CFM「空中分解」 #1725の修正
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「さて、推理はどうなったのかな?」 一馬が尋ねた。 「慌てないの。被害者のカモメ証券の竹下完吾には敵が多いみたい。その中 でも殺すような動機があって、当日のアリバイがないのは・・・。」 答えようとする佐木の言葉を遮って、僕、阿久津は聞いた。 「アリバイがある人のアリバイは、完全なものかい?」 「ええ、いずれも、他人の目の前にいたり、お勤めだったりで。まず、間違 いないわ。それで続きだけれど、名枯山達郎、橋本徳子、松木信男の3人ね。 名枯山は竹下とはいつも意見を異にしていたようなの。竹下が確実な方法を主 張すれば、名枯山は斬新な考えを言う・・・。橋本は竹下の昔の女よ。ありが ちな話で、奥さん・その他の人に本当の事を言わない代わりに、金を受け取っ ていたようよ。」 「待った。その橋本という人、それなら竹下を殺す必要がないじゃないか。 大事な金蔓だぜ。」 「これから言うとこだったのよ、一馬君。橋本は生命保健を竹下にかけさせ たの、受取人を自分にして。彼女、何かの店を出そうとしている節があるから、 まとまった金がいるようになったのかも・・・。松本は会社の金の使い込みを やってて、竹下に知られて、金を揺すられていたようなの。」 「ふーーん。それじゃあ、名枯山って人は、殺す程でもないと思うけど。」 「でも、地理的には一番怪しいの。例のマンションの近くの借家に住んでい るわ。」 「おい、佐木。この事件の根本的なことを忘れちゃ困るなあ。犯人は密室状 態の現場からテレポーテーションで逃げてんだろ?」 一馬がしきりに疑問をぶつける。 「燈台下暗しって言うから、以外と・・・ね。」 「要するに、住んでいるとこの遠い・近いは関係ないって訳だな。で、これ からどうする?」 「新聞・週刊誌で得られる情報はこれで限界だから、直接調べていくわ。」 「直接って佐木、学校はどうすんだよ。一日で終るような事じゃないだろう が。」 「だからさ、一馬君。早く、テレポーテーションをマスターしてよ。」 「何で俺が。第一、そんなに簡単に出来るものか。」 「じゃあ、テレキネシスで運んでくれる?交通費が助かるわ。」 「冗談。金は浮いても、時間が掛かるし、俺が疲れる。」 「しょうがない、私一人でやるわ。明日からの代返、頼むわね。」 「ちょ、ちょっと。一人で行くっての?危ないんじゃないか、それは。」 僕は思わず、言ってしまった。 「そう?本当にそう思ってくれる?それなら、着いて来てくれるわよね。」 「そ、それはちょっと・・・。」 「どうしたのよ。さっきの言葉は嘘?」 仕方なくうなずく。一馬が横あいで笑いながら、小声で、 「バーカ。」 と言っているのが聞こえた。 翌日、僕と佐木は主にバスを使って、調査を開始した。 「こんな事なら、免許を取っとけば良かった・・・。」 こうぼやいてみても始まらない。最初に、名枯山氏の所を訪ねた。が、いなか った。最初からこれでは、先が思いやられる。ついで、松木氏の所を訪ねたが、 なんとこれまたいなかった。いくら呼び鈴を押しても応答がない。 「あったま来ちゃう。どういうことよ、これ?」 「まあまあ、そうカッカしないで。これはきっと、神様の思召しだよ。余計 なことをせずに勉学にはげめっていう・・・。」 「阿久津君、君は神様なんか信じているの。超能力者のクセに。」 「そう言うことじゃ・・・。もう少し、冷静になって。もう遅い。明日、出 直そうよ。」 「仕方ないわね・・・。」 あーあ、無駄な一日だった。明日は少しでも収穫が欲しいな。とりあえず、橋 本さんから会いに行くかな。この気持ちは佐木も同じだろう。 こんな事を考えている内に、いつしか眠りにつき、いつしか目が覚めた。新 聞を見る。読むではない。ところが、読まざるを得ない事件が載っていたのだ! 「フンフン・・・。エッ!あああ、松木氏が死んだって?自宅にて・・・、 首を吊って自殺・・・、推定時刻は昨日の午後5時頃・・・、発見者は会社の 同僚・・・、先日の竹下氏の殺人の罪悪感からか?・・・、遺書はなし・・・、 部屋はどこも鍵が掛かっていた・・・、か。そうだ!、TV!」 中古のTVをつけたが、新聞と同じ事を言っていた。これは予想外の展開だ。 早速、佐木との待ち合わせの場所に向かう。着くと、佐木は先にいた(洒落)。 「ニュース見た?どういう事だろう。」 「今は分からない。でも、松木が犯人だったとしても、自殺する理由なんか ないわ。それと、現場がまた、密室だったでしょう?ひょっとするとこれは、 竹下を殺した犯人の仕業かも。」 「これからどうする?とりあえず、橋本の所に行くかい。」 「ええ・・・、いえ、やっぱり、名枯山氏の所よ。昨日、いなかったのは、 怪しいわ。どこかに松木氏を呼び出して、殺して自殺に見せかけたのかも。」 「動機は?それにどうして呼び出す必要があるんだい?犯人はテレポーテー ションが使えるから、乗り込めばいい。」 「動機は推測だけど、犯行を知られたとか・・・。呼び出したのは、昨日、 私達が松木氏の所へ行ったときには、既に松木氏は死んでいた事になるでしょ う、時間的に。でも、私、感じなかったのよ。テレポーテーションが使われた のを。」 「なるほど。」 そういう事で、僕達は再び、名枯山氏の家を訪ねることになった。 着いたはいいものの、どう、切り出すべきだろうか。昨日はこんな事考えず に呼び鈴を押したのに。やはり、興奮していたのだろうか。 「どうする?」 「私が押すわ。その代わり、話しかけるのは、阿久津君。」 「それはないよ。だいたい、なんて名乗ればいいんだい?」 「新聞記者にでもしたら・・・。あ、クレヤボヤンスがあるじゃないの。透 視してみて、いることを確認したら、しばらく観察するの。超能力を使わない かどうか。」 「余り気が進まないなあ。まだ、この人が犯人だと決まった訳じゃないんだ ろ。」 「そうだけど、他にどんな手があると言うの?」 「分かったよ。やってみる。佐木は、誰が来ないか見張っていてよ。」 「OK!」 そして僕はドアを通して透視を始めた(またも洒落)。男の一人暮しにしては きれいな部屋だ。これは彼女がいるな、と思いながら、名枯山氏の姿を探す。 「あっ!」 「どうしたの、阿久津君?」 「名枯山氏は、名枯山は超能力者だったよ、やっぱり。部屋にいるのが見え たんだけど、急に消えちゃって。テレポーテーションをしたんだ!」 「え?本当?ちょっと・・・。あ、本当だわ。確かにテレポーテーションを した跡が感じられる!」 「どこに行ったか分かる?」 「えっとね・・・、こっちよ!北北西かな?」 「よし、追いつけるかどうか分からないけど、行ってみよう。」 考えてみれば、無茶な判断でもある。足で追っかけようなんて。でも、それし かないのだ。ああ、せめて一馬がここにいれば、テレキネシスで少しは楽が出 来るのにな。一馬がここにいれば、こう言うだろうな。 「『北北西に進路をとれ』か。出来すぎているな。」 と。とにかく、北北西を目指す。ん?よく考えれば・・・。 「阿久津君、このままじゃ、例の竹下氏殺害の現場のマンションに行っちゃ うわ。どういう事かしら。」 「推理は君に任せるよ。」 「そうねえ・・・。何か、自分が犯人だと分かるような証拠を残していたの に気付いたとか。」 「そんなとこかな。ここは一馬に来てもらいたいな。このままじゃ、マンシ ョンに入れない。電話で呼んでこようか。」 「そうね、お願いするわ。私はとりあえずマンションに行ってみる。」 「分かった。」 電話を探す。公衆電話があった。トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル ・・・。ッチャ。 「あ、W大ですか?あの、心理学部・犯罪心理学科の一馬龍太郎をお願いし ます。え?僕?あの、友人です、はい。」 タタタタタタタタタン、タタタタン、タタタタン、タタタタタタタ・・・(エ リーゼのために)。ッチャ。 「換わりました。」 「あ、一馬?阿久津だよ。」 「分かった、何も言うな。場所だけ教えろ。すぐに行ってやる。」 「は?ああ、例のマンションだよ。」 「了解!きるぞ。」 ガチャ!ツー・ツー・ツー・。何だかわからんが、来てくれるのは間違いない らしい。と、思ったら・・・。 「よう、どうした?早く説明してくれよ。」 「わっ!一馬、いつの間に・・・。」 「どうせなら、徹底的にやろうと思ってな。テレポーテーション、なんとか 二日で修得したぜ。さ、どうすればいいんだ?」 そういう一馬に、事の成行きを説明してやった。 「ようし、急ごう。時間の節約。もう一度テレポート!」 あっと言う間に、マンションの裏側に。丁度、佐木がいて、驚いた様子だ。 「すごーい!一馬君、出来るようになったのね!」 「それよりも、あそこにその名枯山ってのがいるのは間違いないんだな?」 「ええ、強烈な力を感じているわ。逃げない内に早く!」 「3人で行くぞ、いいな?」 僕らが返事をしない内に、一馬はテレポートをした。と思ったら、もう、例の 部屋の中。 「うわっ!だ、誰だ。おまえら?」 名枯山が慌てふためいた声で叫ぶ。 「おじさんと一緒。超能力者だよ。」 一馬がふざけた調子で、しかし、凄味のある声で言った。 「超能力者だと?この世にそんな者がいるはずない。」 名枯山はおかしな事を言う。 「自分はどうだって言うのよ。それよりも、竹下さんと松木さんを殺したの、 あなたでしょう、名枯山さん?」 佐木の指摘に、ビクっとなって身構える名枯山。 「どうして分かった?そうだよ。ここに来たのも、うっかり落とした百円ラ イターを拾いに来たのさ。しかし、こうもあっさりと見破られるとは・・・。 仕方がない。」 そう言ったかと思うと、名枯山の姿が消えた。 「佐木!奴はどっちに逃げた?」 「・・・、南よ、正確に南に逃げているわ!」 「行くぞ!」 何があるか分からないが、追うしかない。そういう状況だった。工業地帯に出 た。見渡す限り、工場だらけ。名枯山は、出来るだけ遠くに逃げようとして力 を使いきったのか、ほんの数百メートル先にうずくまっている。一馬も少し疲 れたようなので、走って距離を詰める。 「ハアハア、さあて、名枯山さんとやら、訳を話してもらおうか。殺人の動 機じゃねえよ。どうやって、その力を身につけたのか、いつから使いだしたの か、だ。」 一馬の問に、名枯山はしばらく黙っていたが、やがて何かを吹っ切るようにし ゃべり出した。 「ふふふっ。おまえらはどうだか知らんが、私はこの力をヤ・ワンラ様から 頂いたのだ。」 「ヤ・ワンラ?何だい、それは。」 「この世と平行に進行している世界、パラレルワールドの一つを司る神だよ。 いや、悪魔かもしれんな、ハハハハッ!これで、私はもう終りさ。秘密をしゃ べっちまったんだからな。ま、どうせ、しゃべらなくとも、この世では殺人犯 として死刑となったろうが。グッ!!!」 突然、名枯山の身体が光った。かと思うと、一瞬にして溶けてしまった。原爆 記念館で見た、影だけが残った人のように・・・。 「ど、どうなってるんでぃ。」 一馬がそう漏らしたとき、頭の中に響きわたるものがあった。テレパシー? 「オマエタチハナニモノダ ドウシテソンナチカラガアル ヒミツヲシラレ タカラニハミノガセヌ」 と言うような言葉がまとまった形で、頭の中に流れ込んで来た。もちろん、答 える間なんてないし、その術も分からない。次の瞬間、僕達3人は、見知らぬ 世界に放り出されていた・・・。 −続く− <次回予告> 阿久津達3人が放り込まれたのは、名枯山の言っていたヤ・ワンラの支配す るパラレルワールドであった。3人は、着ている服も、名前も、髪の色も少し ずつ違っていた。3人の力を駆使して町に行って見ると、3人には賞金が懸け られていた。ヤ・ワンラの仕業か?どういうつもりなのか?3人はどうやって 危機を脱し、元の世界に戻るのか? 行き当たりばったりで往生しています。これからどうなるか、作者にも分か らない。これぞ一人リレー小説?
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