」 「えっ」 鎖の先を追うまでもなく、彼女の左手にも、同様に囚人のような鎖と輪が。 「おい! なんだよ、これって?」 思わず大声。男の子は驚いて、俺の腹を越え、逃げて行ってしまった。 「きゃっ」 それを追いかけようとしたお隣りさんは、腕の鎖とお子様ランチのせいでコケてしま った。俺はとても痛くて、嬉しい目にあった。 「変態っ」 彼女は這い退くと、俺の顔を踵で思いっきり蹴った。サングラスを壊すことにはなら なかっただけが幸いだったが、えれー効いた。けど、頬に太股の感触が残っていたの さほど辛くなかった。 「あんたが子供を脅かしたからよ。どうすんの」 「どうすんのって、こんなの簡単に切れんじゃない?」 「ほんと? 簡単に切れる?」 「金鋸かなんかで切れるだろう。ここらに金鋸があればね」 これって結構面倒かもしれない。でも、シワシワの婆さんと繋がれたわけではない。 これは非常な幸運だ。おしゃれだ。漫画か、映画のようなシチュエーション。一つおし ゃれじゃないのは、この腕輪と鎖が無骨で、黒くて、ちょっと長くて、重すぎること これじゃまるでストライプの囚人服着た受刑者だ。これよりは、手錠あたりが良かった な。きらきら光って、二人の距離が狭くなって……そして…… 「はやくそれ探しにそう。何処に置いてあんの?」 「その前に俺、砂に埋まってんだ。ちょっとこれ除けてよ」 「あーめんどくさい」 彼女は重そうにスコップを持ち上げ、乱暴に砂にさした。 「痛いっ! って、ちょっと、それ過激だよ。痛い」 「あーいらいらいする」 彼女はぼくらの持ってきたスコップ(海に来るのにわざわざこんなものを持ってくる なんて。信ちゃんってのはやること過激)を捨てて、手で掻いてくれた。左腕がどうに も不自由そうで、申し訳なかった。次第に砂が減って、色々と楽しみが増えてきたら、 申し訳ないという気持ちは吹っとんだ。 「やだっ。ちんちん立てないでよ」 過激なお言葉。若い娘がそんなこと言うもんじゃありません……お婆ちゃんの時代だ よ、それは。 「何でわざわざそこの砂にこだわるんだよ。そこだけ砂が掘れてんじゃないか」 「もう、お前みたいないじめられっ子。ずっと埋まってればいいんだ」 そうはいかないことは、周知の事実。 「あーむかつく」 彼女はぶつぶつ言いながら、僕の砂を退けてくれた。 つづく
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE